提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


本年の稲作を振り返る

2008年12月 4日

(2014年5月 一部改訂) 

はじめに

●今年度の稲作が終わりました。反省をまとめて、来年の計画を立てることが重要です。
●始めに、生育、収量、品質などの主な結果について、良かったこと、良くなかったことを大筋でまとめます。
●良かった点はより改善し、良くなかった点はどう改善するかを考え、個別技術にかえって対策を練ります。
●失敗を繰り返さないために、本年度の稲作を以下の視点から振り返り、来年度の対策を考えましょう。
●その際に、稲編の各論を参考にしてください。

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秋深き田園風景の静けさ。冠雪した山は八甲田山 (提供 :九州沖縄農業研究センター坂井真)

チェックポイント

「生育の状況」 
●育苗の状況(苗の徒長や生育状況)は?
●移植時の植え傷みや欠株の発生は?
●分げつ発生の状況および最終的な穂数は?
●倒伏の状況は?
●雑草発生は?
●病害虫発生は?

「収量の状況」 
●地域の作況や平年収量と比較しての増減は?
●穂数確保が十分であったか?
●登熟に問題はなかったか?
●圃場による収量の変動は、例年と比較してどうであったか?

「生産した米の品質」 
●等級は想定通りであったか
●等級低下の場合の落等理由は?
●いかなる障害粒が落等要因か。
●玄米成分は想定通りであったか(玄米タンパク含有率、アミロース含有率)。

「直播でのポイント」 
●出芽・苗立ちは順調だったか。
●問題となる倒伏の発生はなかったか。
●これらに対してとった対策は何か。

「米の自家販売」
●品質、食味は十分だったか。
●生産物は思った価格で売れたか。
●搗精は適当だったか。
●ネット販売の画面が魅力的に構成されていたか。
●店への委託、口コミは功を奏したか。

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収穫した籾の搬入を待つ近代的なライスターミナル (提供 :JA秋田おばこ)

対応策の検討

(1)本田前の事項
「作期・品種選択」 
●移植作業や収穫作業・乾燥機の競合を生じた場合、作期と品種の選定やその比率を再考する。
●想定した収量や品質が得られなかった品種や作期があった場合、気象条件や栽培条件をもとに、その要因を解析する。

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「つや姫」と鳥海山 (提供 :山形県農業生産技術試験場 庄内支場 結城和博)

「土作り」 
●肥効の後期凋落や高温障害が顕著な圃場については、堆肥やケイ酸の施用を増やすことを検討する。
●倒伏を生じた圃場では、堆肥施用の抑制や肥培管理に留意する。
●必要に応じて、土壌診断を依頼して主要成分が基準を達成しているかどうかを確認する。

「本田準備」 
●土壌の不均平が原因となる、雑草発生、直播栽培での出芽率低下などを生じた場合には、レベラーの利用や代かき時の均平に留意する。
●減水深の大きかった圃場では、水口・水尻の確認や、畦畔の漏水対策を万全に行う。

(2)播種・田植
「育苗」 
●苗の徒長や異常があった場合、育苗ハウスの条件や培土の成分を確認する。
●植え傷みを生じた場合には、育苗期後半の追肥、播種量や育苗期間について再検討する。
●病害発生については、使用農薬や育苗条件(低温及び高温の回避)を再確認する。

「田植」 
●移植作業で欠株が多かった場合、箱当りの播種量の検討、種子の質(発芽率)の事前チャックを徹底する。
●疎植栽培を導入により減収、倒伏、を生じた場合、作期、品種、栽植密度の組み合わせを再検討する。
●密植栽培の導入で、後期凋落や減収を生じた場合、密度、肥培管理の組み合わせを再検討する。
●側条施肥により、倒伏や玄米タンパクの増加を生じた場合、肥料の種類(肥効のパターン)や量を検討する。

「直播」 
●出芽率が低下した場合、要因を解析して対応策を準備する。要因としては、気象条件(降雨による落水管理の不徹底)、コーティングの不良、水管理、均平、播種深度、品種選定等が考えられる。
●落水出芽が適切に行えなかった場合、播種後の溝切りや圃場の均平化を検討する。
●移植栽培と比較した資材費が増加した場合、その要因を解析して対応策をたてる。除草剤散布回数の増加やコーティング資材や機材の支出増加などで、削減の可否について検討する。

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「今年の稲作を振り返って」の座談会。秋田県美郷町千畑地区の生産者の皆さん (提供 :JA秋田おばこ)

(3)本田管理
「施肥」 
●玄米タンパク含有率が基準値を超えた場合には、穂肥の減量や追肥のタイミングを再検討する。
●問題となる倒伏を生じた場合、減肥あるいは穂肥時期を遅くすることを検討する。
●幼穗形成期から出穂期の葉色が基準値からずれた場合、基肥や穂肥の量と施肥時期について検討を行う。
●一発肥料を用いて、葉色の推移が適切でなかった場合、供試肥料の緩効性肥料の割合や想定されている生育期間を再確認して、適当な肥効が期待できる肥料の利用を検討する。

「水管理」 
●過剰分げつを生じた場合、中干しの早期開始や深水管理による分げつ抑制のための管理を徹底する。
●穂数の確保が不十分で合った場合、分げつ数の確認による中干し開始時期の決定を心がける。
●登熟期の早期落水による登熟不良を生じたと考えられる場合、水利の確保を検討し、これが困難な場合には作期や品種を再検討する。具体的には、出穂後3~4週間は入水できる条件が必要となる。
●コンバイン収穫時に土壌が軟弱であった場合には、中干しの徹底や間断かんがいによる地耐力の確保を行う。場合によっては、溝切りにより落水の徹底を図る。

(4)雑草・病虫害管理
「雑草管理」 
●除草剤散布のタイミングや防除効果を確認する。適切な防除にもかかわらず残草が多かった場合には、抵抗性雑草の発生を疑い、殺草成分の異なる除草剤を選択する。
●除草剤の薬害は生じた場合、剤の特性や品種を確認し、剤の選択を慎重に行う。特に、直播の表面播種の場合には剤の選択やタイミングは適切であったかを検証する。

「病害虫管理」 
●病虫害が多肥により助長されたと想定される場合、肥培管理を再考する。
●発生予察による適期防除が困難で合った場合、関係機関からの情報収集をスムーズに行えるようにする。
●平年と病害虫発生が異なった場合、その要因は何か。防除剤の変更の必要性を検討する。

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収穫後の日本一の芋煮会 (提供 :山形県農林水産部 農政企画課 流通対策室)

(5)収穫・乾燥・調製
●作業競合による刈り遅れを生じた場合には、作期、品種の再検討、機械装備や作業委託について検討する。
●コンバイン収穫での作業性について、土壌が軟弱で効率が低下した場合、溝切りや水管理について再検討する。
●収穫時の籾水分の低下が不十分であった場合、刈り取り時間や出穂後の積算気温との関係について検討する。
●胴割れ米が多発した場合、刈り遅れが原因であるか、乾燥条件が原因であるかを検証し、対応策を準備する。

(6)貯蔵、精白
●貯蔵中の変質、カビや害虫の発生があった場合、乾燥条件、貯蔵温度・湿度を検討する。
●肌ずれ米、胴割れ米、砕米の多発が確認された場合には、乾燥条件や籾摺り機の設定を調整する。

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店頭に並ぶ全国のブランド米 (沖縄県石垣市内のスーパー)

事後点検事項

「農業資材」 
●育苗シート類、育苗箱などを点検し、育苗資材を洗浄する。
●次年度の作付け品種の種子を手配する。
●残った薬剤などを点検し、在庫の農薬の利用期限を確認する。
●在庫確認と次年度作付け予定をもとに、購入資材の種類・量を決定する。

「農業機械」 
●機械の調整を行い、不具合がある場合には必要に応じて補修する。
●機械の耐用年数を検討し、更新機械の計画を立てる。
●機械の購入しに際しては、利用頻度と減価償却をもとに、経営への効果を試算する。

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コンバインの点検・補修のようす (提供 :九州沖縄農業研究センター田坂幸平)

「施設、圃場、堆肥」 
<施設>
●育苗ハウス、ビニール、機械庫、資材庫、米の貯蔵庫等の点検と必要に応じて補修する。
●畦畔や用水路、潅排水施設の点検、整備する。

<収穫後の圃場管理>
●収穫あとの水田は、秋耕起を行い、稲わらなどをすき込む。
●耕起時に高低差を補正する。必要に応じてレベラーを利用する。

<堆肥の生産>
●堆肥購入の場合、地力や施肥設計に対応した種類(畜種)を決定する。
●春先の堆肥散布の準備及び散布時期を決定する。
●収量や玄米タンパクのデータをもとに、圃場別の堆肥施用量を試算。堆肥の種類により肥効時期や利用率が異なることに留意する。

以上の項目等を振り返り、来年の米作りに活かしてください。

執筆者 
堀末 登 
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 フェロー
吉永 悟志
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター北陸研究センター

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