提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


地域に適応した新形質米品種

2009年6月12日

(2014年2月 一部改訂) 

はじめに

 従来のうるち米やもち米にはない、新しい特性を持った「新形質米品種」の開発が進み、各地域向けに、様々な品種が育成されています。ここでは代表的な品種を紹介します。

粘りの強い米:低アミロース米

●アミロース含有率(※1)が低い米で、炊飯米の粘りが強く、美味しいご飯となります。 
●冷めても美味しいと好評です。

「北海道向け」 
◆おぼろづき、ゆめぴりか、ゆきがすみ
●適度な粘りの強さと柔らかさが特徴で、従来あった北海道米に比べると良食味の品種です。
●アミロース含有率は北海道の一般米よりやや低く約14%前後です。

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低アミロース米品種「おぼろづき」(左)と一般米品種「ほしのゆめ」(右)
(提供 :北海道農業研究センター) 


「東北向け」 
◆スノーパール
◆シルキーパール
●両品種とも多収で、特にシルキーパールは倒伏に強く、肥沃地に適しています。
●アミロース含有率は6~8%と低く、玄米は白く濁ります。

玄米(左 :シルキーパール /右 :スノーパール)
東北向けの低アミロース米品種の玄米 (左 :シルキーパール /右 :スノーパール)
(提供 :東北農業研究センター)


「関東以西向け」 
◆ミルキークイーン
●コシヒカリの突然変異から作られた低アミロース米品種です。
◆ミルキープリンセス
●ミルキークイーンよりも草丈が短く、多肥栽培に適します。

左:ミルキークイーン、中:ミルキープリンセス、右:コシヒカリ
低アミロース米品種「ミルキークイーン」と「ミルキープリンセス」
(左 :ミルキークイーン/中 :ミルキープリンセス/右 :コシヒカリ) (提供 :作物研究所)


「中国地方向け」 
◆姫ごのみ
●瀬戸内地域の平野部および中山間地域の一部に向く低アミロース米品種です。
●アミロース含有率は8%程度で、やや白濁します。
●倒れにくく、いもち病や縞葉枯病に強いです。

「九州向け」 
◆ぴかまる
●九州の普通期での栽培に向く低アミロース米品種です。
●ヒノヒカリより多収で、穂いもち病や縞葉枯病に強いです。
●アミロース含有率は10%前後です。

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「ヒノヒカリ」と低アミロース品種「ぴかまる」と「姫ごのみ」
(左 :ヒノヒカリ/中 :ぴかまる/右 :姫ごのみ)(提供 :九州沖縄農業研究センター)


「沖縄向け」 
◆ミルキーサマー
●沖縄県の一期作の条件ではミルキークイーンよりもやや晩生で多収です。
●ミルキークイーンと同等の食味・品質を示し、柔らかい米の付加価値のある米を生産できます。

「栽培上の留意点」 
●低アミロース米のアミロース含有率は、登熟期の気温に影響を受けます。
●気温が高いとアミロース含有率が下がり、米飯の粘りが強くなり過ぎる傾向があります。 

※1 ご飯の粘りは、米に含まれるデンプンによって生じます。このデンプンには、アミロースとアミロペクチンの2種類があります。アミロースの割合が低いと粘りが強く、高いと粘りが弱くなります。日本のうるち米(コシヒカリ、あきたこまち等)のデンプンは、一般にアミロース含有率が17~23%です。

粘りの弱い米:高アミロース米

●アミロース含有率の高い米で、粘りが弱く、ポロポロのご飯となります。
●カレーやピラフ、エスニック料理、米粉麺向きです。

「北海道向け」
◆北瑞穂
●アミロース含有率が約30%の高アミロース米系統です。
●ライスパスタや米粉クッキーなどへの加工に適しています。

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「北瑞穂」を用いて製造したライスパスタ (提供 :北海道農業研究センター)

「関東以西向け」 
◆夢十色(ゆめといろ)
●アミロース含有率が27~33%と高く、普通のご飯としては美味しくありませんが、レトルト粥やドライカレーなどの調理・加工米飯に適しています。
◆越のかおり
●アミロース含有率が30~35%の高アミロース米で、米粉麺用の品種です。
●この品種の麺は麺離れが良く、サッパリとして食味が良いのが特徴です。
●熟期はコシヒカリ並です。

夢十色(ゆめといろ) 「越のかおり」の米粉麺(左:越のかおり、右:一般米)
 :夢十色(ゆめといろ)の玄米 (提供 :中央農業総合研究センター(北陸)) 
:「越のかおり」の米粉麺(左 :越のかおり/右 :一般米) (提供 :中央農業総合研究センター(北陸)) 


◆ホシニシキ
●アミロース含有率が22~25%の、やや高アミロース米です。
●炊飯米の粒形が一般米と同じで、冷凍米飯などの素材として期待されます。

ホシニシキ
ホシニシキの籾と玄米 (提供 :作物研究所)

「栽培上の留意点」 
●高アミロース米は、米粉麺用や調理加工用米として利用されるため、生産を始める前に、販売先の確保に十分留意する必要があります。

色のついたお米:有色素米

●玄米の表面が、赤色(赤米)や黒色(紫黒米)の米です。
●古代米などとして販売されています。


有色米品種(左上より夕やけもち、紅衣、あきたこまち、左下より紫こぼし、朝紫、おくのむらさき) (提供 :東北農業研究センター)

「東北向け」 
◇紫黒米品種
◆おくのむらさき(うるち米)
◆朝紫(もち米)
●玄米の表面に、抗酸化活性を示す紫色の色素(ポリフェノールの一種)を含んでいます。
●熟期は、あきたこまちとほぼ同じです。
●倒伏に強く、従来の紫黒米より多収です。

◇紫黒米小粒品種
◆紫こぼし(もち米)
●極小粒の紫黒米でポリフェノールの一種を含みます。
●プチプチとした特徴的な食感があり、調理飯の素材として利用できます。

◇赤米品種
◆紅衣(うるち米)
◆夕やけもち(もち米)
●玄米に、アントシアニジン、タンニン、カテキンを多く含みます。
●両品種とも倒伏に強く、一般品種並の収量があります。

紫おにぎり(おくのむらさき)左:紅衣(赤米)、右:朝紫(紫黒米)
 :紫おにぎり(おくのむらさき) (提供 :東北農業研究センター) 
:東北地域向けの色素米品種 (左 :紅衣(赤米)/右 :朝紫(紫黒米)) (提供 :東北農業研究センター)


2014_09ine02_image24.jpg夕やけもちの加工品 左から赤米餅・赤米酒・米粉麺
 :「紫こぼし」と「朝紫」を混ぜた赤飯
(左 :紫こぼし/右 :朝紫 それぞれ10%ずつ玄米を混入) (提供 :東北農業研究センター)
:夕やけもちの加工品 左から赤米餅、赤米酒、米粉麺 (提供 :東北農業研究センター) 


「九州向け」 
◇赤米品種 
◆ベニロマン(うるち米)
◆紅染めもち(もち米)
●両品種とも、赤米としての着色がよく、倒伏に強く栽培しやすい品種です。
●赤色の色素を利用した赤飯や赤酒、和菓子などとして、商品化が進んでいます。

ベニロマン(うるち米)紅染めもち
 :ベニロマン(うるち米) (提供 :九州沖縄農業研究センター)/  :紅染めもち

ベニロマンの赤米酒
ベニロマンの赤米酒 (提供 :九州沖縄農業研究センター)

「栽培上の留意点」 
●色素米が周辺の一般品種に混入すると、大きな問題になります。熟期をずらせた品種を利用する、などの注意が必要です。

胚芽を利用する米:巨大胚米

●胚芽が大きな米です。
●玄米を水に浸漬すると、胚芽内にγ-アミノ酪酸(ギャバ)が多く蓄積されることから、発芽玄米や胚芽精米として期待されます。

「北海道向け」 
◆ゆきのめぐみ
●北海道での熟期は、中生の早です。
●一般品種に比べて倍近く胚が大きい、北海道向きの巨大胚品種です。

ゆきのめぐみ籾玄米
ゆきのめぐみの籾(左)と玄米(右)  (提供 :北海道農業研究センター)

「東北向け」 
◆恋あずさ
●熟期はあきたこまち並で、倒伏に強く、耐冷性も非常に強いため、東北地域で安定的に栽培できます。

恋あずさ発芽玄米恋あずさ(ファインフーズ梓川)
 :恋あずさ発芽玄米 (提供 :東北農業研究センター )
 :恋あずさ(ファインフーズ梓川)(提供 :東北農業研究センター)


◆めばえもち
●もち米の巨大胚米品種です。
●こがねもちと同じ熟期で、胚芽入り餅や団子、甘酒などに使われます。

左:めばえもち 右:コシヒカリめばえもちを使った「おかき」
 :「めばえもち」(左)と「コシヒカリ」(右)の玄米 (提供 :中央農業総合研究センター(北陸))
 :めばえもちを使った「おかき」 (提供 :中央農業総合研究センター(北陸)) 


「関東以西向け」 
◆はいいぶき、はいごころ
●胚芽が精米時に落ちにくいので、胚を残した分搗き米にして、普通の精米と同じように炊飯できます。
●はいいぶきはうるち米で、はいごころは低アミロース性も兼ね備えています。

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関東以西地域向けの巨大胚米品種(左 :はいごころ/右 :はいいぶき)
(提供 :近畿中国四国農業研究センター)


「栽培上の留意点」 
●巨大胚米は苗立ちが不安定な品種が多く、育苗には注意が必要です。
●籾すりの際に胚が落ちやすいので、機械の速度を落として、収穫調製する必要があります。

粒が薄く甘いお米:糖質米

●水溶性多糖類を多く含むほのかに甘いお米です。
●玄米を水に浸漬すると胚芽内にγ-アミノ酪酸(ギャバ)が多く蓄積されることから、発芽玄米入りおにぎり、おはぎに向きます。

「関東以西向け」 
◆あゆのひかり
●発芽玄米では一般品種の3倍程度のギャバを含みます。
●コシヒカリと同程度の熟期で、栽培できます。

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「あゆのひかり」(左)と「コシヒカリ」(右)の玄米
(提供 :中央農業総合研究センター(北陸)


「栽培上の留意点」 
●糖質米は極端に穂発芽しやすいので、穂発芽が生じにくい出穂後25-30日をメドに収穫する必要があります。
●また、千粒重が低いので、収量は低いです。

いろいろな料理に向くお米:調理加工用米

「関東以西向け」 
◆笑みの絆
●炊飯米がほぐれやすく、粘りがあまり強くないため、寿司米としての適性があります。
●高温条件下でも品質が落ちにくい特徴もあります。

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「笑みの絆」(左)と「コシヒカリ」(右)の玄米
(提供 :中央農業総合研究センター(北陸))


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「笑みの絆」を用いたにぎり寿司 (提供 :中央農業総合研究センター(北陸))

◆和みリゾット
●イタリアのお米CARNAROLIを交配母本として育成した品種で、大粒でリゾットへの調理適性があります。

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「和みリゾット」(左)と「コシヒカリ」(右)の玄米
(提供 :中央農業総合研究センター(北陸))


◆華麗舞
●表面の粘りは少ないですが、内部はコシヒカリ並に柔らかく、カレー用の調理米飯に向いています。

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「華麗舞」(左)と「コシヒカリ」(右)の玄米 
(提供 :中央農業総合研究センター(北陸))


「栽培上の留意点」 
●調理加工用米については、生産を始める前に用途に合わせた販売先の確保に十分留意する必要があります。

執筆者 
根本 博
農研機構 作物研究所 稲研究領域長

一部加筆(2014年2月)
農研機構 作物研究所 稲研究領域 稲育種研究分野 主任研究員
後藤 明俊

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