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稲編【20】農薬を削減する病害防除法

2008年09月12日

農薬を削減する病害防除法の考え方

●水稲の有機栽培、減農薬栽培のために、農薬を使わないか削減する、病虫害防除法が考えてられていますが、これらの栽培法は、病虫害の発生の少ないところで行うのが原則です
●民間などでは様々な方法が取り組まれていますが、病虫害の発生は環境条件に左右されるため、効果が確認できない、または、効果が極めて低い場合もあります。
●以下では、これまでの試験研究で、効果が確認されたものについて記します。

「農薬を削減する病害防除法」 
●化学合成農薬を削減する水稲の病害防除法として、下記のような物理的、耕種的および生物的方法などがあります。
●病害の発生は気象条件の影響を受けますが、気象条件の影響が少ない種子消毒を中心に、化学合成農薬を使わない方法が実用化されています。

物理的方法

「温湯消毒」 
温湯消毒(提供 岩手県農業研究センター 佐々木直子氏)
●浸種・催芽前の乾燥した種子を温湯浸漬(60℃10分間など)し、すぐに水で冷やします。
●種子伝染性病害虫(いもち病、ばか苗病、苗立枯細菌病、もみ枯細菌病、心枯線虫病) に防除効果があります。
●浸漬温度が低い場合、浸漬時間が短い場合は、十分な防除効果が得られません。
●温湯消毒を行う種子は、必ず病害の発生していない圃場から採種します。
●発芽障害を起こすため、温湯消毒は種子を塩水選した後、水洗いして、十分乾燥させてから行うことが重要です。
●病害虫による汚染程度が高い種子を使うと、十分な防除効果を得ることができません。
●モチ米品種などは、上記の温度と浸漬時間では、発芽障害を生じることがあるので、浸漬時間を短くする必要があります。
●貯蔵状態の悪い種子も、発芽障害を起こすことが多いので、温湯消毒は行わないようにします。
●温湯消毒後の種子は、すぐに十分乾燥し、低温(15℃以下)、乾燥状態に置けば、2~3カ月間保存することもできます。
写真 :温湯消毒(提供 岩手県農業研究センター 佐々木直子氏)

「送風」 
●大型の送風機を用い、いもち病の初発生期から収穫期まで、水田に送風(毎日午後10時と午前4時に約30分、風速約4m/s)すると、いもち病の発生を抑制することが、岐阜県で実証されています。

耕種的方法

「ケイ酸資材の施用」 
●ケイ酸資材の施用は、作物の病害抵抗性を高め、病害の発生を抑制することが知られています。
●ケイ酸資材の育苗箱施用は、苗いもちの発生を抑制します。
●本田の初期に、ニカメイガとイネミズゾウムシの発生も抑制したとの報告もあります。
●ケイ酸資材の本田施用も、いもち病と紋枯病の発生を抑制します。
●ただし、アルカリ性のケイ酸資材は、土壌中の有機窒素を無機化するので、発生する窒素により、いもち病の発生が多くなる場合もあるので、注意します。

「抵抗性品種の利用」 
いもち病に対するイネ品種の真性抵抗性 (左:抵抗性品種、右:罹病性品種) ●イネ品種のいもち病抵抗性は、病原菌のレース(系統)によって抵抗性が変わる質的な「真性抵抗性」と、一般的にそうでない量的な「圃場抵抗性」に分かれます。
●真性抵抗性はこれを侵害するいもち病菌のレースが増えるため、抵抗性が数年で無効になることが知られています。
●真性抵抗性だけが異なり、その他の形質が親品種と同じ数種の同質遺伝子遺伝子系統を混植した多系品種(マルチライン)は、この真性抵抗性を単独で用いる場合より、長く維持できます。
●マルチラインは、宮城県で「ササニシキBL」、新潟県と富山県で「コシヒカリBL」として栽培されています。
●いもち病に対して圃場抵抗性が強く、食味の良い品種や、縞葉枯病に抵抗性、あるいは、いもち病、縞葉枯病の両方に抵抗性の品種等も、育成されています。
●以上のような品種の作付けは、それぞれの病害の発生抑制に効果があります。
写真 :いもち病に対するイネ品種の真性抵抗性 (左:抵抗性品種、右:罹病性品種)

「伝染源の除去」 
●伝染源の除去と、葉いもちの防除を徹底することで、穂いもちの防除を省略する体系が秋田県の一部で行われています。

「発生予察等による防除回数の低減」 
●いもち病の発生予測モデル、気象条件、伝染源量の把握などを活用すると、いもち病の薬剤散布回数を減らせることが、圃場試験から示されています。

生物的方法

「微生物農薬による種子消毒」 
●種子伝染性病害に効果のある6種の微生物農薬が、イネの種子消毒用に登録されています(2008年9月現在)。
●微生物農薬は、有効期間が短く、保存方法も化学合成農薬と異なるので、注意が必要です。
●本農薬による種子消毒は、化学合成農薬より防除効果が劣ることが多いため、温湯消毒同様、病害の発生していない圃場から採種した種子を選び、塩水選してから使います。
●育苗期に、微生物農薬による種子消毒と、他の化学合成農薬を併用する場合は、化学合成農薬の種類によって、微生物農薬の防除効果が落ちることがあります。 

表 水稲の種子伝染性病害に適用のある微生物農薬 水稲の種子伝染性病害に適用のある微生物農薬

その他の方法

●催芽時の食酢の浸漬処理は、種子伝染性の細菌病である褐条病、苗立枯細菌病に対して、防除効果があることがわかっています。
●水稲種子の酸性電解水(pH2.2、有効塩素濃度80ppm)による、密封容器内での温湯浸漬処理(40℃、24時間)は、種子伝染性のいもち病、ばか苗病、苗立枯細菌病および褐条病の防除に有効であった試験例があります。

執筆者 
 小泉 信三
 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター 上席研究員
(文中の画像をクリックすると大きく表示されます)
 
◆稲編
【1】 栽培型の選定 
【2】 品種の選定
【3】 育苗法のいろいろ
【4】 苗作りの実際―箱育苗について 
【5】 本田の準備 
【6】 機械移植栽培 
【7】 機械移植作業の実際 
【8】 直播による水稲栽培 
【9】 水稲直播栽培の実際 
【10】水田除草剤と雑草防除 
【11】難防除雑草対策 
【13】稲作における水管理  
【14】良食味米の栽培法  
【15】稲の病害防除  
【16】稲の虫害防除 
【17】適期収穫 
【18】乾燥・調製 
【19】農薬に頼らない雑草防除法 
【21】農薬を削減する虫害防除法 
【22】米の貯蔵 

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