提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


栽培・管理_移植栽培

倒さないで多収を得るための生育診断と制御法

2009年4月20日

(2014年3月 一部改訂) 

はじめに

倒さない秋優りの稲作りには、マニュアルや栽培暦に従って管理するだけでなく、その年の気象や生育状況に応じた技術で対応をすることが必要です。それによって、安定した収量が得られます。

生育診断と制御法

「葉色、茎数による生育診断」 
●稲の生育ステージごとに、適正な葉色や茎数、葉色×計数値があります。

生育診断適正値(葉色×茎数値)の適正値の推移 
生育診断適正値(葉色×茎数値)の適正値の推移 (出典 『あなたにもできる安心イネつくり』p70(農文協))


●小苗植え、元肥窒素を減らした「じっくり型稲作り」のコシヒカリの適正値を、別表に示します。

コシヒカリの生育診断指標 
※ 葉色は富士平工業の水稲用葉色板、茎数は㎡当たりの換算値
コシヒカリの生育診断指標 (出典 『あなたにもできる安心イネつくり』p70(農文協)より) 

水稲用葉色板葉色板測定の様子
 :水稲用葉色板 /  :葉色板測定の様子 
 

●適正値を上回っていると、生育過剰、籾数が多くなりますが、倒伏しやすく、登熟も低下します。よって、中干しを強くしたり、穂肥の時期を遅らせます。
●適正値を下回っている場合は、籾数不足で収量が低下しますので、穂肥時期を早めます。

「天候のパターンで穂肥を判断する」 
●田植後の天候の経過で、ある程度その年の穂肥、栽培法の考え方を判断することができます。

穂肥時期の判断  
穂肥時期の判断 (出典 『あなたにもできる安心イネつくり』p65(農文協))

●「田植~梅雨入り」の天候が良く、「梅雨入り後」の天候も良ければ、攻めの栽培ができるし、その逆の場合は守りの栽培になります。

「穂肥時期の考え方」 
●品種の特性やその年の生育によって、穂肥の時期は変わります。 

品種や生育状況で穂肥時期を変える 
品種や生育状況で穂肥時期を変える (出典 『あなたにもできる安心イネつくり』p65(農文協))

●倒伏に強い品種は出穂期前23~20日、倒伏に弱いコシヒカリは出穂期前15日が基本になります。
●その上で、その年の生育を診断します。
●葉色が淡く茎数が少ない場合は、穂肥時期を早めます。
●逆に、葉色が濃く生育が過剰な場合は、穂肥時期を遅らせたり、施肥量を減らします。
●穂肥を早めれば、籾数が増えますが、倒伏しやすくなります。
●穂肥を遅らせれば、倒伏が軽くなりますが、籾数は増えません。 

「幼穂による穂肥時期の判断」 
●幼穂は、出穂期の35日頃に分化して、伸びていきます。
●幼穂長と出穂前日数との関係は、コシヒカリの場合で1mmがほぼ25日前、8mmが18日前、20mmが15日前、80mmが10日前です。
●太い茎の基部をカッターで割いて、幼穂の長さを計ってみます。 

 
幼穂の見方 (出典 『米の事典』p47(幸書房))

●タバコの長さと比べてみます。 
●タバコの直径が出穂前18日前、フィルターの長さが出穂前15日前、タバコの長さが出穂前10日前です。

穂肥適期判断のめやす 
穂肥適期判断のめやす (出典 『あなたにもできる安心イネつくり』p74(農文協))

●タバコを吸わない人は、人差し指の爪の幅が出穂前18日前、指先の関節の長さが出穂前15日前、指の長さが出穂前10日前です。
●標準の生育をしていれば、タバコのフィルターの長さの時期に穂肥を施用し、葉色が淡かったら、タバコの直径の時期に早め、葉色が濃く倒伏が心配される場合は、タバコの長さまで遅らせます。
●この3つの診断と対応で、稲の状態は、かなり安定します。

「刈り取り適期の診断」 
●出穂後40~45日たつと、成熟期を迎えます。
●刈り取り適期は、年によって、また、圃場によって異なるので、帯緑色籾率で診断します。

収穫適期の判断  
平均的な生育箇所の5~6本の穂をまとめて握って、基のほうの薄緑色の籾の割合で判定する。10~3%が適期(不穂籾は含めない)。 
収穫適期の判断 (出典 :別冊現代農業 『イネつくりコツのコツ』p131(農文協))

●穂を5~6本束ねて握り、穂の基の方に薄緑色が残っている籾が「帯緑色籾」です。この籾の割合が10%程度のときが、刈り取り適期です。
●作付面積が多い場合は、15%程度から刈り始め、3%ぐらいに終えるようにします。

執筆者 
山口 正篤
全農とちぎ 技術参与

(文中の画像をクリックすると大きく表示されます)

◆稲編もくじはこちら