提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


稲の虫害防除

2008年10月24日

(2014年4月一部改訂) 

水稲の主要害虫と防除

「主要害虫」 
●西南暖地で最も注意が必要な害虫は、中国から飛んでくるウンカ類やコブノメイガなどの飛来性害虫、斑点米の原因となるカメムシ類です。
●西南暖地では、そのほかに近年、フタオビコヤガが局地的に激発することがあります。
●東日本では、斑点米カメムシ類が重要害虫です。
●東日本では、そのほかにイネミズゾウムシ、ツマグロヨコバイ、イネドロオイムシが局地的に大発生することがあります。
●西南暖地の湛水直播栽培では、スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)が猛威をふるいます。 

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 :ウンカ類(セジロウンカ(左)とトビイロウンカ(右))/
 :コブノメイガ(成虫(左)と幼虫(右))


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 :フタオビコヤガ成虫(提供 行徳裕) /  :産卵中のスクミリンゴガイ

「箱施薬による初期害虫の防除」 
●省力・省農薬で、比較的殺虫効果が長持ちする長期残効性殺虫剤の箱施薬が普及しています。
●何を防除対象とするかを考えて、箱施薬の種類を選びます。
●市販農薬には混合剤が多いので、何が含まれているかを確認します。
●箱に施用された浸透性殺虫剤は、イネに移行し効力を発揮します。田植え後も、株周辺にある粒剤から農薬が浸透します。

「代表的な箱施薬剤」 
●ウンカ類の代表的な箱施薬剤は、イミダクロプリド(=成分名。商品名はアドマイヤー、以下同じ)粒剤、フィプロニル(プリンス)粒剤、ピメトロジン(チェス)粒剤です。
●そのほかに、ジノテフラン(スタークル)粒剤などがあります。
●コブノメイガに対する代表的な箱施薬剤は、クロラントラニリプロール(フェルテラ)粒剤、フィプロニル(プリンス)粒剤、スピノサド(スピノエース)粒剤などです。
●イネミズゾウムシや、イネドロオイムシに対する箱施薬剤には、ベンフラカルブ(オンコル)粒剤、カルボスルファン(ガゼット)粒剤、クロチアニジン(ダントツ)粒剤などがあります。

「栽培後期の虫害防除」 
●箱施薬をしても栽培後期に再発生する害虫や、栽培後期に新たに発生する害虫には、しばしば薬剤で本田防除を行います。
●近年は、ラジコンヘリによる薬剤散布が普及してきました。
●ラジコンヘリで農薬散布するときは、安定的な効果、危険防止、ドリフト低減のため、風速3m以下等の運行基準を守っておこないましょう。
●ドリフト(周辺への飛散防止)対策から、粒剤も使われるようになりました。
●全ての農薬に決められている、散布可能な収穫前日数を必ず守りましょう。

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ラジコンヘリによる農薬散布

「栽培後期のウンカ類・コブノメイガの防除」 
●ウンカ類の防除では、できるだけ卵のない時期を選びます。地域の病害虫防除所等で発表される防除適期を参考にしましょう。
●コブノメイガは幼虫が小さい時に防除します。地域の病害虫防除所等で発表される防除適期を参考にしましょう。
●ウンカ類の本田防除剤は多数ありますが、そのうちブプロフェジン(アプロード)は比較的防除時期を選ばす、天敵にもマイルドです。
●コブノメイガの本田防除剤は多数ありますが、そのうちIGR剤(昆虫成長制御剤:テブフェノジド(ロムダン)など)は効果も安定し、比較的、天敵にもマイルドです。

「斑点米カメムシ類の薬剤防除」 
●斑点米の原因となるカメムシは、大別して、大型カメムシ類と、比較的小型のカスミカメ類に分かれます。
●大型カメムシ類では、クモヘリカメムシ、ホソハリカメムシ、ミナミアオカメムシなどが重要です。
●カスミカメ類では、アカヒゲホソミドリカスミカメやアカスジカスミカメなどが重要です。
●東日本はカスミカメ類が加害の主体で、西南暖地は大型カメムシ類が主体になります。
●防除の適期は、穂揃い期と、その7~10日後の2回です。
●発生が少ない時は、乳熟期から糊熟期にかけての1回散布、発生が多い時には、3回目の防除が必要です。
●粒剤はカスミカメ類には有効ですが、大型のカメムシ類には効果が劣ります。

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 :クモヘリカメムシ (提供 竹内博昭) /  :ホソハリカメムシ (提供 竹内博昭)  

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 :アカヒゲホソミドリカスミカメ (提供 樋口博也) /  :アカスジカスミカメ (提供 石本万寿広) 

農薬が効かないウンカが飛んでくる

「海外から飛来するウンカ類」 
●長期残効性箱施薬剤が普及してから、ウンカ類(特に坪枯れを起こすトビイロウンカ)の被害は激減していましたが、近年、リベンジが始まりました。
●その最大の原因は、ウンカが「農薬に強くなった」ためです。
●トビイロウンカやセジロウンカは日本では越冬できず、毎年、梅雨期に前線周辺の強い南西風に乗って中国から飛んできます。
●ウンカ類の飛来源である、中国南部やベトナム北部で大量に農薬を使い始めたため、ウンカが農薬に抵抗性を発達させました。
●移植後、セジロウンカ(夏ウンカ)が大量発生すると、イネの分げつが抑制されてしまい、収量減になることがあります。
●その後、稲の生育ステージが進むと、セジロウンカは水田から移出するので、普通は坪枯れを起こすことはありません。
●トビイロウンカ(秋ウンカ)は、飛来密度がセジロウンカに比べ非常に低い反面、徐々に個体数を増加させて、条件がよいと秋には坪枯れを起こします。
●近年、西南暖地では、ヒメトビウンカが媒介するイネ縞葉枯病が、局地的に多発しています。
●農薬に抵抗性を持ったヒメトビウンカが、中国から多飛来する可能性が指摘されています。

「ウンカ類の薬剤防除対策」 
●2013年現在(以下同じ)、トビイロウンカはイミダクロプリド(アドマイヤー)に抵抗性があります(効かない)が、フィプロニルはよく効きます。
●トビイロウンカがより重要な地域では、箱施薬としてフィプロニルなどを含有した農薬を選びます。
●現在のところ、セジロウンカはフィプロニル(プリンス)に高い抵抗性があります(効かない)が、イミダクロプリドはよく効きます。
●セジロウンカがより重要な地域では、イミダクロプリドなどを含有した農薬を選びます。
●両ウンカとも重要な地域では、箱施薬剤として、ピメトロジン(チェス)またはイミダクロプリド(アドマイヤー)とフィプロニル(プリンス)両方を含有した農薬を、選択します。
●ヒメトビウンカの農薬抵抗性は、地域によって異なり、特に九州地域では抵抗性の発達が進んでいます。
●九州北部などでヒメトビウンカが多発生する場合にはピメトロジン(チェス)剤が効果的です。

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坪枯れ

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九州におけるトビイロウンカの発生パターン模式図(第1世代、第2世代には短翅型が多く出現して増殖を繰り返す) 

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日本に飛来したトビイロウンカ(左)とセジロウンカ(右)の主な殺虫剤に対するLD50値(半数の虫が死ぬ薬量)の長期的推移。 数値が大きいほど抵抗性が発達。トビイロウンカはイミダクロプリドとチアメトキサムに対して、セジロウンカはフィプロニルに対して、近年抵抗性を発達させている。

飼料用イネや新規需要米品種でのウンカの多発生

●飼料用イネ品種や新規需要米品種の一部でセジロウンカが急激に増殖して、トビイロウンカの坪枯れと同じような被害を起こすこともあります。
●飼料用イネや新規需要米品種には、インディカ種とジャポニカ種の交配によって育成されたものがあり、そのような品種ではセジロウンカが増殖しやすい傾向にあります。
●セジロウンカは、これまでウイルス病の媒介(植物に病気を移すこと)は知られていませんでしたが、近年、新種のウイルス病(写真)を移すことがわかりました。
●日本では2010年にウイルスを持ったセジロウンカが飛来してウイルス病が発生しました。
●このウイルス病も、飼料用イネや新規需要米品種で多発生しやすいため、セジロウンカが多発生した場合には注意が必要です。

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セジロウンカが媒介するイネ南方黒すじ萎縮病の症状(左の株:激しく萎縮して減収する)

直播きに必要な防除

●湛水直播では、出芽直後の幼苗を激しく加害するスクミリンゴガイが要警戒生物になります。
●また、箱施薬を行えないので、ウンカ類の初期防除は、農薬の種子コーティングなどで行います。

「スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)の防除」 
●できるなら、乾田直播を行います。播種後、幼苗期が乾田状態であれば、スクミリンゴガイの被害は出ません。
●田畑輪換を活用します。前年の夏作に畑作物(大豆など)を植えた圃場は、スクミリンゴガイの密度が低下するので、翌年、水稲湛水直播でも、被害が出ません。
●播種後は、できるだけ長く、少なくとも10日~2週間は、圃場から落水します。
●落水期間後、圃場を湛水する時に、稲が3葉期以前の場合はスクミリンゴガイ防除剤(メタアルデヒド粒剤、カルタップ粒剤など)などを散布します。
●落水期間中に、雨が降って広く水たまりができる可能性が高い場合は、播種後、メタアルデヒド(スクミノン)粒剤を、前もって散布しておきます。
●水たまりができる可能性が低い場合や、広範に広がらないと思われる場合は、水たまりができたらすぐに(できるだけ24時間以内)、水たまりの部分にだけ、メタアルデヒド粒剤をスポット散布します。
●水稲播種前に石灰窒素を散布して、スクミリンゴガイの密度を著しく低下させ、その後、湛水直播を行う方法もあります。
●石灰窒素はイネにも害があるので、石灰窒素散布は、水稲播種の1週間~10日前に行います。

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 :田畑輪換を活用してスクミリンゴガイの被害を防ぐ/
 :毒餌として作用するメタアルデヒド粒剤 


「ウンカ類の防除」 
●生育初期の防除は、通常の粒剤散布により行います。
●イミダクロプリド(アドマイヤー)では、水和剤を種子にコーティングして、生育初期のウンカ類を防除することができます。
●同時にカルパーコーティングを行う場合は、カルパーの間にイミダクロプリドをサンドイッチ状にコーティングします。

執筆者 
和田 節
(独)農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センター専門員
松村正哉
(独)農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センター上席研究員

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