提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


冷害に強い稲の栽培法

2009年4月28日

冷害の種類

冷害の種類は、遅延型冷害と障害型冷害に大別されます。

「遅延型冷害」 
●低温により出穂期が大幅に遅れたり、出穂後の長期間の低温により登熟不良になる現象です。

「障害型冷害」 
●穂ばらみ期の低温により、主に花粉の形成が阻害され、出穂しても受粉されず、籾が実らない(障害不稔の発生)現象です。

「対策」 
●これらの冷害を軽減する対策としては、①品種の選定、②播種時期や移植時期の移動による出穂期の調節、③水管理による稲体の保温、④栽植様式や施肥法等による稲の活力向上と適正な籾数の確保等があります。

 
  品種及び出穂期のちがいと稔実粒歩合
  注)いずれも冷害年の値である。品種、出穂期によって稔実粒歩合が異なる。

遅延型冷害を軽減するために

●遅延型冷害の基本的な対策としては、早生品種の導入や出穂期を早める肥培管理が必要です。
●出穂期が早ければ、遅延型冷害に遭遇する危険性は少なくなる反面、障害型冷害に遭遇する可能性が高くなります。 
●地域により、これらの冷害に遭遇する頻度が異なるので、気象条件等を考慮して期待する出穂期を決めます。


遅延型冷害による稲の青立ち(平成15年 青森県五戸市) 提供:東北農業研究センター西田瑞彦氏

「品種の選定」 
●出穂期の早い早生品種の導入が効果的ですが、障害型冷害に遭遇する危険性が高くなるため、冷害抵抗性の強い品種を選択する必要があります。
●出穂期が同じ程度の場合は、登熟日数の短い品種を選択します。 

「出穂期を早める肥培管理」 
●移植適期の中で移植時期を早めたり、播種時期の早い中成苗などを用います。
●冷水がかかる水田では、迂回水路や温水チューブを利用します。
●畦畔の補修などの漏水対策を行い、気温の低い時は湛水し、日射による水温上昇効果を図ります。

「適正な籾数の確保」 
●二次枝梗粒数が多く、一穂籾数の多い稲は、不良天候の場合は登熟歩合が低下しやすいので、一次枝梗粒数歩合の高い稲作りを目指します。
●遅直り(生育中期に窒素が発現)する水田では、生ワラすき込みや、未熟堆肥の施用を避けます。
●適正な栽植密度と植え付け本数を確保し、有効茎歩合の高い稲づくりを目指します。 
●二次枝梗粒数を多くしないように、幼穂形成期前後の窒素の過剰追肥を避けます。 

障害型冷害を軽減するために

「被害を受けやすい時期」 
●温暖化により平均気温はやや高くなっていますが、寒暖の差が大きい異常気象も発生しやすくなっています。
●冷害に打ち勝つためには、低温に弱い時期と、その対策法を知ることが大切です。
●障害型冷害の原因となる花粉の形成阻害は、穂ばらみ期に、平均気温20℃以下の日が数日続いたり、最低気温が17℃以下になると、発生しやすくなります。
●被害を最も受けやすい時期は、出穂7~14日前頃の減数分裂期で、次いで出穂期と、出穂20~25日前頃の幼穂形成期です。

障害型冷害年における不稔いもち病の発生 
障害型冷害年における不稔()といもち病()の発生(平成15年の冷害年/青森県五戸市)提供:東北農業研究センター西田瑞彦氏

「品種の選択」 
●障害不稔の発生程度は、品種により大きな差があり、障害の受けにくい品種は耐冷性品種と呼ばれます。
●冷害軽減技術の中で、最も効果が高いのは、耐冷性品種の導入です。
●コシヒカリは耐冷性が強い品種ですが、各県の奨励品種の中にも、耐冷性の強い品種がたくさんあります。地域に適した品種を選びましょう。

耐冷性の品種間差異 耐冷性のレベルは、左が「強」、右が「中」
耐冷性の品種間差異 耐冷性のレベルは、左が「強」、右が「中」

「出穂期を遅らせる方法」 
●主に東北地方では、数年に一度の頻度で、7月中旬頃に異常低温になる危険性があります。
●稲の減数分裂期を、この時期より遅らせることで、障害不稔の発生を軽減できます。
●出穂期を遅らせるには、出穂期の遅い品種を選択します。
●現在と同じ品種を用いる場合は、播種時期を2週間程度遅らせる(出穂期は数日間遅れる)方法があります。

「水管理」 
●気温の低い日は、気温よりも水田の水温が高いことが多いので、異常低温が予想される時には深水にし、幼穂を低温から保護します。
●幼穂形成期頃の低温時には、10cm程度の深水にします。
●減数分裂期頃の低温時には、20cm程度(可能な限り)の深水にします。 
●日射による水温の上昇を図るため、深水にしたら日中は止め水にします。
●中山間地のように用水の温度が低い地域では、迂回水路や温水チューブ等を利用し、水温の上昇に努めます。

稲の活力を高める栽培法

●障害型冷害や遅延型冷害による被害を軽減するためには、上記のような品種の選定や出穂期の調整、水管理等の対策のほかに、活力の高い稲づくりを常に心がけることが大事です。

「土づくりの励行」 
●堆肥や有機質資材の施用は、稲の根張りなどを良くします。
●リン酸やケイ酸資材の施用により、低温障害の軽減が期待されます。


冷害年における土作りとコシヒカリの収量 (出典:営農技術の提案 「気象変動に強い米作り」

「施肥による調整」 
●稲体の窒素成分が多いと、過繁茂して受光体勢が悪くなったり、冷害抵抗性が弱まったりします。
●堆肥や有機質資材の窒素発現量を考慮し、基肥は過剰にならないようにします。
●減数分裂期頃に異常低温が予想されるときは、幼穂形成期頃の追肥窒素成分量を控えます。天候が回復したら、残りの窒素成分量を追肥します。
●緩効性肥料の追肥は、速効性肥料に比べ、急激な窒素濃度上昇が起きないので、冷害軽減効果が期待されます。

「疎植栽培」 
●中成苗などを用いた疎植栽培の稲は、冷害に強いと言われています。
●疎植栽培では、出穂始めから終わりまでの期間が長いことから、減数分裂期間が長く、低温障害を受ける期間の割合が小さくなります。
●根圏が深く、有効茎歩合も高く、稲の活力が高くなるといわれます。

「活力の高い稲づくり」 
●冷害に強い稲作りを目指すには、稲の活力を高める栽培技術の導入が大切です。
●適正な栽植密度や植え付け本数を守り、有効茎歩合の高い稲づくりを目指します。
●特に、生育過剰で減数分裂期以降に凋落が起きる水田では気をつけます。
●稲の生育に応じた水管理(深水管理、落水管理、間断かんがい、中干し)を行い、根の健全化を図ります。
●特に、根腐れの発生しやすい水田では気をつけます。

執筆者 
藤井 薫
宮城県農産園芸環境課

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