提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


麦・大豆

大豆編 栽培のポイント

2009年7月 6日

(2015年11月一部改訂) 

播種前~播種時の注意

「ほ場の選定」
●大豆を連作すると茎疫病などの土壌伝染性病害、シストセンチュウなどの虫害、畑雑草などが著しくなり、まともな栽培が困難となります。適切な輪作を行いましょう。
●水田転換畑では、排水性が良いほ場を選びます。また、ブロックローテーションによって、排水の良好化やほ場の集約による作業能率の向上、一斉防除よる虫害駆除の効率化を図ることができます。

「土づくりによる地力の向上」 ▼参考
●水田転換畑での大豆作付けは、連作するかしないかに関わらず、作付けのたびに土壌中の有機物が減耗して地力を消耗させます。
●この土壌中の有機物の減耗により、土壌が硬く締まるようになり、排水性も低下します。また、土壌中の地力窒素も減少します。これらにより大豆は徐々に収量が低下していきます。
●そのため、大豆作の安定多収化には、堆厩肥、緑肥などの有機物の補給による土作りが欠かせません。
●大豆の生育・収量は土壌pHに大きく影響されるので、好適なpH5.5~6になるように酸度矯正を行います。

「出芽苗立ちの確保」 
●出芽苗立ちの確保が、安定多収、雑草対策の基本です。
●出芽時に子葉が土壌表面を突き破って地表に出てくるので、ほ場は、土塊やクラスト(※1)がない状態にしておき、出芽障害が起こらないように配慮します。
●湿った土壌に乾いた種子を播種すると、急激に吸水して種子に亀裂が入り、出芽率が下がるので、あらかじめ種子水分を15%程度に高めておくと、出芽率がよくなります。
●土壌中では、いろいろな病原菌やタネバエなどが種子にダメージを与えるので、殺菌剤、殺虫剤の粉衣が効果的です。
●殺菌剤は、出芽時の湿害軽減の効果もあります。特に茎疫病、苗立枯病などに効く種子処理殺菌剤(クルーザーMAXX等)が有効です。

benri_daizu05_image1.jpg
良好な出芽苗立ちが安定生産の第一歩

※1 クラスト :土膜。降雨で地表の土壌粒子が分散し細かい粒子となって地表面に膜状に広がったもの。土膜のうち、乾燥して固くなったものを指す場合が多い。 

湿害の回避

●水田転換畑では、湿害が最も大豆の収量を低下させる原因です。
●湿害は、栄養不良、病害などを発生させ、生育不良による減収だけでなく、雑草の繁茂も引き起こすので、大豆の栽培を困難にします。

2015benri_daizu05_image10.jpg
湿害による生育不良

●湿害の回避には、水田の排水性確保 ▼参考が重要であり、畝立て播種技術などの湿害を軽減する栽培技術も開発されています。▼参考
●湿害によって根粒窒素固定が低下し、窒素欠乏が起こるので、窒素追肥によって被害をある程度軽減できます。

干ばつ害の回避

「水分管理の必要性」 
●大豆は要水量(※2)が多いので、大豆で多収を得るには、水稲並みに水が必要です。
●干ばつがひどいと、落花、落莢が発生し、青立ちが起こります。
●外観からは分からないような「軽い干ばつ」がしばしば起きて、それが減収につながっていると考えられます。

軽微な干ばつ時の大豆の外観浅い水田転換畑大豆の根系
 :軽微な干ばつ時の大豆の外観 /  :耕盤があり浅い水田転換畑大豆の根系

※2 要水量 :作物が植物体1gを生産するのに要する水の量(g)。

「根を発達させる」 
●ほ場に耕盤(鋤床)が形成されて、大豆の主根の伸長が抑制されると大豆の生育が減少し、減収します。
●日本での大豆の干ばつは、梅雨の多湿や耕盤形成によって、根が深く張れないことが主な原因です。
●梅雨期の徹底した排水対策や耕盤管理によって、根を深く発達させると、干ばつを軽減することができます。

「灌漑」 
●葉がしおれ始めたら、畦間灌漑などを行います。
●粘質なほ場では、急激な畦間灌漑を行うと、水口では湿害が発生することがあるので、注意が必要です。
●数日に分けて徐々に灌水すると、湿害が軽くなります。
●本暗渠が施工されたほ場では、夏期に排水管を常に開放しておくと地下水位が-1m以下に低下するため、干ばつが生じやすくなります。そのため、しばらく降雨が期待できない場合は、排水管の出口を一時的に閉じるなどして、大豆にとって好適な地下水位である-50cm程度に維持することが有効です。
●地下灌漑(FOEAS※3など)は効率的な灌漑が行えます。

※3 地下灌漑・地下水位制御システム(FOEAS/フォアス)
地表~地下の水位を自由にコントロールできる技術で、湿害と干ばつ対策に有効。
▼詳細はこちら

生育期の除草対策と中耕培土

●生育期の除草対策には、生育期茎葉処理剤の散布と中耕培土があります。

「生育期茎葉処理剤」 ▼参考
●生育期茎葉処理剤には、畑全体に散布できるイネ科対象剤と広葉対象剤があり、それぞれ、効く雑草が異なります。
●雑草の種類と発生状況を見極めて、散布します。
●畦間のみに散布できる、非選択性除草剤もあります。
●いずれの除草剤も、大きくなりすぎた雑草には効きが悪くなるため、散布適期を逃さないようにします。

「中耕培土」 
●中耕培土には、除草効果、排水対策、倒伏防止などの効果があります。
●株元までしっかりと土を盛ります。
●干ばつ条件下では、増収効果が見られないこともあります。
●雑草が大きくなりすぎたり、土壌が湿っていると、中耕培土だけでは雑草が完全に枯死せずに、再生することがあります。
●開花期以降の中耕培土作業は、根を切ったり植物体を傷つけて減収の原因となることがあるので、遅くとも開花期前に作業をすませます。

benri_daizu05_image5.jpg
中耕培土作業  土は株元までしっかりと! 

「省力的栽培技術」 
●無中耕無培土栽培や不耕起栽培は、狭畦によって雑草繁茂を抑えます。
●通常60cm程度の畦幅に対し、狭畦では約半分(30cm程度)の畦幅で栽培します。
●中耕培土の手間を省き、ほ場に凹凸がないため、コンバイン作業の効率化が図れます。
●雑草が少なく排水性が良いほ場向きです。

「帰化植物対策」 ▼参考
●水田転換畑では、帰化アサガオ類(マルバルコウ、ホシアサガオなど)が広がりつつあります。
●輸入家畜飼料に混ざり、堆厩肥によって、ほ場に広がったと考えられています。
●アサガオ類は、つるが大豆を覆って減収させるだけでなく、収穫時にコンバインに巻き付きます。
●畦畔除草を念入り行い、畦畔からの侵入を防ぎます。
●堆厩肥を施用する際は、種子が死滅するように60℃以上で発酵させ、完熟したものを用います。
●種子の増殖率がたいへん高く、越冬するので注意します。
●ほ場で発見したら、手取り除草し、種子を増やさないようにします。

benri_daizu05_image6.jpg
大豆に絡みつくマルバルコウ

生育期の留意点

「根粒窒素の固定」 
●大豆の生育に必要な窒素は、根による吸収と根粒の窒素固定により供給されますが、根粒由来の窒素の確保が安定多収のポイントとなります。
●大豆の根粒窒素固定能力は本来高く、好適環境下では、30kg/10a程度の窒素(約400kg/10a子実収量相当)を大豆に供給できます。
●湿害、干ばつには大変弱く、また、pH5.5以下の酸性土壌では良く働きません。
●根粒窒素固定を高めるためには、土壌の水分管理と酸度の矯正が大切です。
●フタスジヒメハムシは、根粒を食害して減収させるので、発生ほ場では防除します。

benri_daizu05_image2.jpg
大豆の根粒

「倒伏を防ぐ」 
●倒伏は、減収を引き起こすだけでなく、コンバイン収穫ロスも増やします。
●耐倒伏性品種を選びます。
●生育量が著しく大きくならないような播種時期や、栽植密度を選びます。
●播種後1カ月頃に、株元(初生葉節位)までしっかりと土を寄せて培土します。
●生育が極めてよく、倒伏、蔓化が予想されるときは、主茎先端を切除する(摘芯)方法もあります。
●平畦では不耕起栽培にすると、土壌の地耐力が高いため倒伏は小さくなります。

「青立ち対策」

2015benri_daizu05_image11.jpg
青立ちした大豆

●青立ち(成熟不整合、莢先熟ともいう)は、莢は熟して収穫適期となっても、茎の水分が高くて青々している状態です。葉や葉柄が落ちないで残ることもあります。青立ちした大豆はコンバイン収穫時に汚粒発生の原因となります。
●青立ちの発生のしやすさには品種間差がありますので、青立ち被害が著しい場合は、青立ちしにくい品種への変更が有効です。
●青立ちは、虫害や干ばつで莢実が減った場合に著しくなるので、虫害防除の徹底、灌漑などによる干ばつ被害の軽減が有効です。また、早播きは青立ちを助長するので、適期播種に留意します。

「しわ粒、裂皮対策等」 
<しわ粒>
●しわ粒は、等級格下げの大きな原因となっています。
●へその反対側の種皮と子葉がぎざぎざになる「ちりめんじわ」と、種皮が亀甲状に隆起する「亀甲じわ」に大別されます。

<ちりめんじわを防ぐ>
●ちりめんじわ粒は、生育後期に子実がうまく肥大しないときに起こります。
●登熟後半に栄養状態をよくし、排水対策で土壌環境をよくすることで防ぎます。

<亀甲じわを防ぐ>
●亀甲じわ粒は、成熟期後に子実が吸湿と乾燥を繰り返す時に、主に発生します。
●早刈りすることで、発生を減らすことができます。

<裂皮>
●裂皮粒は、品種特性によるところが大きいといわれます。
●干ばつによる落莢や虫害による莢数減少で、個々の粒の肥大が大きくなったときに発生しやすいので、これら被害を防ぎます。

benri_daizu05_image7.jpg  benri_daizu05_image8.jpg
左から上から ちりめんじわ、亀甲じわ

benri_daizu05_image9.jpg
裂皮粒

執筆者 
島田信二
中央農業総合研究センター
(文中の画像をクリックすると大きく表示されます)

◆麦・大豆編 もくじはこちら