品種の選定
2008年03月17日
まず自県の奨励品種から選ぶ
「自分の県の奨励品種から選ぶのが一番」
水稲の品種選定では、まず自分の県の奨励品種から選ぶのがお勧めです。
●良質な種子の供給体制が整っています。
●数年間の試験が行われ、それに基づく「栽培ごよみ」が作成されています。
●栽培指導に関する冊子やビデオなども揃っています。
●県によっては、稲の生育の節目の時に巡回の指導も行っています。
●県が奨励品種の特性一覧表を作成しており、各品種の特性の比較ができます。
写真 :冷害危険期における稲の巡回指導のようす(青森県十和田市)
それらを参考にして、
●出穂期が適当で食味・品質がよく多収で、自らの経営状況に適すると思われる特性の品種を選びます。
●選定した品種については、細かな栽培法の解説を参考にしましょう。
「自県以外の奨励品種から選ぶ場合」
●品種栽培のこつを会得すれば、条件の似た他県の奨励品種の選定もかまわないでしょう。
●他県の栽培指導に関する情報が参考になります。
●初めて他県の奨励品種や低アミロース米などの新形質米品種(後述)等を作る時には、最初は小面積で栽培し、その特性をよく見ておくことが重要です。
「販売も視野に入れる」
●販売は直販、通販が一般的ですが、積極的に売り込んで買い手を獲得する努力が求められます。
●JA等への出荷では、量をある程度まとめる必要があります。
●自県の奨励品種以外の品種について、生産物検査を受けるためには、現在の制度では農政事務所に申請をして産地品種銘柄として認めてもらう必要があります。
写真 :ひとめぼれの栽培ごよみ(資料は沖縄県農業研究センター提供)
より条件を絞って品種を選ぶ
「地域の気象、自分の田にあった品種を選ぶ」
品種選定は、「自分の田圃の土壌や立地、気象も考えて行う」必要があります。たとえば、
●後期に養分が出て倒伏しやすい
●冷水掛かりで生育、出穂が遅れる
●高温障害が出やすい
●冷害が出やすい
●いもち病がで出やすい
●台風に遭遇し、倒伏しやすい などです。
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写真 左:いもち病激発の稲のようす / 右:平成15年東北冷害における不稔青立ちの稲
奨励品種については、
●特性一覧表、品種解説などで、初期生育性、耐倒伏性、耐暑性、耐冷性、いもち抵抗性などを調べ、自分の田圃の条件にあわせて、品種選定をします。
●出穂期に注意します。各栽培型の出穂期の晩限までに出穂するものを選びます。
麦後の晩植では、
●「ある程度出穂の晩い品種」を選ぶと、収量を確保でき、登熟期も適温で経過できます。
●早生品種は、植えた後の高温で出穂が促進されるので、晩植では生育不足になりやすいようです。
「温暖化の影響を回避する」
●原因は出穂後3週間ぐらいの高温の影響と考えられます。
●高温の影響は品種間差が大きいので、当該県で推奨する耐暑性品種を選定するのがよいでしょう。
※(例)西日本の銘柄品種であるヒノヒカリは、耐暑性が弱く、近年大きく品質を落としています。この場合は、耐暑性の強い品種に換えることが解決法の一つです。また、ヒノヒカリを作る場合には、前述したような栽培面での対策を講じます。
写真 :“ヒノヒカリ”と耐暑性品種の“にこまる”の玄米(九州沖縄農業研究センター稲育種ユニット提供)
新形質米品種を作りたい
「新形質米品種とは」
●消費者ニーズの多様化傾向から、最近登場してきた、一般のうるち米、もち米以外で新しい米の品質形質を持った品種を、「新形質米品種」と呼んでいます。
「新形質米品種選定で注意すること」
●低アミロース米は、各県の奨励品種にも指定され始めており、JA等を通した販売網も拡大してきています。
それに対し、
●紫黒米や赤米などの色素米、香り米、低グルテリン(可消化蛋白質の一種)米等では、生産に応じた需要がまだ開発されていません。
●前もって販売先を確保するか、直販や通信販売など自らの力で売る仕組みを考えるべきです。生産組合を作って対応した方が有利でしょう。
写真 :大きさ、形が異なった紫黒米、赤米の色々(東北農業研究センター低コスト稲育種サブチーム提供 )
●低アミロース米のミルキークイーンは、多くの県で産地品種銘柄となって人気がありますが、需要に対し生産が多すぎると、値を落としてしまう恐れもあります。
●その他の新形質米でも、特に前もって需要や市況の動き等も考慮に入れて選定することが重要です。
「色素米の栽培」
●色素米の栽培法では、特に他の米への混米に注意します。
たとえば、
●一般の品種と隣接する所では作らない
●脱穀、籾摺では機械を色素米専用にするか、作業前後に機械を十分に掃除しておく必要があります。
刈取り期の集中を避けるための品種選定
「稲作の大規模経営の場合」
●全ての田圃の稲について、適期刈取りができるよう、成熟が少しずつ遅れるようにします。
●この場合、早生、中生、晩生の3~4品種を植えるのが理想的です。
●同じ品種を作付けせざるを得ない場合は、播種期をずらして成熟期を遅らせ、順次適期刈取りができるようにします(刈取期の天候が、地域によっては秋雨の時期と重なり、刈り遅れとなり、品質を低下させる場合が多いため)。
「同じ品種を作る場合」
●直播栽培を利用して出穂時期を遅らす方策は、低コスト生産も考えた方法です。
●直播栽培に本格的に取り組む場合には、直播向き品種を選定することが良い結果を生みます。
●ただし、(別項で述べますが)直播栽培には色々の技術があり、また技術の習得には数年の試作経験が必要です。
写真 :代かき同時点播機による直播栽培のようす―佐賀県上峰町(九州沖縄農業研究センター水田輪作チーム提供)
堀末 登
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 フェロー
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