提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


地域に適応した飼料用米の多収性品種

2009年6月11日

(2016年3月 一部改訂) 

飼料用米の多収性品種とは

●国内の飼料自給率を高めるために、輸入濃厚飼料に代えて飼料用米の利用が進められています。
●飼料用米品種は、子実の多収性や栽培のしやすさによって、低コストで生産することができます。
●飼料として用いるイネには、ここで紹介する飼料用米品種に加えて、粗飼料としてのみ用いる、長稈で茎葉が多収な稲発酵粗飼料用(稲WCS用)品種もあります。

飼料用米品種

「飼料用米品種の特徴」 
●多肥栽培条件で多収を達成するために、耐倒伏性や耐肥性が強い品種が育成されています。
●食用の炊飯米として利用しないので、炊飯したときの食味や玄米の粒大、玄米の外観品質は良食味米品種と異なります。

「飼料用米品種の栽培適地」 
●飼料用米の主要な多収品種として20品種が育成されており、ほぼ全国で利用可能です。これらの20品種は、農林水産省で子実の収量が多いことが確認され、多収性専用品種に位置づけられています。
●この他にも各県で育成した品種があり、育成県では利用が可能です。

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飼料用米品種の栽培適地

◆北海道向き品種「きたあおば」 (北海道農業研究センター育成)
●北海道での栽培に適する、極多収の水稲品種です。 
●耐倒伏性は強くないので、極多肥栽培や直播栽培には注意が必要です。

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 :「きたあおば」の草姿 /  :「きたあおば」(左)と「きらら397」(右)の玄米と籾
(提供 :北海道農業研究センター)


◆北海道向き品種「たちじょうぶ」 (北海道農業研究センター育成)
●北海道での栽培に適する極多収品種です。
●倒れにくく、いもち病に強いので栽培しやすく、飼料用米と稲WCS用の兼用品種として利用できます。

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 :「たちじょうぶ」の草姿 /  :「たちじょうぶ」(左)と「きらら397」(右)の籾と玄米
(提供 :北海道農業研究センター)


◆北海道向き品種「北瑞穂」(北海道農業研究センター育成)
●北海道での栽培に適する、障害型耐冷性が強い多収品種です。
●耐倒伏性は強くないので、極多肥栽培や直播栽培には注意が必要です。

◆北東北及び中山間地向き品種「みなゆたか」 (青森県産業技術センター育成)
●障害型耐冷性が強く、低温年でも安定した玄米収量が期待できます。
●強稈で生育量が多い「ふゆげしき」に、障害型耐冷性が強く、多収の「ふ系186号」を交配して育成しました。
●玄米収量が多く、飼料用米に適します。

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 :「みなゆたか」(左)と「むつほまれ」(右)の籾と玄米 /  :「みなゆたか」の草姿 
(提供 :(地独)青森県産業技術センター 農林総合研究所)


◆東北中部以南向き品種「べこごのみ」 (東北農業研究センター育成)
●安定して多収の「ふくひびき」と、穂が大きく多収の「97UK-46」の交配組合せから育成された、飼料用米と稲WCS米用の兼用品種です。
●全国的にも東北地域でも早生で、基幹品種の「あきたこまち」よりも、早く収穫できます。
●耐倒伏性に優れ、直播栽培にも適しています。

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 :「べこごのみ」の草姿 /  :「べこごのみ」の玄米と籾
(提供 :東北農業研究センター)


◆東北中部以南向き品種「ふくひびき」 (東北農業研究センター育成)
●登熟の良い「コチヒビキ」と、籾数が多く草姿が良い「奥羽316号」の交配組合せから育成された、多収の日本型品種です。
●全国的には早生、東北地域では中生熟期で、倒れにくく直播栽培にも適します。

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 :「ふくひびき」の草姿 /  :「ふくひびき」の玄米と籾
(提供 :東北農業研究センター)


◆東北中部以南向き品種「べこあおば」 (東北農業研究センター育成)
●大粒の「オオチカラ」と多収の「西海203号」の交配組合せから育成された、大粒の多収品種です。
●飼料用米と稲WCS用の両方に適しています。

 
 :「べこあおば」の草姿 /  :「べこあおば」(上)と「ひとめぼれ」(下)の穂 
(提供 :東北農業研究センター)


◆東北中部以南向け品種「いわいだわら」(東北農業研究センター育成)
●大粒で多収の「奥羽飼394号」と多収の「奥羽飼395号(べこごのみ)」の交配組合せから育成された、大粒の多収品種です。
●多肥栽培で稈長が長くなりますが、茎が太いので倒れにくいです。

◆東北南部以南向き品種「夢あおば」 (中央農業総合研究センター育成)
●北陸地域の主力品種である「コシヒカリ」より早く収穫でき、湛水直播栽培に適して倒れにくい品種です。
●縞葉枯病に対して抵抗性です。

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左 :「夢あおば」(右)と「ふくひびき」(左)の草姿 (提供 :中央農業総合研究センター)
右 :「夢あおば」(左)と「ふくひびき」(右)の玄米と籾 (提供 :中央農業総合研究センター) 


◆東北南部以西向き品種「ゆめさかり」 (中央農業総合研究センター育成)
●大粒で玄米収量が多い品種です。
●いもち病抵抗性は、葉いもち、穂いもちとも"やや強"です。

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「ゆめさかり」の草姿 (提供 :中央農業総合研究センター)

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「ゆめさかり」(左)、「ひとめぼれ」(中)、「夢あおば」(右)の玄米
(提供 :中央農業総合研究センター)


◆関東以西向き品種「タカナリ」 (作物研究所育成) 
●韓国の日印交雑品種同士の交配から育成された、極多収品種です。
●天候によって、脱粒しやすいこともあります。種子の休眠性が強いため、苗立ちが悪い時があります。
●縞葉枯病に対して抵抗性です。一部の除草剤に対して薬害を起こします。

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 :「タカナリ」の草姿 /  :「タカナリ」(左)と「日本晴」(右)の玄米と籾
(提供 :作物研究所) 


◆東北南部以西向き品種「ホシアオバ」 (近畿中国四国農業研究センター育成) 
●多収系統「多収系174」を母、大粒の「オオチカラ」を父とした交配組合せから育成された品種です。
●米と茎葉の両方が多収で、地上部全体の収量は、一般食用米品種よりも15%程度多収です。
●縞葉枯病に対して抵抗性です。

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 :「ホシアオバ」の草姿 /  :「ホシアオバ」の籾と玄米 
(提供 :近畿中国四国農業研究センター)


◆関東以西向き品種「もちだわら」 (作物研究所育成)
●玄米収量が高い糯(もち)品種です。
●天候によって脱粒しやすいこともあります。種子の休眠性が強いため、苗立ちが悪い時があります。
●縞葉枯病に対して抵抗性です。

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 :「もちだわら」の草姿 /  :「もちだわら」(右)、「おどろきもち」(中)、「日本晴」(左)の籾と玄米
(提供 :作物研究所)


◆北陸、関東以西向き品種「北陸193号」 (中央農業総合研究センター育成)
●優れた耐倒伏性と収量性を備えた品種です。
●韓国品種「水原258号」や中国品種「桂朝2号」など、海外の多収品種を素材にして開発されました。
●種子の休眠性が強いため、苗立ちが悪い時があります。縞葉枯病に対して抵抗性です。

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 :「北陸193号」の草姿 /  :「北陸193号」の穂と日本晴 
(提供 :中央農業総合研究センター)


◆関東以西向き品種「モミロマン」 (作物研究所育成)
●国際稲研究所のNew plant type系統「IR65598-112-2」に、多収の「西海203号」を戻し交雑して育成された飼料用品種です。
●粗玄米収量と地上部全重収量に優れ、飼料用米と稲WCS用の兼用品種として利用できます。
●一部の除草剤に対して薬害を起こします。

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 :「モミロマン」の草姿 /  :「モミロマン」の籾と玄米とタカナリ、日本晴
(提供 :作物研究所)


◆関東以西向き品種「クサホナミ」 (作物研究所育成)
●茎葉と子実の両方が多収で、飼料用米と稲WCS用の両方に適する兼用品種です。
●長稈ですが稈質が強く、耐倒伏性に優れます。
●縞葉枯病に対して抵抗性です。

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 :「クサホナミ」の草姿 /  :「クサホナミ」の穂 
(提供 :作物研究所)


◆関東以西向き品種「クサノホシ」 (近畿中国四国農業研究センター育成)
●多収の「多収系175」を母、「アケノホシ」を父とした交配組合せから育成された水稲品種です。
●地上部全重収量と玄米収量の両方が高く、飼料用米と稲WCS用の両方に利用可能です。
●縞葉枯病に対して抵抗性です。

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 :「クサノホシ」の草姿 /  :「クサノホシ」の籾と玄米
(提供 :近畿中国四国農業研究センター)


◆九州向き品種「まきみずほ」 (九州沖縄農業研究センター)
●出穂期は暖地の普通期栽培では「日本晴」や「ホシアオバ」に近い早稲種です。
●大粒で、玄米収量が多収です。
●縞葉枯病に対して抵抗性です。

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 :「まきみずほ」の草姿 / :「まきみずほ」(上)と「ヒノヒカリ」(下)の穂
(提供 :九州沖縄農業研究センター)


◆九州向き品種「モグモグあおば」 (九州沖縄農業研究センター)
●大粒で、玄米収量が多収です。
●耐倒伏性が強く、直播栽培にも適しています。
●縞葉枯病に対して抵抗性です。

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 :「モグモグあおば」の草姿 / :「日本晴」(左)、「モグモグあおば」(中)、「ホシアオバ」(右)の籾と玄米
(提供 :九州沖縄農業研究センター)


◆九州での普通栽培向き「ミズホチカラ」 (九州沖縄農業研究センター育成)  
●暖地向きの子実多収型品種です。
●背丈が低いため倒伏には非常に強く、収量性は一般食用品種より約20%多収です。
●一部の除草剤に対して薬害を起こします。

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 :「ミズホチカラ」の草姿 /  :「ミズホチカラ」(左)と「ニシホマレ」(右)の玄米
(提供 :九州沖縄農業研究センター)


「栽培上の注意点」
「モミロマン」「タカナリ」「ミズホチカラ」の3品種は、一般食用品種に使用できる除草剤のうち、ベンゾビシクロン、メソトリオン、テフリルトリオンのどれか一つでも含む除草剤により、甚大な薬害を生じる恐れがあります。これらの品種を作付けする場合は、使用できる除草剤について、もよりの農業改良普及センターに確認して ください。
●20品種のうち、「きたあおば」、「たちじょうぶ」、「みなゆたか」、「ゆめさかり」を除く16品種は、外国品種からいもち病抵抗性遺伝子を導入しています。これらの品種は栽培面積が広がると、その品種を特異的に加害するいもち病菌が増え、急に抵抗性を失うことがありますので、いもち病への反応の変化には注意が必要です。
●施肥は、栽培初年目は一般品種の5割増し程度とし、倒伏の問題が生じないようであれば、2年目以降さらに増肥します。ただし、倒伏しやすい品種は注意が必要です。
●できるだけ家畜堆肥を利用して、肥料代を節約するようにします。
●直播栽培をする場合は、出芽苗立ちに注意します。休眠の強い品種は、休眠を打破する必要があります。
●病害虫の発生に気をつけて対処します。

●詳しくは、以下の資料を参考にしてください。
「飼料用米の多収性専用品種に取り組むに当たって-多収性専用品種の栽培マニュアル-」 (農林水産省)
「米とワラの多収を目指して2013」 (作物研究所)

飼料用米の利用法

●牛・豚・鶏用の濃厚飼料として用います。
●牛や豚には、玄米にするか、籾の場合は圧扁または破砕した籾を給与します。
●豚の飼料へ肥育全期間に飼料米を15%、30%配合すると、慣行飼料を給与した場合と比較して遜色なく良好な成績が得られています(「飼料米の生産技術・豚への給与技術」 畜産草地研究所)。
●鶏の場合は、玄米を砕かずに給与するので、給与を開始すれば、籾の給与も可能です。 

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 :破砕した「ホシアオバ」の籾(提供 :中央農業総合研究センター 重田一人)
 :飼料米を給与している豚


執筆者 
加藤 浩
農研機構 作物研究所 低コスト稲育種研究チーム

一部加筆修正(2016年3月)
山口 誠之
農研機構 作物研究所 稲研究領域

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