提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


麦・大豆

大豆編 耕うん・播種技術

2009年6月17日

はじめに

●ダイズの耕うん播種方法には、「大豆300A」で開発された技術、関連する技術が多数あります。
●それぞれの地域で最も問題となっている内容を解決する技術を選択することが、重要です。

湿害を解消する技術

●湿害の軽減には、畝立て播種が効果的です。畝立てには多くの方式があります。
●畝立ては、短時間降雨時の湿害を大きく減らす効果があります。
●長期的な湿害には、明渠や暗渠、弾丸暗渠の施工をします。

「耕うん同時畝立て播種」 
●ホルダー型アップカットロータリの爪配列を変更し、耕うんと畝立て播種を同時に行います。
●同時作業のため、降雨のリスクを減らすことができます。
●重粘な土壌でも、砕土性が向上します。
●耕うん幅の異なるロータリが5機種市販化され、新潟等の北陸、日本海側、宮城、岩手等の東北、長野等全国20県以上で使用されています。

耕うん同時畝立て播種機(提供 :中央農業総合研究センター 細川 寿)
耕うん同時畝立て播種機 

「浅耕うね立て播種」 
●ダウンカットロータリの爪配列を変更し、浅耕しながら畝立て播種を行います。
●既存のロータリを使用できます。
●麦跡の比較的砕土性の良い土壌で、大きな効果があります。
●滋賀県で多く普及しています。

浅耕うね立て播種(提供 :滋賀県農業技術振興センター 河村久紀氏)
浅耕うね立て播種(提供 :滋賀県農業技術振興センター 河村久紀氏)

「大豆専用畝立て播種」 
●耕うんした圃場で、ドライブハロー(ロータリ)+成型器で畝立て播種を行います。
●事前に十分に砕土しておく必要があります。
●専用機として市販され、富山県、石川県等で普及しています。

「小畦立て播種」 
●耕うんした圃場で、ドライブハローの爪配列を変更し、畝立て播種を行います。チゼル爪を付けて、畦間を作溝します。
●既存の機械を改良するだけで、畝立て播種ができるようになります。
●岩手県、福島県等、東北地域で普及しています。

小畦立て播種 (提供 :岩手県農業研究センター 及川一也氏)
小畦立て播種 (提供 :岩手県農業研究センター 及川一也氏)

「簡易畦立て機」 
●ロータリの培土板に成型器を装着するなどして、畦を立てていきます。
●地元鉄工所で部品が製造され、大分県で普及しています。

覆土前鎮圧式播種機 (提供 :大分県 農林水産部 近乗偉夫氏)
覆土前鎮圧式播種機 (提供 :大分県 農林水産部 近乗偉夫氏)

「麦畦利用不耕起播種」 
●麦作の畦をそのまま残し、大豆を不耕起で播種していきます。
●梅雨の合間に、作業することができます。
●佐賀県で多く普及しています。

麦畦利用不耕起播種 (提供 :佐賀県佐城農業改良普及センター)
麦畦利用不耕起播種 (提供 :佐賀県佐城農業改良普及センター)
「小明渠作溝同時浅耕播種機」 
●ロータリの両側に装着したディスクにより、小さい明渠を作り排水性を確保し、浅耕しながら播種を行います。
●クラスト(※1)も防止できます。
●東海地域、島根等で使用されています。

小明渠作溝同時浅耕播種機 (提供 :九州沖縄農業研究センター 渡辺輝夫氏)
小明渠作溝同時浅耕播種機 (提供 :九州沖縄農業研究センター 渡辺輝夫氏)

クラストを回避する技術

●土壌の種類によっては、強い降雨後の乾燥で、表面が固くなり、発芽が困難になる場合があります。
●耕うん後の土塊を細かくしすぎない、浅耕して麦わらと混和することにより、クラスト※1 を軽減できます。
●不耕起は耕うんしないため、種子の上に細かい粒子が少なく、麦後大豆の浅耕では、麦稈が混和されるため、問題が小さくなります。

「山形鎮圧輪付播種機」 
●鎮圧後の播種跡を山形にすることにより、乾燥時に播種位置に沿って亀裂が入りやすくなります。
●クラストができやすい土壌で、通常深さに耕うんする方法と組み合わせると、効果が期待されます。

山形鎮圧輪付播種機 (提供 :九州沖縄農業研究センター 土屋史紀氏)
山形鎮圧輪付播種機 (提供 :九州沖縄農業研究センター 土屋史紀氏)

作業性を向上させる技術

●播種溝の作成等最小限の耕うんにより、播種を行います。
●麦後圃場等、土壌構造の発達した圃場で効果があります。
●降雨後の圃場でも、比較的容易に作業を行うことができ、作業性が向上します。

「汎用型不耕起播種機」 
●ディスクでY字型に溝を作り播種を行います。
●作業性が高く、地耐力があるため、梅雨の合間に作業を行うことができますが、湿害発生圃場では十分な排水対策が必要です。
●主に、関東地域の大規模な農家で使用されています。

汎用型不耕起播種機 (提供 :中央農業総合研究センター 渡邊好昭氏)
汎用型不耕起播種機 (提供 :中央農業総合研究センター 渡邊好昭氏)

「乾田不耕起直播機」 
●ロータリをベースに、播種溝用の幅の狭い爪を取付けて、播種溝を作ります。
●圃場内に明渠を作ると、湿害対策になります。

「トリプルカット不耕起播種機」 
●中耕培土機の爪を、播種溝用、施肥用、根伸張亀裂用の3種類の爪に交換し、溝を作りながら播種を行います。
●特殊な爪の入手が必要です。

トリプルカット不耕起播種機 (提供 :近畿中国四国農業研究センター 窪田潤氏)
トリプルカット不耕起播種機 (提供 :近畿中国四国農業研究センター 窪田潤氏)

その他の技術

「有芯部分耕」 
●播種条に当たるロータリの爪を一部外して、播種床に不耕起部分を残します。
●不耕起部分の水分変動が少ないことを利用して、生育中の乾燥や湿潤の影響を小さくします。

有芯部分耕 (提供 :作物研究所 吉永悟志氏)
有芯部分耕 (提供 :作物研究所 吉永悟志氏)

「覆土前鎮圧」 
●鎮圧した部分に播種を行い、柔らかい覆土を行います。
●乾燥時の種子への水分供給を安定化させ、クラストの発生も抑制します。

覆土前鎮圧式播種機 (提供 :北海道農業研究センター 大下泰生氏)
覆土前鎮圧式播種機 (提供 :北海道農業研究センター 大下泰生氏)

「改良ロータリ」 
●標準よりもやや深く(15cm)耕うんするとともに、ロータリカバー内にレーキを取付け、砕土性、すき込み性を向上させています。
●サイドリッジャを取り付けることで、播種と同時に排水溝も形成できます。
●福井県、滋賀県、富山県などで多く使用されています。

※1 クラスト :土膜。降雨で地表の土壌粒子が分散し細かい粒子となって地表面に膜状に広がったもの。土膜のうち、乾燥して固くなったものを指す場合が多い。 
 
執筆者 
細川 寿
農研機構 中央農業総合研究センター 北陸水田輪作研究チーム長 
(文中の画像をクリックすると大きく表示されます)

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