提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


収量・品質を決める施肥

2008年6月11日

(2014年3月 一部改訂) 

肥培管理の基本~良食味米生産のために

「基肥」 
●基肥は、決められた適量を施肥します。 
●多肥は倒伏を起こし、食味が悪くなります。
●大豆跡地では、地力の高い圃場を除いて、基肥窒素量を20~30%減らします。
●地力が高い場合やコシヒカリなどの倒れやすい品種では、基肥窒素量を50%程度減らします。
●新潟県の「コシヒカリ」や福岡県の「ヒノヒカリ」では、玄米タンパク質含有量が6.6%を超えないような施肥設計にします。

「施肥」 
●穂肥は、水稲の生育量に応じて、目標玄米タンパク質含有量を達成するように適正量を施します。
●新潟県の重粘土壌での「コシヒカリ」栽培で、目標玄米タンパク質含有量6.3%の場合、出穂18日前と10日前に、合計2~3kg/10a程度を、分けて施します。
●福岡県の「ヒノヒカリ」では、出穂20~18日前に、2~2.5kg/10aを1回だけ施用します。

表1 施肥基準(参考) 2014ine9_hyo00.jpg

「出穂後の注意点」
●玄米タンパク質含有量が上がる原因には、水不足、適期外収穫、穂揃期以降の追肥(実肥)があります。
●出穂後25日以降に落水します。また、水不足は、乳白米の原因にもなります。 
●早刈りや刈り遅れせず、適期収穫を心がけます。
●穂揃期以降の追肥は避けます。

肥効調節型肥料による全量基肥施肥

「全量基肥施肥法」 
●緩効性肥料、とりわけ窒素の溶出を正確に調節できる被覆肥料などが開発され、水稲の全量基肥施肥が可能になりました。
●追肥の省力化や追肥作業のむずかしい大区画圃場などの施肥法として、注目されています。
●中間追肥や穂肥を省略し、基肥時に1回の施肥で生育期間の全肥料をまかないます。
●夏の暑い時期の追肥作業が不要になります。
●その土地の気象条件、土壌、水稲品種、作型などに合わせて、慣行施肥量の10~20%減肥して施します。
●他の施肥法に比べて肥料代は高めです。

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 肥効調節型肥料

「肥効調節型肥料」 
●肥効調節型肥料には、リニア型とシグモイド型の2つのタイプがあります。
●リニア型は、施用直後から肥料が溶出するタイプ(LP30~LP140など)です。
●シグモイド型は、施用後しばらくは溶出せず、一定期間後に溶出するタイプ(LPS60~LPS120など)です。
●肥効調節型肥料の基本の窒素肥料は、被覆尿素です。
●速効性の窒素やリン酸・カリは、あらかじめ配合されています。

「被覆尿素の選び方」 
●全量基肥で用いる被覆尿素は、主に気象条件の違いによって選びます。
●東北地域では、70~100日溶出のリニア型が一般的です。
●関東地域では、100日溶出のシグモイド型が一般的です。
●北陸及び関東以南では、100日溶出のシグモイド型を基本に、30~140日溶出タイプのリニア型が使われる傾向にあります。
●最近の地球温暖化によって、夏季の高温化傾向で溶出が早くなっています。
●適切な溶出タイプの新たな被覆尿素を選ぶことが、今後の課題となっています。

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図1 被覆尿素の溶出の一例 
   (リニア型溶出のLP50とシグモイド型溶出のLPSS100)


「配合割合」 
●被覆尿素肥料の配合割合は、全国的には40~90%程度です。
●実際には、それぞれの地域の農業試験場などの試験結果等を参考に決めるとよいでしょう。

「減肥率」 
●被覆尿素を用いた全量基肥施肥法では、窒素利用率が高いため、試験場レベルでは慣行に比べて、20~30%減肥することができます。
●むしろ減肥しないと、窒素過多となって倒伏や食味の低下につながりますので、注意します。

「収量及び収量構成要素」 
●被覆尿素を用いた全量基肥施肥法の水稲収量指数は、ほぼ100です。
●減肥しても、慣行と収量はほとんど変わりません。
●窒素が持続的に供給されるので、有効茎歩合が高まり、穂数や籾数は慣行区よりやや増加するものの、登熟歩合や千粒重はやや低下する傾向があります。

表2 直播水稲の収量、収量構成要素及び窒素吸収量等(2002~2003年の平均)
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注)
1)福岡県筑後市の九州沖縄農業研究センターでの水稲品種「ヒノヒカリ」を用いた試験結果
2)玄米重、千粒重、玄米タンパク質含有量は水分15%換算
3)慣行7kgは基肥3kg、中間追肥2kg、穂肥2kg、被覆尿素はLP50:LPSS100=1:2を7kg、5kg/10a施用


「注意点」 
●幼穂形成期から出穂期にかけて葉色が薄くなりやすいのは、後優り的な生育(慣行に比べて肥効が続く)のためなので、安易に追肥することは避けます。 
●近年の温暖化傾向等の気象条件を考えると、施肥量をやや控えめにし、生育後半に窒素が明らかに不足する場合に追肥ができる施肥体系で臨みましょう。
●慣行施肥法とは生育パターンが異なるので、「全量基肥施肥法のための生育診断技術」が、今後必要となります。

執筆者 
土屋 一成
農研機構 作物研究所 企画管理室

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