稲編【10】水田除草剤と雑草防除
2008年06月04日
除草剤
「水稲用除草剤の種類」
●水稲用除草剤には様々な種類があり、その有効成分によって効果のある雑草の種類が異なります。
●1キロ粒剤、ジャンボ剤、フロアブル剤など剤型も様々です。
●一発処理剤、初期除草剤、後期除草剤など、使用時期によっても分けられています。
●時期や目的に合わせて最も適した除草剤を選び、使用基準に従って適正に使用することが大切です。
●除草剤には雑草の出芽を抑える働き(土壌処理効果)と、生育している雑草を枯殺する働き(茎葉処理効果)があります(図1)。
●初期除草剤は土壌処理効果が高く、後期除草剤は茎葉処理効果が高いという特徴があります。
●反対に、初期除草剤は生育が進んだ雑草には効果がありませんし、後期除草剤にはこれから出芽する雑草を抑える力はありません。
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図1 除草剤の種類と除草効果(概念図)
「一発処理剤」
●水稲移植後からノビエ1~3葉期頃に使用する除草剤で、いくつかの有効成分が含まれています。
●多年生雑草を含めて多くの種類の雑草を一度に防除でき、使用後30~45日の残効期間があるので、難防除雑草が発生しない水持ちの良い水田であれば、1回の散布で十分な除草効果があります。
●現在最もよく使われている水稲除草剤で、いろいろな製品が市販されています。
「初期除草剤」(土壌処理剤)
●体系処理の初期剤として、水稲の移植前後、雑草の出芽前(あるいは出芽始期)に使用する除草剤です。
●水田に散布すると、土壌表面に除草剤の処理層が形成されます。
●発芽したばかりの雑草がその処理層に触れると、除草剤の影響を強く受けて出芽できなくなります。
●既に出芽して根を土中に伸ばして少し大きく生長している雑草にはほとんど効果はありません。
●出芽抑制期間(残効期間)は処理後15~25日が普通です。
●それを過ぎると雑草が発生(後発)するので、通常は中期除草剤や後期除草剤との体系処理が必要になります。
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写真 :管理機を使用した薬剤散布の様子
「中期除草剤」 (茎葉兼土壌処理剤、ノビエ対象剤、広葉雑草対象剤など)
●雑草の生育初期(ノビエ1.5~5葉期頃まで)に使用する除草剤で、通常は初期除草剤との体系で使用します。
●土壌処理剤と茎葉処理剤の両成分が混合されている茎葉兼土壌処理剤では、生育中の雑草とこれから出芽する雑草の両方を抑えることができます。
●含まれる成分によっては、5葉期以下の若いイネだと強い薬害が生じることがあります。
「後期除草剤」(茎葉処理剤)
●初期除草剤、一発処理剤、中期除草剤を処理した後に発生、あるいは残草した雑草を防除するために、水稲の有効分げつ終止期から幼穂形成期までに使用する茎葉処理剤です。
●2,4-PA(2,4-D)、MCPA、ベンタゾンおよびそれらの混合剤があり、生育の進んだ雑草に卓効を示します。
●ノビエ等のイネ科雑草には、ほとんど効果がありません。
●もっぱら残草して大きくなった広葉雑草や、カヤツリグサ科雑草の防除に使われます。
「初期剤や一発処理剤が雑草に効くまで-水管理が大切-」
●水田に散布された除草剤の成分は、いったん田面水に溶けてから、数日かけてゆっくりと土壌表面に落ち着きます。
●土壌表面に薄い除草剤の層(処理層)を作り、そこで発芽直後の雑草に吸収されて、除草効果を発揮します。
●その後、土壌表層の有効成分は少しずつ分解されて、いずれは除草効果が無くなります。
●最初に土壌表層に落ち着く有効成分の量が多ければ多いほど、効果が無くなるまでの期間(残効期間)は長くなります。
●除草剤成分の全てを土壌表層に落ち着かせるために、除草剤散布後の数日間はしっかり止水をして、有効成分を水田内に保持するようにします。
●除草剤散布直後は、田面水中の除草剤濃度が極めて高いので、この時期に田面水が水田外へ流れ出て、処理層の除草剤成分濃度が低くなると、除草効果が低下して残効期間も短くなります。
●農薬が水田外へ流出するといった、環境保全上の問題も生じますので、くれぐれも田面水を田外に流さないよう、気をつけます。
左 図2 水田に散布された除草剤の有効成分の動き
(※この期間はしっかりと止水をして、有効成分が多く含まれている田面水を水田外に流さない)
有効成分の種類と特徴
「スルホニルウレア系除草剤(SU剤)」
●スルホン酸と尿素が結合した化学構造を持つ除草剤の総称です。
●広葉雑草やカヤツリグサ科雑草の出芽前から出芽後~生育初期にかけて、高い効果があり、極めて多くの種類の雑草に卓効を示します。
●ノビエには効果がありません。
・通常は、ノビエ対象成分と組み合わせて、一発処理除草剤の重要な成分として利用されます。
●SU剤には、ベンスルフロンメチル、ピラゾスルフロンエチル、イマゾスルフロン、アジムスルフロンなど多くの化合物があります。
「土壌処理剤の成分」
●プレチラクロール、ブタクロール、テニルクロール、カフェンストロール、メフェナセット、オキサジクロメホン、ペントキサゾン、フェントラザミドなど多くの種類があります。
●ノビエの出芽前~出芽始期(剤によってはノビエ2葉期まで)の散布で除草効果が高く、主に一発処理剤のノビエ対象成分として利用されます。
●ノビエ以外にも一年性広葉雑草やカヤツリグサ科雑草に除草効果があり、プレチラクロールやブタクロールなどは初期除草剤として単剤でも利用されます。
「白化作用を示す成分」
●ピラゾレート、ベンゾフェナッブ、ベンゾビシクロンなどの除草剤成分は、除草効果発現時に雑草の茎葉に白化症状が現れることがあります。
●ピラゾレートは、発芽~出芽直後の若い水稲実生にも安全なので、水稲直播栽培の初期除草剤としても利用されます。
●ベンゾビシクロンはイヌホタルイに卓効があります。
「ノビエ対象茎葉処理剤の成分」
●シハロホップブチルやピリミノバックメチルは、ある程度生長したノビエにも効果があります。
●ノビエ3葉期まで使用できる一発処理剤やノビエ5葉期頃までの中期剤として利用されます。
●水稲に対する高い安全性が特徴です。
●トリアジン系除草剤のシメトリンも、中期剤のノビエ対象成分として利用されます。
●シメトリンは、イネの5葉期までに使用した場合、高温条件で強い薬害が生じることがあります。
「ホタルイ類対象剤の成分」
●多くの土壌処理剤は、発生始期までのイヌホタルイには効果がありますが、通常では第1葉が展開してしまうと効果が劣ります。
●ブロモブチドやベンゾビシクロンという除草剤成分は、2葉期までのイヌホタルイに安定した効果があります。
●これらは一発処理剤のホタルイ対策成分として利用され、特にイヌホタルイが多発して問題となる水田で有効です。
「広葉雑草対象茎葉処理剤の成分」
●ホルモン剤である2,4-PA(2,4-D)、MCPA、MCPB、ダイアジン系のベンタゾンなどがあります。
●後期除草剤や中期除草剤の広葉雑草、カヤツリグサ科雑草対象成分として利用されます。
渡邊 寛明
中央農業総合研究センター雑草バイオタイプ・総合防除研究チーム長
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◆稲編
●【1】 栽培型の選定
●【2】 品種の選定
●【3】 育苗法のいろいろ
●【5】 本田の準備
●【6】 機械移植栽培
●【7】 機械移植作業の実際
●【8】 直播による水稲栽培
●【9】 水稲直播栽培の実際
●【11】難防除雑草対策
●【12】収量・品質を決める施肥
●【13】稲作における水管理
●【14】良食味米の栽培法
●【15】稲の病害防除
●【16】稲の虫害防除
●【17】適期収穫
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●【19】農薬に頼らない雑草防除法





