提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


本田の準備

2008年5月 1日

(2014年4月 一部改訂) 

堆肥の施用

「水田には堆肥を入れよう」 
●堆肥とは、家畜糞、稲わら、生ごみなどの有機物を堆積し、微生物の働きで分解させたものを言います。
●堆肥には作物の養分が含まれていますが、堆肥の施用は養分を与えるだけではなく、土壌の物理性や化学性を改善し、作物が生育しやすい環境を作ります。
●昔から「稲は地力で作る、麦は肥料で作る」と言われます。稲は夏の暑い時期に作付けされるので、堆肥に含まれている窒素が分解されて利用されますが、麦の作付け時期は寒いので、堆肥に含まれている窒素は分解されず利用されないため、肥料として窒素を施用する必要があります。

「堆肥の種類」 
●堆肥には、稲わらや麦わらなどの植物を主原料とするもの、牛糞堆肥や豚糞堆肥など家畜の糞尿を主原料とするものなどがあります。
●主原料やオガクズなど副資材の構成によって、含有成分や施用時の分解速度が異なります。
●最近では、家畜糞堆肥をペレット状に加工したペレット堆肥が開発されています。ペレット堆肥はブロードキャスタやライムソーワで散布ができます。

「堆肥の散布方法」 
●一般にマニュアスプレッダを用いて散布します。
●散布幅は3~6m程度、毎年の散布適量は堆肥の種類や施用時期などによって異なりますが、一般的には1~2t/10a位です。
●多すぎると水稲の生育制御が困難になるなどの問題が発生します。 

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 :パワーマニアスプレッダ 
 :小型マニュアスプレッダによる堆肥散布作業(近畿中国四国農業研究センター提供) 


耕起

「耕起の意義」
●耕起作業には、播種や移植に適した土塊の大きさに土を砕くということ以外に、
 前作物の残渣を土の中にすき込んで腐熟を促進させる、土の中に空気を入れて乾燥を促進し、有機態窒素を無機化させる(乾土効果)等の意味があります。 
●水稲単作地帯では、秋の稲刈りの後に一回程度荒起こしを行い、春の代かき前にもう1~2回耕起を行います。 
●稲・麦二毛作地帯では、麦刈り後に藁のすき込みを兼ねた耕起を1~2回行います。 

「耕起作業で使う機械」
●水田で使う一般的な耕起用の機械には、耕うん機とトラクタに取り付けるロータリがあります。ロータリには正転(ダウンカット)ロータリと逆転(アップカット)ロータリがあります。
●アップカットロータリは、ダウンカットロータリに比べて土が細かくなりやすく、作土の表面に細かい土の層ができ乾田直播の場合には好適ですが、大きな所要動力を必要とするため一回り大きなトラクタが必要となります。

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熊本県菊池市でのロータリによる麦収穫後の耕起作業(九州沖縄農業研究センター提供) 

「耕起作業の実際」
●土壌水分が多すぎると、耕起作業ができないので、適当な土壌水分になった段階で耕起作業を行います。
●耕深は浅過ぎると
 漏水が多くなる、
 作物の生育が劣る、
 残渣物が土壌面に露出しやすい
などの問題が発生します。
●耕深が深すぎると
 田植機など機械の走行が困難となったり、
 排水が悪過ぎて中干しができなくなったりします。
 耕深は10~15cm程度を目安にします。
●耕起の作業速度が早いと(或いは、ロータリ軸の回転数が遅いと)、耕うん爪が土を切削するピッチが大きくなるので、耕起時の土塊が大きくなります。
●逆に作業速度が遅いと(或いは、ロータリ軸の回転数が早いと)ピッチが小さくなり、土塊が細かくなります。
●したがって、作業速度とロータリ軸の回転数に注意して作業を行います。

畦塗り 

「畦塗りの重要性」 
●代かきが水田に湛水した水の縦浸透を防止する働きがあるのに対し、畦塗りは水の横浸透を防止する重要な作業です。
●隣接する部分が全て水田になる(水を張る)場合は、畦塗りについてそれほど気を使うことはありませんが、畑や道路の場合には、畦から漏水しないように、しっかり畦塗りをする必要があります。

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機械による畦塗り作業

「機械による畦塗り作業」
●昔は畦塗りを手作業で行っていましたが、手作業による畦塗りは極めて重労働です。最近は、トラクタに装着する畦塗り機を使用して畦塗りを行っています。また、畔シートを使う場合もあります。
●以前の機械では畦塗りが片側でしかできないため、圃場の四隅に塗り残しが生じて手作業での畦塗り作業が必要でした。
●最近ではトラクタの左右で作業ができるため、塗り残しがなくなりました。
●また、圃場一周を連続して畦塗り作業を行うことのできる畦塗り機も開発され、畦塗り作業は大変楽になりました。
●降雨の後、または圃場に水を回した後、畦塗りに適した土壌水分になった状態で畦塗りを行うのが作業のポイントです。
●また、畦塗りの後は代かきと湛水を行い、畦が乾燥しないように注意することで、畦のひび割れを防止し、畦を長持ちさせます。

施肥 

最近は、田植え同時施肥田植え機で施肥が行われることが増えています。
そうでない場合は、以下の手順で施肥を行います。

「肥料の種類」
●肥料には、窒素などの成分別の単肥と、複数の成分が入った複合肥料があります。
●原料によって無機質と有機質、効果によって速効性、緩効性、遅効性、形状によって粉状、粒状、液状などに分けられます。
●目的や作業方法に応じて、また価格を考慮して適切な肥料を選択します。

「施肥量」 
●施肥量の目安は、普及センターやJAが作成している「稲作ごよみ」を参考にするとよいでしょう。
●基本的には、土地の地力、品種、栽培時期、栽培方法などに応じて変えることが必要です。
●堆肥を施用した場合は、堆肥からの養分供給量を考慮して施肥量を決めましょう。
●大豆跡や側条施肥では施肥量を1~2割程度減らすなど、輪作体系や施肥方法を考慮した施肥量の設計が重要です。

「施肥作業用機械」
●施肥作業は、背負い式動力散布機のほか、粒状肥料散布用のブロードキャスタ、粉状肥料散布用のライムソーワ等の機械による方法があります。 

●ブロードキャスタは散布幅が広く、20m以上の散布幅の機種もあります。

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ブロードキャスタによる麦の追肥作業(九州沖縄農業研究センター提供)

●ライムソーワは、粉状肥料や粉状の土壌改良材をホッパから下に落とす機械なので、散布幅は2m前後が一般的です。

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ライムソーワによる施肥作業(東北農業研究センター提供)

●省力栽培をはかるために、肥料・箱施用薬剤・除草剤を田植えと同時に散布する技術「田植同時処理」に対応した、「田植え同時散布機」もあります。田植機の後部にセットして、田植えと同時に散布します。
●どの機械の場合も、作業幅、落下量、作業速度などをきちんと調節して、施肥量が多過ぎ、少な過ぎにならないよう注意します。

「車速連動式の施肥機について」
●ブロードキャスタを用いた施肥作業では、一般的に車速が速くなると単位面積当たりの施肥量が減り、速度が遅くなると単位面積当たりの施肥量が増えることになります。
●このため、車速の変化に応じて施肥量が変化する施肥機が開発されました。
●車速の測定方法は、GPSの位置情報などをもとにしたもので、車速が早ければ施肥量を多く、遅ければ施肥量を少なくすることで、単位面積当たりの施肥量を一定(設定通り)にする機能があります。
●施肥量の設定時には、肥料のかさ密度(比重)などの情報を入力しますが、肥料の種類によっては流動性に違いがあるので、機械を購入して行う最初の施肥作業や、肥料の種類を変えた場合は、散布量が設定どおりか必ず確認しましょう。
●大型のブロードキャスタのように散布幅が広い施肥機を使用する場合、作業経路の確認が難しく、肥料の重複や隙間(未施肥部分)ができることがあります。
●そこで、運転席の横のディスプレイで作業経路を確認できる「経路誘導機能」付きの施肥機が開発され、普及が始まっています。

「施肥はできるだけ田植え直前にする」
●肥料の中の窒素は、圃場に施用された後、湛水するまでの期間が長いと、時間の経過とともに作土層から下へ流れて行きます。
●したがって、あまりに早く施肥することは肥料の利用効率を下げることになります。施肥はできるだけ田植え(播種)直前にするというのが原則です。

代かき 

「代かき作業の意義」
●代かき作業は、田植えや湛水直播作業の前に耕起した水田に水を入れて行う砕土均平作業です。
●通常、一回目の代かき作業は「荒代かき」と称し、砕土を目的に行います。
●二回目以降の代かき作業は、均平や稲株、残渣物の埋没を目的として実施します。

「代かき作業用機械」
●代かき作業には、ロータリや代かき専用ロータリを用います。 
●代かき専用ロータリは普通のロータリとは異なり、なた爪が短く砕土に適した形状になっています。
●ロータリほどの強度を必要としないため、作業幅が広く軽くなっていますが、耕起作業に使用することはできません。

●最近、高速代かき機が開発され、代かき作業が1m/s以上の速度で行えるようになりました。
●さらに、運土作業もできる高速代かき均平機も開発されています。

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福岡県筑前町での代かきロータリによる代かき作業(九州沖縄農業研究センター提供) 

「代かき作業のポイント」
●耕起した水田に水を湛水して行いますが、水の量が多すぎると、圃場の凸凹がわかりにくく均平作業がしにくい、わら等の有機物のすき込みが難しくなります。
●このため、適当な水量で代かきを行うことが重要です。

●次に、代かきロータリの作業深さを適当な位置に設定します。
●耕盤が凸凹だと代かき作業中のトラクタがピッチング(機体の向きが上下に揺れること)を起こし、代かきロータリの作業深さが変化してしまうので、注意しましょう。
●最近のトラクタや代かきロータリには、代かきロータリの作業深さを自動的に制御する「オート」という機能が付いています。
●「オート」機能は、代かきロータリの均平板のすぐ上にある板の角度を検知してトラクタ側に伝え、三点リンクの位置を制御して代かきロータリの作業深さを一定にします。
●この機能は、トラクタ側と代かきロータリ側にそれぞれ備わっている必要があります。
●この機能を使うと、代かきロータリの深さだけでなく、ローリング(左右の姿勢の揺れ)を防止することができます。

均平 

「均平作業の必要性」
●水田と畑の違いは、圃場が均平であるかどうか、用排水設備があるかどうか、の2点です。
●水田では水を蓄えて水稲を作りますが、圃場が凸凹だと、
 凸の部分に雑草が生えやすい、
 凹の部分では苗が冠水したり、直播水稲の場合では、発芽・苗立ちが良くない、
 圃場全体の排水がうまくできない、
等の問題が発生します。
●圃場が小さい場合や運土の量が少ない場合には、水稲作付け時に圃場の凸凹の位置をチェックしておき、耕起時や代かき時に手直しするようにします。
●圃場が大きい場合や運土量が多い場合には、レーザーレベラのような機械で均平作業を行います。

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レーザーレベラ(牽引型)による均平作業(東北農業研究センター提供) 

「レーザーレベラによる均平」
●レーザーレベラは、圃場の横に高さの基準となるレーザー発信機を設置し、トラクタ側の作業機が自分の現在の高さと基準高さとの差を検知して土を削ったり盛ったりして圃場を均平にする機械です。
●最初にプラウで作土の耕起や残渣物のすき込みを行います。
●残渣物が圃場表面に多いと圃場の均平作業が残渣物の移動作業になってしまうので、残渣物はきっちり土の中にすき込みましょう。
●圃場が広い場合、圃場面を完全に水平にすると排水が悪くなりますが、給水側から排水側までの長さが100m以下であれば、問題ありません。
●大きな圃場では、均平作業の後で圃場の周囲や中央に溝を付けて排水口に繋ぐと、水管理が簡単になります。
●均平作業は毎年行う必要はなく、2~3年に一度で良いでしょう。

執筆者 
田坂 幸平
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター

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