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稲編【4】 苗作りの実際―箱育苗について

2008年04月11日

折衷水田に置床しての育苗
 生産現場における育苗様式は、その地域の作期、育苗の時期の気象条件と関係があります。
 同じような育苗様式においても、細部の育苗法は、地域的に様々です。 
 以下、箱育苗について、共通する部分について記します。
 写真 :折衷水田に置床しての育苗 (佐賀県佐城農業改良普及センター 提供) 

苗作りの基本手順

「種子の用意」 
良質な種子を毎年更新 ●良質な種子を毎年更新します。
●自家採種は多くて1回までとし、その際は慎重な採種、脱芒処理、選種を実施します。 

「育苗土の用意」
●市販の育苗用培土が便利ですが、購入費がかかります。  
●水田や山の土を使う場合は、殺菌・消毒、pH調整が必要です。
●土の条件でも苗の生育が違うので慣れた土がよいでしょう。 

育苗土の用意 

「施肥」
●使用する土、苗の種類、播種量に応じて、適切な施肥を行います。( 【3】育苗法のいろいろ 表1を参照)
●暖かい時期・地域では苗が徒長しないよう少なめとします。市販の育苗用培土、培地は既に肥料が入ってる場合が多いです。

塩水選 「塩水選」
●うるちは比重1.13、もちは1.08で処理します。
●食塩を使う場合と硫安を使う場合があり、比重計または生卵(比重1.13は浮いて横になる程度、1.08は沈んで底で立つ程度)を利用して実施します。
●処理後は水洗いします。 

「種子消毒」
●水温15~20℃で、イネシンガレセンチュウ、ばか苗病やもみ枯れ細菌病、いもち病などの病害に対して行います。
●薬剤消毒後の籾は水洗いせず、軽く乾かして浸漬に移ります。
●前もって粉剤を粉衣処理する方法もあります。
写真 :薬剤を使わない温湯消毒法
左: (九州沖縄農業研究センター提供) 
右: (岩手県農業研究センター提供)


薬剤を使わない温湯消毒法 (岩手県農業研究センター提供)
薬剤を使わない温湯消毒法 (九州沖縄農業研究センター提供)
 
「種子の浸漬」
●水温は10~15℃で10~7日で実施します。積算温度で100℃が目安です。
●水はできるだけ取り替えますが、消毒した後は過度な交換はしません。


催芽 「催芽」
●水温は約30℃、12~20時間程度で実施します。
●催芽の程度は、幼芽が1mm出たところです。

「播種」
●播種機などを使って均一に播種します。
●播種前後に、土に十分な水を潅水します。
●必要があれば同時に病害の予防剤等を入れます。(次項参照)
●覆土のあとは潅水しません。

「殺菌剤処理」
●主に苗立ち枯れ病、ムレ苗等に対しての予防剤を施用します。
●育苗中に発生した場合は、防除剤を潅注します。
●播種前に前もって育苗土に粉剤を混和する方法もあります。

「出芽」
●出芽の温度は30℃を目標に行います。
●出芽長は1cm以内とし、出し過ぎに注意します。
●育苗器外での積重ね法では10~20箱重ねとし、極力温度ムラをなくすように工夫します。
●平置き式の出芽法では、ハウスやトンネル内に入れたり、各種の保温・遮光シートで覆い温度を確保します。 
写真 (右左ともに九州沖縄農業研究センター提供)
左: ハウス内積み重ね法による出芽処理 被覆はビニールシート
右: ハウス内平置き法による育苗 被覆シートはシルバーポリトウ#80  


ハウス内平置き法による育苗 被覆シートはシルバーポリトウ#80ハウス内積み重ね法による出芽処理 被覆はビニールシート (九州沖縄農業研究センター提供)


「緑化」 
●暖かい中でおこない、低温の中には出さないようにします。温度ストレスのため苗の生育不調を来たし、ムレ苗が発生しやすくなります。半遮光シート被覆の平置きで、出芽と同時に行う方法もあります。
●温度は20℃~25℃を目標とし、夜は15℃以下には遭わせないようにします。

「硬化」
●温度は、前半は20℃~25℃を目標に、夜は10℃以下には遭わせないようにします。
●移植が近くなる後半は徐々に外気に慣らしていきます。
●潅水は朝方に十分にやるようにします。後半でも1~2回とし、過湿を避け節水管理で根を伸ばし、苗丈を伸ばし過ぎないようにします。

※「緑化、硬化における夜の目標温度を達成しにくい場合では、それぞれ10度以下、5度以下には遭わせないようにします。」とする県もあります。

「追肥」
●葉令の進行、肥料むらなどをみて、追肥を適宜実施します。

「苗箱施薬」
●本田の病虫害に対して、必要な殺虫・殺菌剤を施用することが多くなりました。

「移植」
●葉色が落ちてくるようであれば、移植の数日前に弁当肥えを施します。

育苗管理上のポイントと留意点

「温度管理・水管理」
●育苗中は、なんといっても適切な温度管理、水管理が大切です。
●温度管理では、昼の高温はもとより、夜の低温にも気をつけます。
●水管理は、過湿を避け節水管理を心がけます。

「病害予防」
●ムレ苗は、低温や高低温度の繰り返し、pHが高いなどで、出やすくなります。
●苗立ち枯れ病などの病害は湿潤過ぎ、低温や高低温度の繰り返しなどで出やすくなります。
●徒長苗は高温、芽出し過ぎ、水分過多、多肥過ぎ、播き過ぎなどで出やすくなります。
写真 :苗立ち枯れ病の被害を受けた苗 (東北農業研究センター提供) 
苗立ち枯れ病の被害を受けた苗 (東北農業研究センター提供)
●これらムレ苗、病害苗、徒長苗をなくして、健苗を育成するために、次の事項に注意しましょう。

1)出芽処理の終了時点に気をつけます。育苗器に入れる時間、積み重ねの時間、保温シートをはずす時期などに注意します。

2)温度管理では適温を確保するようにします。ハウス・トンネルの開閉、保温シートなどの掛け・はずしに気を配ります。

3)水管理では、播種・芽出し時の湿潤管理から、緑化、硬化期には節水管理へともっていきます。潅水は朝方に十分に行います。少しずつの潅水はなるべくしないようにします。

※各県で普及している育苗様式については、県で詳細な指導指針を作っています。
前もって資料をよく読んでおくとともに、困った時には普及関係機関に相談してください。

執筆者
堀末  登
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 フェロー

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◆稲編
【1】 栽培型の選定 
【2】 品種の選定
【3】 育苗法のいろいろ
【5】 本田の準備 
【6】 機械移植栽培 
【7】 機械移植作業の実際 
【8】 直播による水稲栽培 
【9】 水稲直播栽培の実際 
【10】水田除草剤と雑草防除 
【11】難防除雑草対策 
【12】収量・品質を決める施肥  
【13】稲作における水管理  
【14】良食味米の栽培法  
【15】稲の病害防除  
【16】稲の虫害防除  
【17】適期収穫  
【18】乾燥・調製 
【19】農薬に頼らない雑草防除法 

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