提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


水田除草剤と雑草防除

2008年6月 4日

(2014年6月 一部改訂)
(2016年11月 一部追記)

除草剤

「水稲用除草剤の種類」 
●水稲用除草剤にはさまざまな種類があり、その有効成分によって効果のある雑草の種類が異なります。
●1キロ粒剤、ジャンボ剤、フロアブル剤、豆つぶ剤(250g粒剤)など剤型もさまざまです。
●一発処理剤、初期除草剤、後期除草剤など、使用時期によっても分けられています。
●時期や目的に合わせて最も適した除草剤を選び、使用基準に従って適正に使用することが大切です。
●除草剤には雑草の出芽を抑える働き(土壌処理効果)と、生育している雑草を枯殺する働き(茎葉処理効果)があります(図1)

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図1 除草剤の種類と除草効果(概念図)

●初期除草剤は土壌処理効果が高く、後期除草剤は茎葉処理効果が高いという特徴があります。
●反対に、初期除草剤は生育が進んだ雑草には効果がありませんし、後期除草剤にはこれから出芽する雑草を抑える力はありません。 

「一発処理剤」 
●水稲移植後からノビエ1~3葉期頃に使用する除草剤で、いくつかの有効成分が含まれています。
●多年生雑草を含めて多くの種類の雑草を一度に防除でき、使用後30~45日の残効期間があるので、難防除雑草が発生しない水持ちの良い水田であれば、1回の散布で十分な除草効果があります。
●現在最もよく使われている水稲除草剤で、いろいろな製品が市販されています。

「初期除草剤」(土壌処理剤) 
●体系処理の初期剤として、水稲の移植前後、雑草の出芽前(あるいは出芽始期)に使用する除草剤です。
●水田に散布すると、土壌表面に除草剤の処理層が形成されます。
●発芽したばかりの雑草がその処理層に触れると、除草剤の影響を強く受けて出芽できなくなります。
●すでに出芽して根を土中に伸ばして少し大きく生長している雑草には、ほとんど効果はありません。
●出芽抑制期間(残効期間)は、通常処理後15~25日です。
●それを過ぎると雑草が発生(後発)するので、通常は中期除草剤や後期除草剤との体系処理が必要になります。 

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管理機を使用した薬剤散布のようす

「中期除草剤」 (茎葉兼土壌処理剤、ノビエ対象剤、広葉雑草対象剤など)
●雑草の生育初期(ノビエ1.5~5葉期頃まで)に使用する除草剤で、通常は初期除草剤との体系で使用します。
●土壌処理剤と茎葉処理剤の両成分が混合されている茎葉兼土壌処理剤では、生育中の雑草とこれから出芽する雑草の両方を抑えることができます。
●含まれる成分によっては、5葉期以下の若いイネの場合、強い薬害が生じることがあります。

「後期除草剤」(茎葉処理剤)
●初期除草剤、一発処理剤、中期除草剤を処理した後に発生、あるいは残草した雑草を防除するために、水稲の有効分げつ終止期から幼穂形成期までに使用する茎葉処理剤です。
●2,4-PA(2,4-D)、MCPA、ベンタゾンおよびそれらの混合剤があり、生育の進んだ雑草に卓効を示します。
●ノビエ等のイネ科雑草には、ほとんど効果がありません。
●もっぱら残草して大きくなった広葉雑草や、カヤツリグサ科雑草の防除に使われます。

「初期剤や一発処理剤が雑草に効くまで-水管理が大切-」

2014ine8-1zu3.jpg ●水田に散布された除草剤の成分は、いったん田面水に溶けてから、数日かけてゆっくりと土壌表面に落ち着きます。
●土壌表面に薄い除草剤の層(処理層)を作り、そこで発芽直後の雑草に吸収されて、除草効果を発揮します。
●その後、土壌表層の有効成分は少しずつ分解されて、いずれは除草効果がなくなります。
●最初に土壌表層に落ち着く有効成分の量が多ければ多いほど、効果がなくなるまでの期間(残効期間)は長くなります。
●除草剤成分のすべてを土壌表層に落ち着かせるために、除草剤散布後の数日間はしっかり止水をして、有効成分を水田内に保持するようにします。
●除草剤散布直後は、田面水中の除草剤濃度が極めて高いので、この時期に田面水が水田外へ流れ出て、処理層の除草剤成分濃度が低くなると、除草効果が低下して残効期間も短くなります。
●農薬が水田外へ流出するといった、環境保全上の問題も生じますので、くれぐれも田面水を田外に流さないよう、気をつけます。

左 :図2 水田に散布された除草剤の有効成分の動き
※この期間はしっかりと止水をして、有効成分が多く含まれている田面水を水田外に流さない

有効成分の種類と特徴

「ALS阻害剤」
●植物特有の分岐鎖アミノ酸生合成系で重要な働きをするアセト乳酸合成酵素(ALS)を阻害する除草剤で、スルホニルウレア系、トリアゾロピリミジン系、ピリミジニルサリチル酸系など、構造が異なるさまざまな除草剤が開発されています。
●スルホニルウレア系除草剤はSU剤と呼ばれ、ベンスルフロンメチル、ピラゾスルフロンエチル、イマゾスルフロンエチル、アジムスルフロン、シクロスルファムロンなど多くの化合物があります。
●広葉雑草やカヤツリグサ科雑草の出芽前から出芽後~生育初期にかけて、高い効果があり、極めて多くの種類の雑草に卓効を示します。
●ノビエに効果がないものが多く、ノビエ対象成分と組合せて、一発処理除草剤の重要な成分として利用されます。
●新規スルホニルウレア系除草剤(SU剤)のプロピリスルフロン、メタゾスルフロン、フルセトスルフロンはノビエに対しても高い除草効果があり、ノビエや多年生雑草を含む幅広い殺草スペクトルを特徴としています。
●トリアゾロピリミジン系のペノキススラム、ピリミジニルサリチル酸系のピリミノバックメチル、ビスピリバックNa塩、ピリフタリド、スルホンアニリド系のピリミスルファンは、3~5葉期のノビエに対しても高い除草効果があり、ペノキススラムやピリミノバックメチル、ビスピリバックNa塩などは高葉齢のノビエを対象とした茎葉処理除草剤としても利用されます。

「土壌処理剤の成分」
●プレチラクロール、ブタクロール、テニルクロール、カフェンストロール、メフェナセット、オキサジクロメホン、ペントキサゾン、フェントラザミド、インダノファン、ピラクロニル、フェノキサスルホン、イプフェンカルバゾンなど多くの種類があります。多くの種類があります。
●ノビエの出芽前~出芽始期(剤によってはノビエ2葉期まで)の散布で除草効果が高く、主に一発処理剤のノビエ対象成分として利用されます。
●ノビエ以外にも一年性広葉雑草やカヤツリグサ科雑草に除草効果があり、プレチラクロール、ブタクロール、ペントキサゾンなどは初期除草剤として単剤でも利用されます。

「白化作用を示す成分」
●ピラゾレート、ベンゾフェナッブ、ベンゾビシクロン、メソトリオン、テフリルトリオンなどの除草剤成分は、除草効果発現時に雑草の茎葉に白化症状が現れることがあります。
●ピラゾレートは、発芽~出芽直後の若い水稲実生にも安全なので、水稲直播栽培の初期除草剤としても利用されます。
●ベンゾビシクロンはイヌホタルイに、ベンゾフェナップはオモダカに卓効があります。
●テフリルトリオンは、ノビエや多年生雑草を含む幅広い殺草スペクトラムを特徴とする成分で、一発処理剤の主成分として利用されます。

「ノビエ対象茎葉処理剤の成分」
●シハロホップブチルやピリミノバックメチルは、ある程度生長したノビエにも効果があります。
●ノビエ3葉期まで使用できる一発処理剤やノビエ5葉期頃までの中期剤として利用されます。
●これらの2成分は、水稲に対する高い安全性が特徴です。
●トリアジン系除草剤のシメトリンも、中期剤のノビエ対象成分として利用されます。
●イネの5葉期までに使用した場合、高温条件で強い薬害が生じることがあります。

「ホタルイ類対象剤の成分」
●多くの土壌処理剤は、発生始期までのイヌホタルイには効果がありますが、通常では第1葉が展開してしまうと効果が劣ります。
●ブロモブチドやベンゾビシクロンという除草剤成分は、2葉期までのイヌホタルイに安定した効果があります。
●この2成分は、一発処理剤のホタルイ対策成分として利用され、特にイヌホタルイが多発して問題となる水田で有効です。

「広葉雑草対象茎葉処理剤の成分」
●ホルモン剤である2,4-PA(2,4-D)、MCPA、MCPB、ダイアジン系のベンタゾンなどがあります。
●後期除草剤や中期除草剤の広葉雑草、カヤツリグサ科雑草対象成分として利用されます。

「ノビエと広葉雑草のどちらにも効果のある成分」
●ALS阻害剤のプロピリスルフロン、メタゾスルフロン、フルセトスルフロン、ペノキススラム、ビスピリバックNa塩、ピリミスルファン、白化作用を示すテフリルトリオンは、広葉雑草とノビエの両方に効果がある除草剤成分です。
●ペノキススラムは中期剤として、ビスピリバックNa塩は乾田直播種栽培の入水前処理剤として、ピリミスルファンとテフリルトリオンは一発処理剤の成分として利用されます。
●ビスピリバックNa塩は、特殊雑草のイボクサやクサネムに高い効果があり、これらの対策剤として、移植栽培や直播栽培で使用できます。

除草剤によるイネの薬害について

「薬害が発生しやすい条件」
●ごく浅植えでイネの根が露出していたり、砂壌土や減水深が大きい条件では、除草剤成分がイネの体内に吸収されやすくなるため、通常よりも薬害が大きくなることがあります。
●除草剤散布後の高温や強風も、除草剤が吸収されやすくなるので、薬害が大きくなることがあります。
●初期生育の不良や害虫・病気に侵されているイネも、除草剤による影響を大きく受けることがあります。
●除草剤のラベルには薬害が出やすい条件が記載されていますので、よく確認して使用してください。

「水稲品種と薬害」
●水稲除草剤は、農薬登録までに多くの食用米品種(日本型品種)を用いた試験で、安全性が確認されています。広く栽培されている一般的な日本型水稲品種であれば、水稲用除草剤に特に弱いものはありません。
●インド型多収品種で、新規需要米向け(米粉、加工米飯、飼料、外食産業)に栽培される「ハバタキ」「タカナリ」「モミロマン」「ミズホチカラ」「ルリアオバ」「おどろきもち」「兵庫牛若丸」「華麗米」「夢十色」「やまだわら」の10品種は、白化作用を示す成分であるベンゾビシクロン、テフリルトリオン、メソトリオンに弱いことがわかっています。
●これら10品種を栽培するときは、上記3成分を含む除草剤を使用しないよう十分に注意する必要があります。もよりの農業改良普及センター、JA、除草剤販売会社などで、除草剤に含まれる有効成分をよく確認してください。
●これに関する新しい情報がこちらのサイトで発表されています。

執筆者
渡邊 寛明
中央農業総合研究センター 生産体系研究領域

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