提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


飼料作・畜産

飼料作・畜産編【3】 イネWCS(稲発酵粗飼料)

2008年5月15日

(2014年7月 一部改訂) 

品種と栽培上の注意点

●稲発酵粗飼料(=イネWCS/ホールクロップサイレージ)とは、イネの子実が完熟する前に穂部(籾)と茎葉部を同時に収穫し、サイレージ化した粗飼料です。
●イネWCS用として、各地域に適した多くの品種(以下、専用品種)が育成されており、イネWCS用としては、茎葉多収型品種と茎葉子実多収型品種に分けられます。
●イネWCSは、籾殻を有しているため、籾の消化率が低いことから、茎葉多収型品種の中でも、特に近年では、極短穂で籾割合が低く、茎葉部の糖含量と消化性の高い「たちすずか」が注目されています。

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各地域に適したWCS用の専用品種

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「たちすずか」の草姿

●専用品種は食用品種と比べて、種子の大きさが異なる場合があります。特に茎葉子実多収型品種では、食用品種よりも種子が大きいため、籾の千粒重を確認して播種量を設定することが必要です。
●専用品種の多収能力を最大限に活かすためには、食用イネの1.5~2倍程度の肥料が必要です。
●農薬の使用にあたっては、「稲発酵粗飼料生産・給与マニュアル」に掲載されている薬剤を使用します。
●刈り取り適期は糊熟期から黄熟期で、乳牛向けではやや早めに、肥育牛向けではやや遅めに収穫します。

収穫調製

●収穫調製の作業体系は、牧草用の作業機を利用したトラクター牽引式のロールベール体系(刈り落し-集草-梱包)と、刈落とし作業を行わずに、立毛状態のまま、イネをダイレクトに収穫して、ロールベールに梱包し、密封作業を行うことができる自走式の専用収穫機の体系があります。
●専用収穫機には、コンバイン型とフレール型と呼ばれる2機種が市販化されています。両機とも、開発当初から改良が加えられ、特にコンバイン型専用収穫機は長稈品種には不向きでしたが、2011年度から市販されているタイプは、150cm程度の長稈品種にまで対応できるようになっています。

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長稈対応のコンバイン型専用収穫機

●専用収穫機体系における密封作業には、軟弱な水田での作業を考慮して、走行部にゴム履帯を利用した自走式ベールラッパで行います。本機についても、2013年度に、ガソリンエンジンからディーゼルエンジンへ変更し、燃料タンクを大きくすることで、燃料費の低減と1回の補給で1日の作業が行えるようになっています。

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ディーゼルエンジン仕様の自走式ベールラッパの作業状況

●牧草用ロールベール体系、専用収穫機体系とも、ロールベールを密封する場合のフィルムの巻き数は、6層巻を基本として、特に長期保管する場合には8層巻にすることで、良質な発酵品質が保たれます。また、安定した品質を確保するためには、多くの場合、乳酸菌を添加します。

保管と流通

●密封したロールベールは、その後の搬出作業を考慮して、農道付近に集積しておくことが必要です。
●ロールベールを2段積みにする場合は、荷崩れしないように注意します。
●近年では、地域内の流通だけでなく、地域や市町村を超えた広域的な流通も始まっており、広域流通においては、輸送業務の外部委託も必要になってきます。
●輸送経費を低減するためには、大型トラックでの大量輸送が必要です。そのためには、ロールベールの一時保管場所(ストックヤード)を設けることが必要です。ストックヤードを設置するにあたっては、大型トラックへのロールベール荷積みができ、浸水しない場所を選定することが必要です。
●ストックヤードでは、多くのロールベールが保管されることから、サイレージ臭の地域住民への配慮も必要になってきます。
●ストックヤードとしては、水田圃場周辺の遊休地や米麦共同乾燥施設等が考えられます。

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 :遊休地を利用したストックヤード /  :大型トラックを用いた輸送

給与

●収穫・密封後、3~4週間すると乳酸発酵が安定し、芳香を伴った良質なサイレージができ上がり、家畜に給与することができます。
●イネWCSは乾物中に粗蛋白質が約7%、NDFが約50%、TDNが約55%含まれています。乳用牛、肥育牛、繁殖牛には各家畜の飼料計算に基づいて給与します。

執筆者
浦川修司
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所
家畜飼養技術研究領域 上席研究員

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