提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


西日本における超多収稲の栽培法の基本

2009年4月22日

はじめに

●近畿以西の西日本での移植栽培で、10a当たり粗玄米収量700kg以上の子実収量が期待できる超多収品種として、「タカナリ」、「北陸193号」、「ホシアオバ」、「モミロマン」、「ミズホチカラ」等があります。
●品種により、出穂期や粒形、耐病性、低温耐性等に違いがあるので、各栽培地の条件に適した品種を選びます。

品種の特徴

「タカナリ」「北陸193号」 
●インド稲の遺伝的影響が強く、葉色が濃く生育が旺盛です。
●収量性は高いですが、低温には弱いです。

北陸193号の草姿(登熟期)
北陸193号の草姿(登熟期)

「ホシアオバ」 
●大粒で、一般食用品種との違いが明らかです。
●穂発芽の発生や多肥による倒伏に、注意します。

「モミロマン」「ミズホチカラ」 
●葉色がやや淡く、出穂はやや遅めです。
●ゆっくり登熟が進んで、登熟後半に収量を稼ぐ性質があります。
●縞葉枯病への抵抗性が劣るので、注意が必要です。

ホシアオバの草姿(登熟期)ミズホチカラの草姿(出穂期)
 :ホシアオバの草姿(登熟期) /  :ミズホチカラの草姿(出穂期)

その他の品種 
●西日本でも標高が高く冷涼な地域では、「ふくひびき」「べこあおば」「夢あおば」など、関東以北向き品種の利用も考えられます。
●関東以北向き品種を西日本で栽培すると、一般に出穂が早まる傾向にあります。 


栽培のポイント

「種子準備・播種・育苗」 
●超多収稲は、通常品種よりも発芽率が低いため、種子はやや多めに確保します。
●「タカナリ」、「北陸193号」は休眠性が強いので、事前に発芽の確認をします。特に前年度収穫の種子を使う際は、注意しましょう。
●休眠打破には、乾籾を加温処理をします。30~40℃で10日間程度、行います。
●「べこあおば」は、加温処理を行うと発芽率が逆に低下する場合があるので、注意します。
●種子消毒や浸種・催芽は、通常の品種と同じようにします。
●品種により発芽の進み具合が異なるので、特に初めての品種を扱う時は、催芽程度をこまめに観察します。
●粒重が大きい品種は、発芽が劣ることがあり、重量が同じでも種子数が少なくなるので、通常より播種量を増やします。
●「ホシアオバ」(玄米千粒重29g程度)で通常の1.3~1.5倍量です。
●苗立ち数は、箱あたり約5000本が、機械移植時の欠株を生じない目安です。
●「タカナリ」は低温に遭うと葉が黄化しやすく、苗丈も短くなりやすいので、温度管理に注意します。


千粒重の異なる種子の苗箱播種状況
左 :「ふくひびき」(玄米千粒重約24g) / 右 :「奥羽飼380号」(玄米千粒重約34g)
播種重量はいずれも乾籾140g


「作期」 
●超多収稲は、移植時期を早めにし、生育期間を長くすると、一般的に収量が増えます。
●「タカナリ」は、生育初期の低温による葉の黄化や、登熟後期の秋冷による葉の枯れや登熟停止がおきやすいので、特に標高が高い地域では、作期設定に注意します。
●「北陸193号」は、出穂期が遅くなると、秋冷により登熟歩合が低下し、収量が下がりやすいので注意します。
●異品種混入を避けるため、一般食用品種と収穫時期が重ならないような作付け計画をたてます。

「肥培管理・水管理」 
●超多収稲で高収量を得るには、多肥栽培が必要です。一般食用品種の1.5~2倍程度の窒素を施肥します。
●超多収稲は、穂数が少なく太茎で葉が直立する草型の品種が多いので、多肥による過繁茂はそれほど心配ありません。
●長稈品種(ホシアオバ等)は、倒伏に注意します。
●「タカナリ」、「北陸193号」を気温の高い温暖地平坦部で栽培する場合、施肥は追肥重視型にし、籾数を多く確保します。倒伏は、ほとんど生じません。
●「タカナリ」は、施肥量が少ないと登熟期に枯れ上がりしやすく、収穫時には脱粒しやすくなるので注意します。


葉身が直立した「タカナリ」の草姿(登熟期)

●「モミロマン」、「ミズホチカラ」は登熟性が低くならないよう、籾数が増えすぎない(㎡当たり約5万粒)程度に追肥をします。
●窒素だけでなく、必要に応じてリン酸、カリも施肥します。
●超多収稲は養分の吸収が旺盛なので、堆肥投入や稲わらすきこみなど、地力維持を心がけます。
●水管理は、通常品種と同じです。超多収稲品種は登熟期間が長いので、それぞれの圃場の排水条件に合わせながらも、あまり早く落水しないようにし、登熟向上につなげます。

「病害虫・雑草防除」 
●「タカナリ」などインド稲の遺伝背景が強い超多収品種では、メイチュウやイネツトムシ、ウンカ類の被害を早めに発見し、適切に防除します。茎が太く葉色が濃いので、加害が多くなる場合があります。
●いもち病や縞葉枯病等への耐病性には品種により差があるので、それぞれ必要に応じた防除を行います。
●除草剤の成分により、一般食用品種に使用登録があっても超多収品種には薬害を生じる恐れがあるため、もよりの農業改良普及センターに確認すると安全です。特に「タカナリ」「モミロマン」「ミズホチカラ」等は、注意が必要です。 

「収穫」 
●超多収稲は籾数が多く、一般食用品種よりも登熟期間が長くなります。
●収穫適期の判断は一般食用品種と同じですが、コメの外観をよくするための早刈りは不要で、収量確保のために十分に登熟させます。
●「タカナリ」は、穂の先端部と基部で登熟度の差が大きく、多収を目指すには早刈りは禁物です。ただし刈り遅れは枝梗が折れやすくなり、籾の脱粒が多くなるので注意します。
●「北陸193号」と「タカナリ」は、どちらも籾が脱落しやすいので、注意します。
●北陸193号」は、「タカナリ」と比べて穂軸の黄化が遅いですが、籾の黄化程度をみて収穫時期を判断します。
●「モミロマン」や「ミズホチカラ」は、登熟がゆっくり進むので、早刈りにならないよう穂の登熟の状態を圃場でよく観察します。
●「モミロマン」と「ミズホチカラ」の脱粒性は「難」です。
●超多収稲は、茎が太く倒れにくいものの、特に収穫時期が早いとコンバインへの負荷が大きく、作業速度が低下しやすくなります。


成熟した超多収稲品種の穂。左から日本晴、ミズホチカラ、モミロマン、北陸193号、タカナリ

「脱落種子・異品種混入対策」 
●収穫時に圃場に落ちた種子は、翌年度発芽して漏生イネとなります。後作に一般食用品種を栽培すると、異品種混入が起きるので注意します。


前年度の脱落種子による漏生イネの発生 (大平陽一氏提供)

●混入を防ぐには、代掻き前に非選択性除草剤を散布するか、代掻き後にプレチラクロールを含む初期除草剤を散布します。
●種子の休眠性がそれほど高くない品種では、収穫後の早い段階に秋耕を行うと、翌年の漏生イネの発生が少なくなります。
●収穫調製用機械等の清掃を丁寧に行って、特に一般食用品種との混入を防止します。

執筆者 
長田健二
近畿中国四国農業研究センター稲収量性研究近中四サブチーム

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