提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


はえぬき 安定多収・良質の稲栽培法の基本

2009年4月24日

(2014年4月一部改訂) 

はじめに

出穂期(8月上旬) ●「はえぬき」は、平成3年に山形県が育成した品種です。
●収穫量(平成25年)は、全国第5位です。
●短稈で稈が強く、倒れにくい特性があります。
●栽培しやすく、品質・食味が優れた山形県の主力品種です。
●冷害にも強く、玄米外観、品質も良好な上、食味は、平成6年から20年連続で「特A」にランキングされています。
●山形県平坦部(東北南部)における出穂期は8月上旬、収穫期は9月下旬です。
 :出穂期(8月上旬)

育苗のポイント

育苗管理(灌水作業 4月) ●育苗期間中に、病気が発生しないよう、注意します。
●塩水選・種子消毒・床土の消毒を徹底します。
●地域の病害虫防除基準を守って、適正に防除します。
●浸漬期間(日数)の目安は、水温の日積算温度で約120℃(12℃ならば10日間)です。
●苗の葉色は、やや濃いのが特徴です。健苗育成のために、播種量や温度管理には十分注意します。
●全国的に温暖化傾向が叫ばれる中、出穂の早期化、登熟期間の高温による品質低下を避けるため、播種・耕起・移植の時期を遅らせる動きが広がっています。
●春作業の時期を見直すことも必要です。
 :育苗管理(灌水作業 4月)

施肥のポイント

「基肥」 
●施肥は、基肥を中心とします。
●過度の追肥は、品質や食味の低下を招きます。
●基肥は、10a当たり窒素成分で5.0kgとしますが、地力などにより、若干の加減をします。
●総施用量が多すぎると、食味(官能値)が低下するため、多肥は避けましょう。

「追肥」 
●追肥は、基本的に幼穂形成期の一回とします。
●時期は幼穂形成期(出穂前25日頃)とし、追肥量は、10a当たり1.5~2.0kgです。
●食味を低下させるので、穂孕期(減数分裂期)の追肥は行いません。 



●出穂期に近い追肥は、玄米粗タンパク質含有率が高くなり、食味が低下するので、行いません。
●施用時期を逃さないよう注意します。
●「はえぬき」は、「ササニシキ」や「コシヒカリ」に比べて葉色が濃く推移するので、追肥は葉色だけで判断しないようにします。
●葉色が極端に低下すると、回復が困難な品種なので、追肥は遅れないようにすることがポイントです。

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分げつ期


※葉色板は安価で簡便ですが、個人差や誤差を生じやすいため、山形県では葉緑素計(SPAD)で行うことが望ましいとしています。

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中干し時の生育(7月上旬)

適正収量構成要素

「はえぬき」の基本指標」
●整粒歩合80%を目指した「はえぬき」の基本指標は、表のとおりです。



「適正籾数の確保」 
●「はえぬき」では、㎡当たり籾数3.0~3.2万粒程度が適正で、目標とする籾数です。
●このときの玄米収量(1.90mm:LL調製)は、10a当たり580kgです。
●㎡当たり籾数が3.2万粒を超えると、整粒歩合が急激に低下し、その結果、玄米粗タンパク質含有率が高まって、食味が低下します。
●同様に、登熟歩合や玄米千粒重の低下割合も大きくなってしまいます。
●玄米粗タンパク質含有率7.0%以下を目標とする場合には、㎡当たり籾数を2.8~3.0万粒に抑えて、登熟の向上を図ります。このときの玄米収量は、10a当たり560kgとします。
●適正な籾数レベルは、地域により異なります。
●山形県内でも地域により穂数、1穂籾数の確保が異なりますが、たとえば、庄内地域では、内陸地域に比べ1穂籾数が減少し、茎数、穂数の多い生育型となっています。

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登熟中期(9月上旬)

生育診断と対応技術

●「はえぬき」本来の優れた食味特性を十分に引きだすためには、生育や㎡当たり籾数をうまく調整することが大切です。

「生育診断のポイント」 
●収穫期の窒素吸収量からみると、「はえぬき」の玄米生産効率(精玄米重kg/窒素吸収量kg)は、「ササニシキ」「コシヒカリ」より低いので、籾1粒当たりの窒素量(粗タンパク質含有量)が増加しやすい傾向があります。
●穂揃期の籾1粒当たりの窒素量や収穫期の窒素吸収量が多いと、食味の低下や外観品質の低下につながります。
●葉色をみて、栄養診断をします。
●10.5葉期(山形県では7月10日頃)の葉色(SPAD値)が40を超えるときおよび、葉色板で5.1より濃いときは、量を減らして追肥をします。

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10.5葉期頃 (7月10日)




「籾数を制御する技術」 
●㎡当たり籾数を制御するには、①中干し期間を延長する、②幼穂形成期の追肥を減らす、の2つの方法があります。
●通常10日間実施する中干し期間を20日間にすると、㎡当たり籾数が4%程度減ります。
●幼穂形成期の追肥を50%減らすと、㎡当たり籾数が6%程度減ります。
●幼穂形成期の追肥を省略すると、㎡当たり籾数が10~15%減ります。
●葉色は淡くても、葉が生きていることが大切です。
●登熟を向上させ、粒の肥大を良くするために、より多くの生葉数を登熟期に確保することが必要です。
●間断かんがいと早期落水防止に努め、こまめな水管理を心がけます。

●刈取り適期は、㎡当たり籾数で異なります。3.0~3.4万粒では出穂後の日積算平均気温1000~1200℃、これより少ない場合は、950~1100℃、多い場合は、1000~1150℃を目安とします。
●刈取り時の青籾歩合は15%程度です。
●早刈りすると、青米等の混入により白度が低下し、刈り遅れると、薄茶米等の混入により品質・食味が低下します。
●乾燥は、仕上がり水分15%を目標にします。
●選別には1.90mmの網目を使用し、流量を適正にします。

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コンバイン収穫作業(9月下旬)

おわりに

●近年は温暖化の傾向があるので、気象変動を前提とした稲作が必須です。
●気象と水稲生育の変化に応じて、今までの技術体系を補正し、「的確で無駄のない追肥」、「防除等の栽培管理」、さらに「品種選択や作付計画などにつなげるための迅速な情報入手」に努めましょう。
●栽培管理記録簿の記帳を実践し、「安全安心なコメ生産」に努めましょう。
●山形県では、主力品種「はえぬき」の組合せ品種として「コシヒカリ」と同熟期の「つや姫」が平成22年にデビューしました。
●炊飯米の甘み、白さ、つやが際立ち、ごはんのおいしさが特長の品種で、また登熟期の高温にも強いことから、現在、山形県の1割程度、さらに宮城県、大分県、長崎県、島根県の4県でも奨励品種として、有機栽培か特別栽培で作付けされています。

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籾と玄米 左から「つや姫」、「コシヒカリ」、「はえぬき」

執筆者 
中場 勝
山形県農業総合研究センター 水田農業試験場 水稲部長

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