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育苗法のいろいろ

2008年4月12日

苗作りの大切さ

「健全苗の重要性」 
●苗半作と言いますが、苗作りでその年の作柄の大所が決まります。苗のよしあしは、収量や品質への影響が大きいのです。 
●稲作では、昔から健全苗の重要性が叫ばれています。これは、特に気象が厳しく、作期が短い寒地、寒冷地での話と思われがちですが、温暖地・暖地でも同様に重要です。  

移植後の冷風による植え傷み 九州沖縄農業研究センター提供 「植え傷み」 
●苗質のよくない苗を植えると、目立つのは冷温、風などによる「植え傷み」です。
●また、根の伸張、分けつ芽の発生が遅れ、活着、初期の生育、生育揃いなどに影響します。最終的には、欠株、穂数や穂重の減少、出穂の遅れなどに影響を与えます。
●同じ圃場でも、苗質がよくない苗と健全な苗の混在で、生育ムラが出てしまいます。適切な栽培管理の障害となり、収量、品質の低下をきたします。 
写真 :移植後の冷風による植え傷み (九州沖縄農業研究センター提供)

育苗法の現状

「育苗法の発展」
●稲の育苗法は、水苗代、畑苗代、折衷苗代、保温折衷苗代、ビニール畑苗代等での育苗から、施設・資材を利用した育苗へと発展してきました。 

畑苗代、水苗代、保温折衷苗代における育苗  出典【農学基礎セミナー】新版 作物栽培の基礎 堀江武編著 農文協より育苗センターにおける大量育苗の様子   九州沖縄農業研究センター提供
●現在は、機械移植に対応した箱育苗が一般に普及しています。 
●育苗の場所(置床)は、ハウス、トンネル、露地(水田、畑)など様々です。 
写真 
左 :育苗センターにおける大量育苗の様子 (九州沖縄農業研究センター提供)
右 :畑苗代、水苗代、保温折衷苗代における育苗  出典【農学基礎セミナー】新版 作物栽培の基礎 堀江武編著 農文協より


「出芽法」
●出芽法には、電熱育苗器利用、育苗箱の積み重ね法、平置き法などがあります。 
●積み重ね法では、ハウス内ではビニールシートなどでくるみ保温します。
●平置き法では、ハウスやトンネル内に置き、保温資材や遮光シート類で被覆します。
●温暖地・暖地では折衷水田、均平にした水田への直接の平置きも多くみられます。

●主に出芽法、置床場所などで区別される育苗様式は、当地の作期や育苗時期の気象条件で異なり、地域的な特徴があります。
●また、生産現場における詳細な育苗法も、播種量や保温資材の使い方などで様々です。

苗の種類と特徴 

●寒地・寒冷地ほど成苗に近い苗を用い、中苗が多く、温暖地、暖地になるほど稚苗が多い傾向にあります。それらの特徴は以下の通りです。 

「稚苗」
●育苗期間が短く、面積当たりの育苗箱が少なくてすみます。
●植え付けの適期幅が狭いのが欠点です。
●稲の生育にとって、気象的に余裕のある地域で多く普及しています。

「中苗」
●育苗期間がやや長く手間がかかりますが、本田での生育期間が短く、早く出穂します。 
●移植期の幅が広く、労働ピークを緩和できます。
●苗丈が大きく、水害時や田面が低く冠水する場合などに対応しやすいです。

「成苗」
●育苗期間は長いですが、本田の生育期間が一番短く出穂が早い、植え付け適期幅が広い、などの特徴があります。
●一般の育苗箱や枠型利用のすじ播き、成苗ポット利用などにより育苗ができます。
●北海道のほか、東北や中山間地、温暖地などの一部で普及しています。 

表1.苗の種類、播種量と施肥量の目安

「育苗法の動き」
●最近は健苗の意識が高まり、より薄播きの方向に進んでいます。
●全国のデータからみた苗の葉令、播種量と施肥量の目安については、表1.の通りです。

最近の育苗資材、育苗法 

 育苗作業は稲作の全労働時間の約6分の1を占めています。そこで、育苗の省力、低コスト化の必要性から各種の新しい資材、育苗法が開発されています。

「省力機械」
●播種機:土入れから、潅水、消毒、播種、覆土を一貫して行えるタイプが普及しています。
●育苗器:中の温度分布が均一になる、加湿方式のものが普及しています。
●種子の予措用機器:1台で種子の浸漬、薬剤消毒、温湯消毒、催芽に利用できる機器が開発され、利用されています。

「資材」
●培地・マット資材:軽量化や保水性、通気性等を工夫した、各種培土や人工床土、ロックウールなどの各種成型培地、籾がらマットなどが開発され市販されています。
●被覆シート類:出芽や育苗管理に適当な温度が確保しやすい、各種シート類が出てきました。

「肥効調節型肥料」
●育苗中の追肥の手間を省くため、床土への肥効調節型肥料の混合利用法が実用化されています。 (目的が育苗とは異なりますが、本田の生育期間に必要な分を全量混合する方法もあります。)

「温湯消毒法」
●60℃のお湯に10分つけて、病害を予防します。農薬を使わない種子の消毒法として、温湯消毒法が最近普及してきました。 

プール育苗による育苗のようす  (群馬県農業試験場作物部提供) 「プール育苗」
●特に灌水の省力化を可能とするため、最近、プール育苗が普及を広げてきました。
●本法では、液肥による追肥も可能です。
写真 右:プール育苗による育苗のようす (群馬県農業試験場作物部提供) 

 稲編「プール育苗の実際」はこちらから 

「その他の育苗法」
●ロックウール培地利用の乳苗や出芽苗の育苗法も実用化されています。
●水耕施設利用のロングマット苗が普及を開始し、箱なし苗や直播への応用も考えた種子つきマットが開発中です。

執筆者
堀末  登
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 フェロー

(文中の画像をクリックすると大きく表示されます)


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