良食味米の栽培法
2008年06月18日
米の食味
●ここで言う食味とは、炊飯米での食味を指します。
●日本では、一般に光沢と粘りがあって、冷えても硬くならず、ほどよい味と甘み、香りがあるご飯が好まれています。
●米の成分のデンプンやタンパク質、無機成分、脂質、ビタミンなどのうち、炊飯米の食味に何が関係しているかが、長い間研究されてきました。
●これまでに、デンプンの中のアミロース含量が低く、タンパク質含量が低いと食味が良いということがわかっています。
●現在では、各種の食味評価装置が開発され、玄米、精米の成分、炊飯米の性質などによって、食味がほぼ推定できるようになっています。
写真 :食味評価装置を用いた食味測定のようす
ここでの評価材料としては、玄米、精米、炊飯米を使用するものなどがあります。写真中の2つの機械は炊飯米用の機器。提供 食品総合研究所
食味と品種、産地、栽培法
●米の食味に一番影響するのは品種です。続いて、産地(気象、土壌)と栽培法、収穫時期や乾燥法の違いなどです。
●品種では、現在、コシヒカリ系の良食味品種の栽培が全国に広がっています。
●ほとんどの品種の食味は、ほぼコシヒカリ並になっており、食味に関する品種の差はかなり小さくなったといえます。
図 :コシヒカリ系良食味品種の流れ
図の右側の品種たちは、コシヒカリの子孫の大物良食味品種とそれを親として育成され、現在、県で作付3位までにある品種です。
●一方、生産地の環境と栽培条件によって、米粒の成長・発達およびデンプン、タンパク質などの蓄積が変化して食味に影響します。
●今後の良食味米の栽培法では、産地と品種を定めた場合、特に土壌、用水、施肥などの管理が一層重要になってきます。
産地の気象
●登熟期の気温によって、米粒の中のデンプン成分が変わります。そのうち、アミロース含量は、低温だと高くなり、食味を下げてしまいます。出穂後30日間の平均気温が23~25℃で、食味が良くなると言われます。
●一方、低アミロース品種は、高温による玄米の濁りの程度との関係もあって、品種によって適温に違いがあります。一般に、非低アミロース品種よりやや低めが適温となり、23℃以下でも食味の評価が高いようです。
●登熟期間の日照が多く、気温の昼夜較差(日較差と言う)が大きいと、米粒の充実が良く、デンプンが十分に蓄積して良食味となります。
●充実が不良だと、相対的にタンパク質含量が高くなり、食味が下がります。
●これが、豊作年の米が冷害年や日照不足の年の米に比べて美味しい、主な理由です。
●日照が多く、気温の日較差が大きいと、夜間の呼吸が抑えられて米粒が充実し、一般に収量が多くなります。
●これが、日較差が大きい盆地や中山間地にある多収地帯で、美味しい米が作られやすい理由です。
写真 :秋田県仙北平野の多収地帯の稲
仙北平野は日本で有数の米どころ横手盆地の中に位置します。品種はあきたこまち。(提供 秋田県農業試験場作物部)
●良食味米の生産には、登熟に適した温度域で、日照が良い時期に出穂・登熟する良食味品種を選び、適切な栽培管理をしましょう。
土壌と水の管理
●水田の土壌の種類・土質によって、良食味米栽培のための施肥法、水管理や中干しのしかた、排水対策、土作りの必要性などが違ってきます。
●米は地力で穫ると言われます。地力が高いと稲は健康に育ち、収量が高くなります。
●地力は、食味にも良い影響をもたらします。
●地力の低い水田では、土壌改良、堆肥施用などをおこなって、地力を高めましょう。
●望ましい稲の生育のためには、生育段階に応じて適切に水管理をします。
●適切な透水性は根を健全に育て、登熟を良くし、食味に良い影響を及ぼします。
●なお、早期落水や倒伏などで登熟が不良になると、食味が下がるので注意します。
●土壌と用水の管理では、地力の向上を図り、適正に水管理をすることが、良食味米栽培法の基本となります。
●こだわり米生産のためには、堆肥施用による土作りが不可欠です。
※地力とは、土の持つ作物生産能力をいいます。
写真 :石垣市にある民間の堆肥センター
石垣市では農業の生産額の約60%が畜産です。最近は需要が拡大し、市の施設を新設中です。
施肥管理
●稲が健全に育ち、登熟するのに必要な栄養成分には、窒素(N)、リン酸(P2O5)、カリ(K2O)のほか、マグネシウム(Mg)やカルシウム(Ca)、ケイ素(Si)などの無機成分が必要です。
●特に、登熟には、窒素とカリが重要です。
●施肥では、稲の生育に必要な栄養成分を適正に与えます。
●生育後期の窒素追肥が多すぎると、米が高タンパクとなり、食味を低下させやすいので、注意します。
●「良食味米を作る」として、後期窒素を制限して、タンパク含量を下げる栽培法がありますが、地力が低いとデンプンの蓄積が進まなくなり、美味しい米の生産ができません。さらに、収量が激減し、高温に遭った場合の品質低下にもつながります。
●窒素の肥効を抑えながら、登熟歩合の向上、収量の確保と、米粒の低タンパク化を図ることが、良食味米生産の基本です。
●ここでも地力向上が必須の条件です。
食味は収穫時期、乾燥法でも変わる
●生産の最後の段階である、収穫や収穫後の乾燥・調製を正しくおこなうことも、良食味につながります。
●収穫では、適切な刈取り期の判定が大切です(【17】収穫と調製 で後述)。
●乾燥機による乾燥では、送風温度の設定などを、正しい手順を踏んでおこないます(【18】稲もみの乾燥 で後述)。
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写真 :JA八重山郡ライスセンター(石垣市)
八重山地方は沖縄県の約7割の米を生産しています。
●収穫から乾燥の段階で、過熟米、変質米(ヤケ米ほか)、過乾燥米、高水分米などが生じると、胴割れ米、肌ずれ米、砕米、着色米などの原因にもなり、食味も下がってしまいます。
こだわりの良食味米生産
●最近は、良食味米生産のための各種農法や、収穫後の処理にこだわった米生産が盛んになってきました。
●基本は、やはり良食味の銘柄品種や、新品種の利用です。
●農法では、堆肥の施用、土づくり、有機栽培、無機分や有機資材の施用、微生物や独自肥料の利用、アイガモや鯉農法、レンゲやハーブ等の利用、棚田、名水の利用等があります。
●これらと無・減農薬、無・減化学肥料などの栽培法が結びついている場合が多いようです。
●収穫後の処理では、自然乾燥法、独自の精米法、包装・貯蔵法等、その他では、品種鑑定、栽培履歴(肥料や農薬の施用回数・時期等)の明記等があります。
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写真 :天日乾燥を利用した棚田米の生産(福岡県星野村)
星野村は星野川上流沿いの盆地にあり、八女茶の産地でも有名です。
良食味米の未来
●最近はコシヒカリ系品種が多く、ササニシキ系、旭系品種などの特徴ある良食味性をもつ品種は少なくなりました。
●本来、人の米に対する好みは嗜好、年齢や性別などによっても異なり、調理用途によっても大きく違います。
●最近は米飯の粘りの多様化を基本に、食の多様化、加工適性の拡大を図るため、アミロース含量が少しずつ異なる品種、さらには、冷凍寿司、ピラフ、カレー、にぎり寿司などの調理用途別品種が開発されています。
●低アミロース米やピラフ、カレー用途米などの普及、販売の広がりはその表れです。
●将来は、従来の一般米の食味向上技術のほか、調理用途や加工用途別の品種の良食味米栽培法が考えられるべきでしょう。
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写真 左:人気の高いミルキークイーン(提供 大阪市鈴木米穀店) / 右:ピラフに加工された大地の星(提供 北海道上川農業試験場)
ミルキークイーンは良食味米、大地の星はピラフ米として売り出されています。
堀末 登
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 フェロー
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