提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


栽培・管理_その他栽培法

東日本における超多収稲の栽培法

2009年4月24日

(2014年2月 一部改訂) 

はじめに

関東地域平坦部の水稲単作地帯を想定して、超多収稲品種の「べこあおば」、「モミロマン」、「タカナリ」、「北陸193号」の栽培法を紹介します。

「超多収品種の特徴」 
●べこあおばやモミロマンは、稲発酵粗飼料用品種として育成され、子実(=コメ)と茎葉(わら)をあわせた全体の収量が高いという特徴があります。
●多用途米として育成され、最近は米粉用品種として注目されているタカナリやバイオエタノール原料米としても利用される北陸193号と同様に、子実(=コメ)だけを利用する飼料用米品種としても、多収性を示します。
●移植栽培での説明を中心にして、最後に湛水直播栽培のポイントについても、触れることにします。


ロールベールに調製されたモミロマン(9月中旬)

「除草剤の感受性」
ここで紹介する「モミロマン」と「タカナリ」は、一般食用品種に使用できる除草剤のうち、特定の成分を含むものにより、薬害を生じる恐れがあることがわかりました。これらの品種を作付けする場合は、使用できる除草剤について、もよりの農業改良普及センターに確認すると安全です。 

栽培のポイント

「作期の選択」 
●早生品種のべこあおばは、早く移植しすぎるとスズメの害が集中します。
●中生品種のタカナリ、晩生品種のモミロマンや北陸193号は、移植時期が遅すぎると、コメが実っていく登熟期間の気温がだんだん低くなり、日射も少なくなってしまいます。
●また、早場米地帯などでは、用水の確保がむずかしくなる場合もあります。
●これらの品種は、5月上旬から中旬に移植すると、多収性を発揮できます。

出穂期の違い(左:タカナリ、右:モミロマン、2008年8月11日撮影)
出穂期の違い(左:タカナリ、右:モミロマン、8月中旬)

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出穂期の違い(左:タカナリ、右:北陸193号、8月中旬)

「堆肥の活用」 
●稲発酵粗飼料として収穫すると、子実(=コメ)と茎葉(わら)すべてが持ち出されるため、圃場には刈り株くらいしか残りません。
●飼料用米として収穫する場合も、貴重な自給粗飼料である稲わらを収集して持ち出すと、同じような状態になります。
●地力を維持するためには、これらの飼料を利用した畜産農家から、家畜糞を原料にした堆肥を圃場に還元すると、資源循環型の生産が可能になります。
●堆肥の施用は、化学肥料を節約して、生産費を抑えるためにも有効です。
●食用米品種を作付けする予定のない圃場であれば、1~2t/10a程度(牛糞堆肥の場合)を目安に連年施用することが有効です。
●完熟堆肥では、窒素含有量が少なく、リン酸・カリの含有量が多いので、過剰施用とならないよう注意します。窒素単肥でバランスをとるとよいでしょう。

農家圃場での堆肥散布(2007年2月7日撮影)
農家圃場での堆肥散布(2月上旬)

「育苗」 
●必要に応じて塩水選を行い、よい種子を使用します。
●種子消毒も、適切に実施します。
●べこあおばは大粒なので、育苗箱への播種量を調整して、十分な植え付け本数が確保できるようにします。モミロマンはやや大粒、タカナリ、北陸193号は食用品種並みです。
●タカナリ、北陸193号には休眠性があるので、前年秋に収穫した種子をすぐに使う場合には、発芽能力を確認しておくと安心です。
●休眠している場合は、風乾種子を約40℃で1週間通風乾燥させると、休眠を破ることができます。くわしくは、地域の農業改良普及センターにご相談ください。

「施肥法」 
●移植栽培では、基肥窒素量を多めにして、初期生育を促進することが重要です。
●追肥は、籾数を増やすのに効果のある幼穂形成期(出穂の約25日前)に行います。
●窒素施肥量は、目標収量にもよりますが、食用品種での施用量の1.6~2倍程度が目安になります。目標収量750kg/10aのとき、基肥6kg+追肥3kg/10a、850kg/10aのとき、基肥8kg+追肥4kg/10a程度が必要です。
●追肥窒素量を多くする場合は、幼穂形成期のほかに、穂揃期(出穂後約5日)か減数分裂期(出穂前約10日)のどちらかに、一部を振り向けると有効です。
●十分に窒素施肥を行った条件でも、モミロマンは他の品種より葉色が淡い傾向があるので、窒素不足と誤解しないよう、注意します。

「水管理」 
●食用米品種と同様に管理します。
●べこあおば、タカナリ、モミロマン、北陸193号は、いずれも倒伏しにくい品種なので、中干しをとくに強めに行う必要はありません。
●落水は、稲発酵粗飼料として収穫する場合は出穂後3週間くらい、飼料用米として収穫する場合は出穂後4週間くらいに行います。
●排水しにくい圃場では、早めに落水します。

「収穫」 
●稲発酵粗飼料として収穫する場合は、1穂のなかで、黄色くなった籾の割合が半分くらいになる、「黄熟期」が適期です。
●べこあおばでは、出穂後30~35日くらい、タカナリ、モミロマン、北陸193号は、出穂後35~40日くらいです。
●タカナリ、北陸193号はやや脱粒性が高いため、黄熟期を過ぎてしまうと、専用収穫機を用いても収穫ロスが多くなるので、注意します。
●多収品種は全般に食用品種よりも登熟までの期間が長くなります。飼料用米として収穫する場合には、収穫までの期間を長くとり、可能な限り立毛乾燥することが望ましいですが、脱粒しやすいタカナリ、北陸193号は、刈り遅れに注意します。
●茎が太い品種ではコンバインへの負荷が大きくなるため、作業速度に注意します。


黄熟期のモミロマン(9月中旬)

●飼料用米として収穫する場合は、成熟期に収穫します。判定は食用米品種と同じです。
●食用米品種と同じコンバインを使う場合には、籾の混入を防ぐために、飼料用米を後から収穫するとよいでしょう。
●べこあおばは出穂後40~45日、タカナリは出穂後45~50日くらいで収穫です。
●モミロマンはゆっくり登熟するため、出穂後55~60日くらいまで待つと、収量が高くなります。

べこあおばの収穫(成熟期)
べこあおばの収穫(成熟期、9月中旬)

「収量構成要素の目標」 
●飼料用米として収穫する場合は、食用米栽培と同じように、収量構成要素の考え方に基づいて多収を実現します。
●飼料用米では、屑米も含めた粗玄米全体を飼料として利用するのが一般的ですが、玄米収量構成要素の観点から、話を進めます。
●これらの品種は籾わら比が高いので、子実=コメの収量を高める方法は、稲発酵粗飼料として収穫する場合にも、多収の実現に有効です。

<タカナリ、モミロマン、北陸193号>
●1穂当たりの籾数は、タカナリやモミロマン、北陸193号では、多肥条件で180粒くらいになります。
●平方メートル当たりの穂数は、モミロマン、北陸193号でやや少なめですが、いずれの品種も250~280本の範囲であれば、平方メートル当たりの籾数は約5万粒になります。
●玄米千粒重は、モミロマンがやや大きい25gくらい、タカナリ、北陸193号は22gくらいなので、80%の登熟歩合(正確には玄米粒数歩合)が得られれば、タカナリ、北陸193号は880kg/10a、モミロマンは1000kg/10aの玄米重を達成します。
●モミロマンの登熟は、やや安定性に欠けるため、登熟期間を十分に長く確保します。幼穂形成期の窒素追肥は、籾数過剰とならないように注意します。


成熟期のタカナリ(9月下旬)

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成熟期の北陸193号(9月下旬)

<べこあおば>
●べこあおばの1穂当たり籾数は、100粒くらいとやや少なめですが、面積当たりの穂数は300~350本の確保が可能なので、平方メートル当たりの籾数は約3.3万粒です。
●べこあおばの玄米千粒重は、およそ32gと大きいので、同様に80%の登熟歩合(正確には玄米粒数歩合)と仮定すると、面積当たりの玄米重は845kg/10aになります。
●温暖地でのべこあおばの栽培では、生育期間が限られるので、茎数・穂数の確保が重要です。十分に分げつを確保できるよう、基肥や分げつ期追肥を重視して、窒素を施肥します。


成熟期のべこあおば(9月中旬)

湛水直播栽培でのポイント

「苗立ち」 
●食用米品種の場合と同様に、湛水直播栽培では苗立ちがポイントです。
●タカナリ、北陸193号は、休眠性や出芽の不安定性等の特性上、湛水直播栽培には適しませんので注意が必要です。
●気温が上昇する5月に播種を行います。
●土中播種の場合は酸素発生剤を利用すると、苗立ち率は高くなります。また播種後、出芽までは落水管理とします。
●表面播種の場合は、鉄コーティング種子の利用により、種子の土壌への定着による浮き苗の防止や、鳥害防止が図られます。
●モミロマンは、べこあおばより苗立ちは良いようです。

播種14日後のべこあおばの苗立ち(2003年6月13日撮影)
播種14日後のべこあおばの苗立ち(6月中旬)

「施肥」 
●直播栽培では、根が伸びるまで時間がかかるため、窒素成分がゆっくり溶け出す被覆尿素などの肥料を用いた全量基肥施用が有効です。
●追肥労力が省ける上、窒素成分当たりの価格で比較すると、高度化成肥料とそれほど大きな違いはありません。
●基肥+追肥体系の場合は、基肥を少なめにして、苗立ち数の多少に応じて分げつ期の追肥窒素量を増減すると、十分な茎数を確保できます。

「中干し」 
●もうひとつのポイントである倒伏は、湛水直播栽培では、移植栽培よりやや弱くなります。
●中干しは強めに行ってください。

執筆者 
山口 弘道
農研機構 中央農業総合研究センター 生産体系研究領域
石川 哲也
農研機構 東北農業研究センター 農業放射線研究センター

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