稲編【9】 水稲直播栽培の実際
2008年05月27日
種子の処理
「カルパーコーティング」
●カルパーコーティング種子(写真1)のkg単位の作成には、市販されているコーティング機を使います。
●種子が数百g程度であれば、大きなボウルで代用できます。
写真1 :カルパーコーティング種子
●カルパーコーティングの手順は、以下の通りです。
〈用意するもの〉
○種子:塩水選、種子消毒、低温で浸漬・催芽(鳩胸程度に止める)させたもの
塩水選の溶液比重は、目安として1.13とします。
種子はよく洗浄し、脱水します。
○過酸化カルシウム剤 (商品名 カルパー粉粒剤16) : 乾籾重の等倍量あるいは2倍量
(1)コーティング機に種子を入れます。
(2)機械を回しながら、過酸化カルシウム剤とスプレーによる水を交互に加えます。
(3)全ての過酸化カルシウム剤を投入し、均一な状態になるまで機械を回転させます。
(4)コーティングした種子は一旦陰干しし、その後袋詰めします。
(5)長期 (コーティング後数日以上2週間以内) 保管する場合は、密封して10℃以下の暗所に保管します。
「鉄コーティング」
●鉄コーティングの手順は、以下の通りです。
〈用意するもの〉
○種子:種子消毒後、常温で1~2日浸種後に乾燥させた活性化種子
○鉄コーティング用資材:コーティング量に対して、還元鉄粉90%と焼石膏10%を混ぜたもの。
●コーティング量は、0.1~等倍まで変えられます。少なければより低コストですが、鳥害に遭遇するリスクが高まります。等倍量で始めて、鳥害の程度を見ながら減量するとよいでしょう。
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写真2 :鉄コーティング種子(左側:コーティング直後 / 右側:酸化後)
(1)活性化種子を水に数分つけ、表面を水になじませてから脱水します。
(2)コーティング機に種子を投入します。
(3)機械を回しながら、鉄資材とスプレーによる水を交互に投入します。
(4)全ての鉄資材を投入し、均一な状態になるまで、機械を回転させます。
(5)コーティングした種子は、苗箱等に薄く広げて放熱・乾燥させ、種子を乾固させます。集積すると短時間で急速な発熱を起こすことがあり、発芽率低下の原因となるので、放熱の仕方に注意しましょう。
(6)種子はその後錆色に変わります。そのまま播種まで苗箱に入れておきます。
播種作業
「条播機による播種」
湛水直播では、
●散播に比べて耐倒伏性を確保しやすいため、条播機導入が最も進んでいます。(画像)
●作溝器で播種溝を切り、溝内にカルパー種子を落下させた後に覆土する方式が主流です。
●田植え機を利用した、作溝、播種後に覆土を行わない方式もあります。
●どちらの方法でも、播種後数日間は落水状態を保って田面を固め、種子の土中への定着と発根を促します。
乾田直播では、
●不耕起播種機(愛知県農業総合試験場による開発)が、最近、普及し始めています。(画像)
●不耕起乾田直播では、冬季に代かきを行うことによって漏水防止や圃場の凹凸を解消し、播種機の作溝・播種精度を高めます。
●播種時には、そろばん玉状の作溝輪で播種溝を作って施肥および播種を行い、覆土チェーンによって簡易な覆土を行います。
●播種深が5cm程度と深く、冬季代かき後の落水により土壌が硬いので、強い耐倒伏性があります。
●収穫時の地耐力確保のための中干しや、出穂後の早期落水がいりません。
「ミスト機またはヘリによる播種」
●ほぼ「湛水直播」の「散播」にあたります。
●コスト面から、ミスト機は小~中面積向き、ラジコンヘリは大面積向きです。
●播種作業が省力的であり、播種深度が浅いため、苗立ちを確保しやすい長所があります。
●播種ムラが出やすく、播種深度が浅いため、倒伏しやすい短所があります。
●ミスト機、ラジコンヘリとも、播種後数日間は落水状態を保って田面を固め、種子の土中への定着と発根を促します。
●苗立ち数が多くなりやすいため、過繁茂となった場合、生育後半の生育が凋落して穂数を確保しにくく、倒伏も発生しやすくなるので注意します。
●適正苗立ち数である50~100本/㎡を確保できるのであれば、播種量は3kg/10a程度まで減量して、施肥量も控えめにするとよいでしょう。
問題点と対策
「問題点」
●湛水直播では、雑草防除、鳥害、一部でスクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)による食害等があります。
●乾田直播では、圃場の漏水対策、雑草防除、苗立ちの安定化技術などがあります。
「雑草対策」
●直播栽培では、移植栽培に比べて雑草がイネに先行して生育するため、除草剤散布では、イネに対する安全性(薬害回避)と除草効果が移植栽培以上に必要です。
●湛水直播では、ノビエ防除に有効な薬剤(湛水直播で3葉期まで有効)、SU剤抵抗性雑草に有効な薬剤などの実用化によって、除草効果は高まっています。
●湛水直播では、一般に、出芽揃い後に入水して初期剤を散布し、稲1葉期以降に初中期一発剤を散布する体系が基本です。
●乾田直播では、一般に、出芽前に非選択性接触型除草剤を散布し、入水後に初中期一発剤を散布する体系が基本です。
「スクミリンゴガイ対策」
●九州を中心とした暖地では、圃場に生息し、播種後の幼植物を加害するスクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)の被害が出やすく、湛水直播栽培普及の妨げとなっています。
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写真 左:スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ) / 右:スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)の卵
●被害の回避には、田畑輪喚や、耕耘による貝の破砕などによって、播種時の貝密度を低減させること、また播種後落水によって貝の移動を制限して被害程度を軽減することが有効です。
●殺虫剤ではパダン粒剤、キタジンP粒剤に効果があります。
●石灰窒素にも殺貝効果はありますが、薬害が出るため、栽培期間中には使用できません。
●石灰窒素を利用する場合には、耕起後に湛水して代かきを行い、石灰窒素散布後に3~4日湛水状態としてから播種を行います。
「鳥害対策」
●鳥害の完全防除は困難です。
●基本的には、加害する鳥類を把握し、生息域から離れた圃場で直播を行うことが大切です。
●爆音機やテグスなどの設置も、鳥が慣れるまでの短期間であれば有効です。
●カルガモは、水中の餌をくちばしで探って食べます。そのため、播種後落水、浅水管理が有効です。
●湛水直播のスズメ対策は、種子が土壌表面に露出しやすい散播よりも、露出しにくい条播もしくは点播が望ましく、被害を軽減するために出芽揃い後に入水することが有効です。
●乾田直播の鳥害対策は、一般に、覆土による隠蔽が有効です。スズメ、ハト類とカラスは、視覚によって餌を探して食べるからです。
●不耕起V溝直播では、冬季代かきによる整地作業後に乾燥して堅くなった圃場にV字型に溝が作られ、3~5cmの深さに種子が播種されます。よって、鳥害を回避することができます。
古畑昌巳
中央農業総合研究センター北陸研究センター大規模水田作研究チーム
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◆稲編
●【1】 栽培型の選定
●【2】 品種の選定
●【3】 育苗法のいろいろ
●【5】 本田の準備
●【6】 機械移植栽培
●【7】 機械移植作業の実際
●【8】 直播による水稲栽培
●【10】水田除草剤と雑草防除
●【11】難防除雑草対策
●【12】収量・品質を決める施肥
●【13】稲作における水管理
●【14】良食味米の栽培法
●【15】稲の病害防除
●【16】稲の虫害防除
●【17】適期収穫
●【18】乾燥・調製
●【19】農薬に頼らない雑草防除法





