提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


適期収穫

2008年11月24日

(2014年8月 一部改訂) 

刈り取り適期

「稲刈りの適期の見分け方」 
●稲は出穂・開花後に米粒が大きくなり、出穂後の日平均積算温度が約1000℃で(例えば日平均気温が22℃だと出穂後約45日)成熟期を迎えます。
●米粒は、胚乳の肥大が終わって乾燥して硬くなり、爪で押しても壊れない強度になります。
●籾の黄化率では、90%程度です。
●この頃が、稲の刈り取りの適期とされています。
●成熟期より早く収穫すると、米の光沢は良くなりますが、粒張り不良や青米が増加して、品質が低下します。
●収穫が遅くなりすぎると、胴割れ米、穂発芽米、茶米などが増加して品質が低下します。
●特に、登熟温度が高いと胴割れ米が増加しやすくなるので、刈り遅れないよう注意します。

「委託乾燥の場合」 
●カントリーエレベータ(CE)やライスセンター(RC)では、荷受けする品種と、品種による搬入期間が決まっています。
●米の乾燥を委託する場合には、品種による搬入期間に合わせて収穫するようにします。
●そのためには、周囲の稲に比較して、田植えの日(種まきの日)を極端に早くしたり遅くしたりしないよう注意します。
●また、CEやRCが受け入れる品種(県や地域により決まっている)以外の品種を作りたい場合には、CEやRCに頼らない乾燥方法を考える必要があります。


佐賀県上峰町のカントリーエレベータと収穫期を迎えた小麦の様子
(提供 :九州沖縄農業研究センター)


「自家乾燥の場合」 
●手持ちの穀類乾燥機で乾燥を行う場合、同じ品種ばかり作付けすると、刈り取りの適期が短くなります。作期の異なるいくつかの品種を組み合わせて作付けするといいでしょう。
●同じ品種の場合は、移植と直播を組み合わせることで、刈り取り適期をずらして効率的な収穫ができるようになります。

コンバインの利用

「コンバインとは」 
●稲の収穫作業には、一般に「自脱コンバイン」といわれる機械が使われます。
●コンバインとは、「刈取機と脱穀機が一つになった機械」という意味です。
●バインダによる収穫作業(後述)では、収穫→天日乾燥→脱穀という流れがありますが、コンバインでは収穫と脱穀作業が同時に行われるため、その後に米を乾燥させる必要があります。
●乾燥には、一般的に穀類乾燥機を用いるので、コンバインと穀類乾燥機はセットで導入する必要があります。
●近隣にCEやRCがある場合には、乾燥作業を委託することができます。

●自脱コンバインは、稲と麦の両方を収穫することができます。
●ただし、作目を切り替える場合には、こぎ胴の回転数などを作目に合わせて変えるなどの調整が必要です。
●この他に、種子収穫用の自脱コンバインとして「種子用コンバイン」があり、掃除の際に機械の中に種子が残留しにくい構造となっています。

●コンバインには、「自脱コンバイン」以外に「普通コンバイン」と「汎用コンバイン」と言われる収穫機があります。
●自脱コンバインでは穂先部分のみ脱穀部に入るのに対し、「普通コンバイン」と「汎用コンバイン」では、藁も穀粒も全部脱穀部に入る点が主な相違点です。
●普通コンバインでは、こぎ胴が作物の流れに対して直角に置かれているのに対し、汎用コンバインでは、こぎ胴が作物の流れに対して平行に設置されている点が異なります。
●最近、食味センサ、収量センサ等が付いたコンバインが市販化されています。
●圃場ごとの食味・収量データやコンバインの稼働情報を利用して、栽培や経営の改善を図ることが期待されます。


 :倒伏した稲を「追い刈り」するコンバインの作業風景 /
 :大豆の刈り取りを行う汎用コンバイン (提供 :2枚ともに九州沖縄農業研究センター)


「収穫前の落水」
●コンバインが圃場で収穫作業をするためには、ある程度の土の硬さが必要です。
●土が柔らか過ぎると、コンバインのクローラが土の中に埋まり、極端な場合、圃場の中で動けなくなります。
●また、クローラの左右の土が盛り上がり、隣の稲株を押し倒すこともあります。
●土を硬くするためには、落水により土を乾燥させる必要がありますが、落水が早すぎると登熟不良となり、収量・品質が低下する場合があります。
●このため、夏場に適度な中干しを行って収穫期までに土をある程度硬くしておき、収穫前の落水はなるべく遅くするのが、収量・品質を落とさずに収穫する方法です。
●また、乾きの良くない圃場では、収穫前の落水をスムーズにするため、中干し後に溝切り作業を行うことも重要です。

「コンバインの準備」 
●コンバインは、1年に1~2回しか使わない機械です。 
●倉庫から出したら、必要箇所に注油を行いましょう。
●特に、コンバインの前部で稲わらの根本部分を切断するバリカン状の刃(往復動刃)は、切れ味が悪いと収穫作業に支障が出ます。切れなくなったら刃全体を交換する必要があります。
●コンバインの後部にある「排わらカッタ」の切れ味に注意します。
●圃場に散布するために、わらを適当な長さに切断しますが、切れ味が悪くなると藁が詰まったりして収穫作業に支障が出てしまいます。
●藁を結束する場合には、結束用の紐を準備します。
●グレインタンクが付いていないコンバインでは、穀粒を入れるコンバイン袋を準備します。

「刈り高さとこぎ深さ」 
●自脱コンバインには、調節部分が数カ所あります。
●刈り取る高さを制御する「刈り高さ制御」は、自動にすると地面より10cm程度上で刈り取りを行います。
●「こぎ深さ」とは、脱穀部(こぎ胴)に入る藁の長さのことです。「こぎ深さ」が深いと、稲穂がこぎ胴の奥に入りすぎて、コンバインの所要動力が増加したり穀粒中の夾雑物(ゴミ)が増加したりします。
●逆に「こぎ深さ」が浅すぎると、こぎ残しによる穀粒損失(ロス)が増加します。
●「こぎ深さ」も一般的に自動制御できます。
●自動制御しない場合、稲の草丈が長いと「深く」なり、短いと「浅く」なること、刈り高さが高いと「浅く」なり低いと「深く」なることを知っておく必要があります。
●稲が倒伏している場合、稲が倒伏している方向に刈り取りを行うことを「追い刈り」、その反対方向に刈ることを「向かい刈り」と言います。
●自脱コンバインのヘッドには、倒伏した稲を直立させる「引き起こし爪」が付いていますが、どちらかと言えば「向かい刈り」より「追い刈り」が得意な機構です。

「コンバイン収穫作業の実際」 
●コンバインによる稲の収穫作業は、夜露で濡れた稲の葉が乾いてから始めます。
●稲の茎や葉が濡れていると、コンバインのこぎ胴の受け網が濡れた茎葉で詰まり、選別性能が悪化してロスが増加するからです。
●収穫作業は、基本的に、一番外側から左回りに刈り取りをします
●最初に、植付条に沿って長辺方向に刈り取りを行い、枕地に到達したら2、3回切り返しを行って枕地の刈り取りをします。
●枕地を刈り取ったら、また、一番外側の植付条に沿って長辺方向の刈り取りを行います。
●圃場が大きい場合は、この方法では枕地の走行距離が増えるので、適当な位置に中割作業を行い、圃場を2つか3つに分けて作業を行います。
●グレインタンク付きのコンバインでは、穀粒をコンバインから乾燥機へ運ぶ運搬車とコンテナとオペレータが必要です。
●穀粒を入れるコンテナには、布製のフレキシブルコンテナと鉄製のコンテナがあり、場合によって使い分けをします。
●グレインタンクが穀粒で一杯になったら、穀粒をコンテナに移します。
●コンバイン袋を利用するコンバインでは、コンバイン袋をトラックに積むのに便利なように、道路の近くにコンバイン袋を置きながら収穫作業を行います。
●収穫作業が終了したコンバインは、藁等のゴミなどを取り除き、掃除口を開けて穀粒を機械の内部からできるだけ取り除くようにします。
●穀粒が残っていると、ネズミの餌となるばかりでなく、侵入したネズミに電線などを囓られて故障の原因となるので注意します。
●必要箇所には注油をして倉庫に格納しましょう。

バインダの準備

「バインダの準備」 
●バインダは、稲を刈り取って紐で株元を一定の大きさ(太さ)に結ぶ機械です。
●一般的に、歩行型の1~3条刈りの機械の利用が多いようです。
●注油や刃の摩耗については、自脱コンバインと同じように注意します。
●バインダによる収穫作業後には、稲を天日乾燥する「はざかけ」を行います。
●このためには、稲束が紐でしっかり結束されている必要があり、強度の弱くなった紐や古い紐を使うと結束作業がうまくいかないので注意します。

「バインダ収穫作業の実際」 
●バインダによる稲の収穫適期は、コンバインより4~5日程度前が良いとされています。
●これは、コンバインによって収穫された米が収穫直後に機械乾燥されるのに対し、バインダによって刈り取りとられた米は、4~5日かけて自然乾燥されるからです。この間に茎葉から胚乳に養分が移動して米が太るとも言われます。
●バインダの結束部に紐を通し、エンジンをかけたら、左回りで2~3周刈り取ります。次に枕地をもう少し刈り取って広げ、枕地での旋回時間が短くなるように中割作業を行い、最後に長辺方向に沿って刈りながら回り刈りを行います。


 :バインダ(クボタ電農スクエアより)
 :バインダにより収穫された稲の「はざかけ」風景 (提供 :近畿中国四国農業研究センター)


●刈り取りが終わったら、「はざかけ」を行います。
●最初に稲束を吊す木や竹の棒を組み立て、それから稲束を棒にかけ、場合によっては雨除けのために一番上をビニルシートなどで覆います。
●「はざかけ」は、地方によって呼び名や木組みの方法が異なります。

執筆者 
田坂 幸平
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター

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