提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


機械移植作業の実際

2009年4月14日

(2014年4月 一部改訂) 

圃場と苗の準備

「圃場の準備」 
●田植え時の土の硬さは、軟らか過ぎると植えた苗が倒れてしまう、硬すぎると苗が植付けた穴から出てしまうなど、どちらの場合も植付け精度が低下します。
●一般に、代かき後は数日間湛水を行い、土壌が適度に沈降して固まるのを待ちます。
●固まるまでの日数は、砂質土では短く1~2日程度、粘土の多い埴土では4~5日以上かかる場合があります。
●田植えは、前日から当日にかけて、土壌表面の水をある程度落としてから機械移植を行います。
●水深が深すぎると、植えた苗が浮いたり、苗が水没したり、田植機のセンターマーカーが見えにくくなるという問題が起こります。
●逆に砂質土などで早くから落水すると、圃場面が乾燥して、植付け精度が下がる場合があります。
●落水のタイミングは、土質や圃場の面積への考慮が必要です。

「苗の運搬」
●田植えに先立って、ハウスや露地で育苗した苗箱を、田植えをする水田まで運搬します。
●軽トラックの荷台に苗箱運搬器を載せ、その棚に苗箱を入れて運搬するのが一般的な方法で、一回に苗箱を60枚程度運べます。
●効率的な田植作業のため、運んだ苗箱は、田植機への苗の補給を考慮して畦畔の近くに並べます。

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トラックから畦畔の横に苗箱を降ろす作業(九州沖縄農業研究センター提供) 

●苗が乾燥し過ぎていると、田植機の苗載せ台の上での苗の滑りが悪くなり、植え付け精度が低下することがあります。この場合は、ジョロ等で苗に潅水します。
●田植えの遅れにより苗が伸びすぎた場合は、苗の先端をカットして草丈を短くします。苗の先端が植え付け爪によって土の中に入ってしまうのを回避するためです。

田植機の準備と調整

「田植機の準備」
●田植機は1年に1時期しか使わない機械で、前年の田植えに使った後は、ずっと倉庫に眠っていたはずです。必要箇所に注油し、動作を確認しましょう。前年の使用後に手入れを怠っていたら、使用前にきちんと手入れをします。 
●苗を載せる前に、田植機を止めたままPTO軸を回転させて、植付け爪と苗載せ台を動かしてみます。変な音がしたら、原因を見つけて、作業前に修理します。
●田植機はデリケートな機械なので、異常音が発生したら直ちに機械を停止して原因を探すようにします。慣れたオペレータであっても、作業中に植付け爪の間に小石が挟まり、爪が広がって掻取り口と接触している場合もあります。

「田植機の調整」
ine6-2image6.jpg●田植機には、植付け深さ、横送り回数、縦送り長さ、などの調節箇所があります。植付け深さは土壌の硬さとも関係するので、移植を始める前に一度調整を行い、植付け途中で再度調整します。
●横送り回数と縦送り長さはマットの掻取り量を決定し、苗箱の播種量との関係で1株植付け本数が決まります。
●植付け深さは2~3cmを目安にします。深すぎると分げつが出にくくなり、浅すぎるところび苗が多くなったりして、出穂してから倒伏しやすくなります。 
●苗載せ台に苗を載せる前に、植付け爪を回転させて、苗載せ台を左右どちらかの端に移動させます。
●これをしないで苗を載せると、欠株が発生しやすくなります。苗の端からではなく途中から掻取りを行うことになり、1回目の横送りが終わって縦送りをする場合に苗の下方への移動がスムーズに行われません。 
右 :肥料繰り出し量の調整作業 

本田での機械移植作業

「苗載せ台に苗を載せる」
●苗は苗箱用のスクレーパですくうか、ルートマットが丈夫ならば、そのまま苗箱から取り出して苗載せ台に載せます。
●通常1条につき2~3枚程度の苗を載せられますが、田植機の左右の苗載せ台にも予備の苗を載せられます。
●マットの一番下側が、苗載せ台の下端に密着するように載せます。
●マットとマットの間にも隙間がないようにします。
●これらの部分に隙間があると、欠株の原因になります。
●苗抑え棒の圧力が強すぎると苗の滑りが悪くなり、植付け本数が少なくなったり、欠株が出たりする場合があるので注意します。
●畦畔から田植機に苗を載せるのは一苦労ですが、最近、様々な方法で田植機に苗を載せる装置が提案され市販されています。新しく田植機を購入する時は、これらの装置の利用も考慮しましょう。

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田植機に苗を載せる作業

「真っ直ぐ植えよう」 
●「圃場」「苗」「田植機」の準備ができたら移植作業を始めます。
●移植作業の工程は、 
 往復作業を行って最後に枕地を植えるか、
 中央部分の移植を行い最後に周囲を2周程度回るか、
いずれにしても、機械移植後に手で補植をする必要がないようにします。

●移植を始めたら、必ず、植付け深さ、掻取り量、株間などをチェックするようにします。機械の故障でなく、目標通りに植え付けできない場合は、いずれかの設定が正しくありません。
●苗の滑りが悪いと、設定通りの植付け本数にならない場合があります。
●株間が設定より狭くなるのは、耕深が深すぎて車輪のスリップが多いためかも知れません。
●田植機の「設定」は、あくまでも他の条件が通常の範囲にあることを想定して作られていますから、そうでない場合には、「設定」通りにはならないことが多いのです。

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真っ直ぐ植えられた苗

●昔から「稲は畦畔に沿って真っ直ぐ植えてあると美しい」という「たんぼの美学」があります。写真になるような美しい棚田は、畦畔に沿って真っ直ぐに稲が植わっているものです。曲がっていても収量には関係ないのですが、「たんぼの美学」に共感する人には、是非、稲は畦畔に沿って、真っ直ぐ植えることを心がけて貰いたいものです。

田植えの後にすること

「入水、補植、後片付け」 
●機械移植作業が終わったら、苗が乾燥しないよう、不陸の高いところが水に隠れるよう、水田に水を入れます。
●水が多すぎると、苗が水没するので注意します。
●枕地などで苗が植わっていない部分には、補植をしておきます。
●余った苗は、補植に必要な分だけ畦際におき、残りは処分します。
●使い終わった苗箱は、水で洗って干してから数十箱ずつ重ねて結束し、倉庫に収納します。
●田植機は、水洗いをして必要箇所に注油を行い、植付け爪を回転させて異常がないか見ておきます。

「田植えの反省」
●移植作業は、水稲の苗にとっては、暖かくて居心地の良いハウスの中から出されて、根をちぎられて風の吹く寒い水田という環境に移動させられる過酷な体験です。
●苗の善し悪しは、移植後いかに早く苗が活着するかということで明らかになります。 

●そんな気持ちで、自分のたんぼと隣のたんぼを見比べてみましょう。同じ日に田植えをしたのに、隣の水田の苗の葉色が先に濃くなったとしたら、それは育苗方法に問題があるのかもしれません。
●今年の田植えを振り返りながら、来年どうするかを考えるのは、稲作りの醍醐味の一つです。来年の稲作りは、今年の田植えの反省から始まっています。

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乗用田植機による機械移植作業

執筆者
田坂 幸平
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター

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