提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


アイガモ・水稲同時作(アイガモ農法)

2009年5月20日

はじめに

●アイガモ農法は有機農法の一つで、水稲の除草をアイガモで行いながらアイガモを育てます。
●富山県砺波平野で産声を上げ、福岡県筑豊のへそから日本の各地に普及していきました。
●アイガモ(カモとアヒルの交雑種)を扱うため、生き物特有の手間を必要としますが、楽しみも多くあります。


アイガモの放飼状況

アイガモの飼育・管理

●アイガモは、ふ化業者から購入するのが一般的です。初生ヒナ(生まれたばかりのヒナ)は一羽700~800円します。
●ふ化業者から購入する場合は、アイガモを水田に放飼する時期を決めて購入します。
●大規模に経営する場合は、自分でふ化するのも一方法です。
●自宅での飼育は2週間程度ですが、初生ヒナは栄養失調になりやすいので、玄米くず、きざんだ青物を与える必要があります。
●白米などを長く与えると脚気症状を起こし、開脚となりやすいので注意します。また、放飼にそなえて水に慣らすことも必要です。
●幼鳥は低温に弱いので、寒い地方では保温が必要です。
●飼育中は、床を清潔に保つことが重要です。

放飼期間中の管理

●アイガモを放飼する水田には、天敵(カラス、野犬、キツネなど)から保護するために、テグスと電気柵(ネット付き7万円程度/10a)を張ります。
●一日に1回は、アイガモ(ついでにイネの生育状況も)の見回りが必要です。
●放飼後1週間くらいで、水田の雑草は、ほとんどなくなります。その後は、毎日決めた時間に声をかけながら、給餌(屑米・青物)をする必要があります。
●放飼中の水深は、アイガモの成長に合わせて、「泳げて歩ける」深さの5~10cm程度にします。
●決められた場所で給餌すると、アイガモの引き上げの時に大いに役立ちます。
●土用干しの時は、給餌場に水場を確保する必要があります。
●田んぼの形状にもよりますが、一区画の適正面積は、20~30aです。
●放飼水田の代掻きが均平でないと、除草効果が劣るとともに、アイガモが一カ所に集まり、池ができやすいので注意します。
 
 :田圃を囲む電気柵とネット (提供 :中央農業総合研究センター・フィールドモニタリング研究チーム・林孝氏)  / 
 :均平不良でできた池で遊ぶアイガモ達 

水田への導入時期と引き上げ時期

●放飼する時期は、地域によって異なりますが、水稲が活着(田植え後10~14日)した頃に、2週間くらい育てたアイガモを、10a当たり10~20羽放します。
●健康で活発な状態のヒナを選んで放します。 
●その後もアイガモの状況を観察し、衰弱しているアイガモは引き上げて再飼育し、状況を見て放すようにします。
●放飼した水田に、土の畦畔があれば問題はありませんが、ないときには、休憩場所と給餌場を兼ねた場所を作る必要があります。
●引き上げる時期は、最大に延ばしても、穂孕み期~開花期までです。それ以降になると、籾を食べるので注意が必要です。

 
 :アミミドロでいっぱいになった被害水田/ 
 :アイガモによるアミミドロの防除効果試験区。中央の囲った所がアイガモ無処理区

アイガモの後処理

●引き上げたアイガモは、業者に引き取ってもらう場合もあります。そうでない場合は、自分で責任をもって処理します。
●引き上げた後、11~12月(できれば霜が降りるまで)頃まで肥育し、脂がのった時期に解体します。
●毛抜きのためにアイガモを湯につけたら、皮膚までお湯が届くようにすることが、秘訣です。
●解体したアイガモは、カモ鍋用に野菜やキノコなどをつけて付加価値を高めて、販売することもできます。

アイガモ放飼の効用

●雑草はほとんど完全に除草されます。雑草を食べるだけでなく、アイガモが水かきで土壌表層を撹拌することにより、水は濁り、雑草の発生は少なくなります。
●雑食性で、ウンカ・ツマグロヨコバイなどの害虫も好んで食べます。
●糞は水稲の栄養分となりますが、過密に放飼すると、登熟期に追肥した状況が起こり、米の食味に影響することもあります。
●家族全員がアイガモに関わりを持ったことで、以前にも増して家庭が円満になったと聞くことがあります。


 :アイガモ放飼区 /  :アイガモ無放飼区(雑草はコナギ) 

栽培上の留意点

●放飼したアイガモに給餌するときは、アイガモが驚かないように、遠くから声をかけます。
●アイガモは驚くと我先に逃げ出し、そのときに水稲を踏み倒します。この状態を何度か繰り返すと徐々に池が大きくなり、そこにアイガモが集まりやすくなって、除草効果が小さくなります。


アイガモにより作られた池 

●アイガモが、水稲の病気を治すことはできません。あらかじめ、骨太の水稲(病気に強い品種など)を育てることが大切です。 
●アイガモの健康状況を観察することは、公衆衛生の面から重要です。

執筆者 
浅野紘臣
日本大学短期大学部生物資源学科教授

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