提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


野菜・果樹

パッションフルーツ栽培(露地栽培1年1作型)

2018年4月 3日

 ここでは、鹿児島県奄美大島等での露地栽培事例を基に、10月に定植し7月に夏実を収穫する年1作の栽培体系を記載します。

栽培適地

●パッションフルーツはブラジル南部の原産で、わが国では、南西諸島、九州南部、伊豆八丈島、小笠原諸島などで栽培が盛んです。
●パッションフルーツは霜に弱く、木質化した幹や主枝は、-2℃では短時間であれば枯死しませんが、-4℃以下になると亀裂を生じて枯死します。
●寒冷、降霜が生育や結実に支障を及ぼす恐れのない場所が栽培に適します。

品種

2018_benrikajyu_pf_0.jpg●奄美大島を含む鹿児島県では、次の品種が栽培されています。

「サマークイーン」
 農水省九州農業試験場で、「ムラサキクダモノトケイソウ」に「キイロクダモノトケイソウ」を交配して育成された交配種。果実は紅紫色の卵形で、果重は60~100gです。自家結実性が低いので、ルビースターを用いた人工受粉が必要です。

「ルビースター」
 台湾省鳳山熱帯果樹園芸分所で、「ムラサキクダモノトケイソウ」に「キイロクダモノトケイソウ」を交配して育成された交配種。果重は60~100gです。果皮は濃赤紫色で、芳香が強い。サマークイーンより着花数が多く、結果性は良好です。

苗木の育成

●挿し木には、健全な充実した枝梢を用います。枝梢が充実していれば、どの時期の枝をとってもよいでしょう。ハウス育苗であれば3~4月が適期です。
●夏期には遮光による温度上昇抑制、冬期は加温が必要で23~25℃程度が適温です。
●枝梢は、2節に切り、巻きひげを取り、上位節の葉を3分の1程度に切除します(図1)
●挿し床は、川砂や鹿沼土が適しています。挿し木後は、簡単な日除けをして時々かん水する。
●挿し木後約20日で発芽し、新梢が3~4㎝くらいになったら、土を付けたまま鉢上げします(図2)
●苗は、50~100cm程度に伸長したものを、10月にほ場に定植します。

2018_benrikajyu_pf_z1.jpg  2018_benrikajyu_pf_1.jpg
左 :図1 挿し木 / 右 :図2 鉢上げ

圃場準備(植栽様式、棚の種類)

●棚仕立て法は、人工受粉や整枝・せん定がしやすく、収穫や防除も容易なT字仕立てかアーチパイプ仕立てにします(図3)

2018_benrikajyu_pf_3.jpg
図3 T字仕立て(左)とアーチパイプ仕立て(右)の概要 (単位cm)

苗木の植え付け準備及び植え付け方法

●排水不良な所への植栽は避けます。排水不良の園に導入する場合は、暗きょ排水などの排水対策を行います。
●過去に有機物を入れていない場合は、植え付け穴を掘る前に完熟堆肥を10a当たり5t全面散布し、30~40cm深耕して整地します。
●高さ20~30cm、幅1mの畝を作る。
●植え付け1ヵ月前に直径50~60cm、深さ30cmの植え付け穴を掘り、完熟堆肥10~20kg、熔成リン肥1kgを入れて土とよく混ぜ合わせます。pHの低い土壌では、苦土石灰も合わせて入れます(図4)
●栽植距離は、畝間2m、株間2m~3mとします。株間が狭いほど、苗数は多くなりますが、側枝を早く確保でき、早期成園化が図られます。
●立枯症対策として、直径20cmのポリエチレン製のポットを逆さにして底を切り抜き、植え付けます(図5)

<2018_benrikajyu_pf_z4.jpg  2018_benrikajyu_pf_z5.jpg
左 :図4 植え穴の処理 / 右 :図5 立枯症対策での植付

幼木からの仕立て方

●仕立て方は、T字仕立てまたはアーチパイプ仕立ての主幹形整枝(逆L字型整枝)とします。
●定植後、成長の良い新梢を選び、支柱を立て、新梢が伸びるに従い誘引します。
●新梢が棚面に達したら、摘心せずに棚面にまっすぐに誘引します。
●樹冠拡大途中の主枝の延長は、枝が真っ直ぐになるように定期的に誘引し、棚線の上に誘引します。
●誘引した主枝の先端が、隣接する苗の主枝に近づいたら摘心します(図6)
●摘心すると、側枝が発生するので、各節1芽になるよう芽かきし、そのまま垂らしておきます(図7)

2018_benrikajyu_pf_z6.jpg   2018_benrikajyu_pf_z7.jpg
左 :図6 主枝の誘引と摘心 / 右 :図7 主枝の摘心後の側枝の状態

新梢・副梢の管理

●過繁茂で日中でも薄暗い状態では着花数も少なくなり、結果率も著しく低下します。生育がおう盛なので適宜、新梢、副梢をせん除します(図8、9)
●T字仕立てでは、肩基部から新梢が発生し過繁茂になるため、その都度、芽かきをします。

2018_benrikajyu_pf_z8.jpg   2018_benrikajyu_pf_z9.jpg
左 :図8 新梢の芽かき、せん除前 / 右 :図9 新梢の芽かき、せん除後

●側枝は、そのままにすると地面に届いてしまうので、地面から20~30cmの所で摘心します。また、夏実収穫後に伸びた副梢は、冬実の結果枝になしますが、同様に摘心します(図10)

2018_benrikajyu_pf_z10.jpg
図10 側枝の摘心

土壌管理(かん水、施肥、土壌改良)

●果実肥大期の過度の土壌乾燥は、果実の肥大を悪くします。そのため、敷草や敷わらで乾燥を防ぎ、2~3日おきに適度にかん水を行います。

着果管理(人工受粉、摘果)

●人工受粉は、開葯直後に花粉を筆で取り、柱頭につけます(図11)。パッションフルーツは、花粉の量が多いので、慣れてくると1人で1時間当たり400~500花を受粉できます。また、受粉後、早めに花弁を除去するとスリップス類による加害を防止できます。
●「サマークイーン」、「ルビースター」では、開花からほぼ15日で果実の大きさが決まるので、開花20~30日後には小玉や不良果を中心に摘果を行います。1結果枝に4~5個結果させます(図12)

2018_benrikajyu_pf_11.jpg  2018_benrikajyu_pf_12.jpg
左 :図11 パッションフルーツの受粉 / 右 :図12 パッションフルーツの着果状況

病害虫防除

●パッションフルーツは、ウッディネス病(EAPV)、疫病、円斑病、立枯症、アザミウマ類、カイガラムシ類などが問題となっています。登録農薬が少ないため、耕種的防除が中心となります。
●耕種的防除を効果的に進めるには、病害虫が発生しにくい環境づくりが大切です。そのために健全な苗木の導入、通風・排水対策及び徒長防止対策、発病株の早期除去、物理的遮断による害虫の侵入防止などを組み合わせて実施します。

収穫

2018_benrikajyu_pf_z11.jpg●果実は、成熟するにつれてクエン酸含量が減少し、食べやすくなります。完熟になると自然落果します。
●収穫の方法は、完熟・落果した果実を拾い集める方法、着果している果実を軽く押し上げて枝から離れるものを採取する方法、着色8~9分くらいで収穫を行う方法があります。
●収穫時期の気温が高いと果皮がしなびやすいので、気温が高くならない早朝に収穫します。
●完熟・落果した果実を拾い集める場合は、落果衝撃防止用にネットを棚下に設置すると傷果を防止できます。
右 :サマークイーンの完熟果

執筆者
鹿児島県農業開発総合センター企画調整部普及情報課
樋口 真一