提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


雑穀・山菜・その他

コシアブラ

2018年6月 8日

由来と特徴

●コシアブラはウコギ科ウコギ属の、高さは約15mになる落葉高木です。全国の雑木林に一般に見られ、樹皮は灰褐色、木質部は灰白色です。
●花は、夏の終わりに開花し、種子は晩秋に熟します。

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自生地のコシアブラ(撮影地:金山町)

●秋季に、枝の先端には頂芽が、上位数節には側芽が形成されます。頂芽は春から夏にかけて伸長し木質化します。
●頂芽優勢が強く、側芽は頂芽がある場合はほとんど伸びません。頂芽が何らかの理由で欠けた場合は側芽が数本伸びます。その場合でも、側芽はその年の生育は緩慢であり、翌年度に(頂芽になってから)旺盛に生育を開始します。
●頂芽には自発休眠があります。経験的に、休眠打破される時期は、山形県内では1月上旬頃と推察しています。
●根域は地表面近くに分布しています。
●根には細根が少ないのが特徴です。そのため、植え替えに弱く、栽培を難しいものにしています。しかし、定植して1年を経過した株は強健に生育する特徴があります。
●根の地表付近には不定芽が形成され易く、自生地では、株元に「ひこばえ」として生育している様相(株が連なって群落を形成)を観察することができます。
●木材は、柔らかく材質が密であることから、山形県では木工玩具の材料として利用されています。
●山菜は、早春に伸長する若芽を利用します。若芽は香りが高く、山形県では人気があります。天ぷら、和え物等に調理されます。
●栽培面では、増殖が難しく、長い間、株養成から一連の栽培は行われていませんでした。
●一方、促成栽培は比較的容易で、山採りの穂木を利用した栽培が行われてきました。
●最近は株の養成も試みられるようになってきました。
●品種(系統)は開発されていません。自生地では形態が異なった株が散見できますが、系統であるかどうかは確認できていません。
●苗は、まれに、種苗カタログに掲載されることがあり、購入することも可能です。

増殖方法

●増殖は、実生繁殖、挿し木、根の不定芽誘導、株分けがありますが、いずれも増殖率は低いのが現状です。
●いずれの増殖方法であっても、移植や植え替えなどの場合、定植初年目は生育が極めて緩慢なのが特徴です。細根が少ないという植物特性によるものと考えられます。

「実生繁殖」
●種子は晩秋に採取し、ただちに播種します。
●播種後は用土の乾燥に注意して管理します。
●発芽は翌春以降になりますが、多くの事例では、発芽率は数%以下の低率なことがわかっています。
●発芽した幼株は生育が緩慢で、鉢上げや定植の場合に、非常に植え傷みしやすいので注意が必要です。

「挿し木繁殖」
●挿し木は休眠枝挿しより緑枝挿しの方が発根しやすいようです。しかし、ミスト装置のような本格的な施設を必要とします。
●挿し木用土は、鹿沼土や赤玉土などの、通常、挿し木に使用する肥料分の入っていないものを使用します。
●発根した幼株は種子から育てた幼株と同様に、植え傷みが発生しやすいのが課題です。

「根の不定芽誘導法」
●根に発生する不定芽を中心に、根を約10cm程度に切断して幼苗を育てる方法です。
●無肥料の培土を使用し、根が隠れる程度に覆土します。
●乾燥しないように管理し、生育、発根を促します。生育が良い場合は約2カ月で定植に適した幼苗に仕上がります。
●不定芽を高率に発生させる技術は未確立です。
●不定芽は自生地の株からも採取することができます。採取時期は早春が適期です。

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不定芽による繁殖、根伏せ(撮影地:最上産地研究室)

「採取、株分け」
●自生地から採取する場合は、所有者の許可が必要です。
●雑木林の伐採後、数年経過した場所の幼株が掘り上げに適します。できるだけ根をたくさん付けるようにします。
●自生地から掘り上げした幼株や栽培株から発生する「ひこばえ」を分割して増殖する事例が、現在のところ一般的な増殖法になっています。
●株分けの時期は晩秋や早春が適しています。

定植、定植後の管理

「定植準備」
●定植する本畑は日当たりが良く、排水が良い場所が適します。
●堆肥を1a当たり400kg以上施用します。
●元肥は、窒素成分で1a当たり0.7~0.8kg施用します。

「定植」
●うね幅2m、株間90~180cmの1条植えにします。1a当たりの栽植本数は約80~40株です。
●用意した幼苗(株)を土に密着するように、ていねいに植え付けます。
●乾燥防止のために、切り藁を薄くかけると効果的です。

「定植後1年目の管理」
●定植初年目は、ほとんど伸びません。
●植え付けた状態のままで、秋季には頂芽を形成します。雑草やかん水などの栽培管理を継続して行ないます。

「2年目以降の管理」
●2年目以降は頂芽が延びるようになります。新梢は秋季までに50~80cm程度伸びます。新梢の先端には頂芽が、各枝の基部には数個の側芽が形成されます。
●施肥は、窒素成分で1a当たり1~1.5kgを施用します。
●除草は梅雨明けまでに2~3回行ないます。
●圃場の排水対策は、遅くとも2年目の春までに明きょを設置するように作業を行ないます。

「(参考)仕立方法」(※この仕立方法は未確立技術ですが参考まで紹介します)
●自生地では、伐採された株がブッシュ状に生育しています。この様相を参考に、生垣仕立てとして記述します。
●定植した幼株は樹高50~100cmの場合が一般的です。
●定植初年目は生育が停滞し、新梢が伸び始めるのは2年目以降です。3年目の春には樹高が150cm程度に生育します。
●促成する穂木を採取する場合は4年目の秋季から、若芽を収穫する露地どりの場合は5年目の春季から可能になります。
●仕立ては、地上100cm程度の高さに台付けして、前年枝の基部の側芽を毎年伸ばすようにします。
●ただし、頂芽を収穫した場合でも、すべての側芽が当該年に伸びるとは限りません。当該年に伸びなかった芽は翌年度には伸びやすくなります。
●積雪地での栽培の場合は、最深積雪深に合わせて台付けします。

露地どり

●5年目の春から収穫が可能です。
●収穫する芽は頂芽です。
●収穫後は、前年枝の側芽まで切り戻します。
●切り戻しは剪定鋏を使って切り落とします。

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栽培地の頂芽(撮影地:金山町)

促成栽培

「穂木の確保と調整」
●穂木は、完全に落葉する晩秋から冬季に採取します。
●採取位置は、当年枝の基部に着生している側芽を残し、側芽の直上とします。(自生地かの採取の場合は側芽を含めます)
●穂木の長さは20cm程度あれば十分ですが、長いまま切り取り、促成の直前に必要な長さに調整します。自生地から切り出した穂木も同様に調製します。
●穂木の保管場所は雨や雪が直接かからず、乾燥防止のために、風が直接当たらない場所を選びます。

「促成床」
●促成ベッドは、作業性を考慮し幅90~120cmとします。温度、湿度管理を適切にするため、二重トンネルが一般的です。
●加温方法は床方式と空中方式があり、おのおの長短があるので、熱源の種類等を組み合わせて決定します。
●促成床には吸水のため水を張ります。水深は2~5cm程度ですが、必要に応じて水位を調節できる構造にします。

「伏せ込み」
●伏せ込みから収穫開始までの日数はおおよそ30日です。
●伏せ込み時期は、自発休眠が打破された時期の1月中旬(山形県の場合)からになります。

「温度・温度管理」
●温度はトンネル内気温で促成開始から2、3日間は23℃に一定し、その後、日中20~15℃、夜18~8℃と段階的に温度を下げる変温管理をします。
●促成施設の温度は日射により大きく変動します。晴天日は、遮光資材や循環扇を活用して管理してください。
●収穫期に入ったら再び高めの温度で管理し、切り上がりを良くします。
●湿度は、内トンネルに細かい水滴が付くように(湿度約85~95%)管理します。湿度が高過ぎると腐敗の原因になります。

「収穫」
●葉が展開する前に収穫します。
●30g、または50gのトレイにパッキングして出荷します。

病害虫防除

●害虫はアブラムシ類などが発生します。
●山形県では、生育に支障になる病害虫は確認されていません。

執筆者
公益財団法人 やまがた農業支援センター
阿部 清