提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


雑穀・山菜・その他

行者ニンニク(ギョウジャニンニク)

2018年4月 5日

由来と特徴

●行者ニンニクは、ユリ科ネギ属の宿根草で、東北地域や北海道の一部の山野に点在して自生します。
●早春に葉が萌芽し、6月下旬にはネギに似た花茎を形成して開花します。7月上旬以降に、順次、稔実します。稔実した株は茎葉が枯れ込みます。
●種子は採り播きすることにより、秋季に地下発芽します。地上への出芽は翌春になります。1年目は葉が1枚生育し、2年目以降に葉の枚数が多くなります。
●地下部にはりん球(以下、球根と記述)が形成されます。球根は、葉が3枚程度に展開すると、当年の秋期に分球がはじまります。分球の程度は系統によって異なり、2倍に増殖する系統が一般的です。

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行者ニンニク系統(撮影地 :最上産地研究室)

●球根には自発休眠があることが知られています。休眠の程度は系統によって差が大きく、ほとんどない系統から深い系統まであります。
●葉の付け根部分にはアントシアニンが着色します。山形県では着色する系統を「赤軸」、着色しない系統を「青軸」と呼んでいます。一般に、着色系統が好まれることが多いようです。
●葉の形状は系統の変異が大きく、丸葉から笹葉のほか、葉の表面にブルームがない照葉から、ブルームのある系統までさまざまです。
●有望系統は着色系、照葉ですので、このような有望系統の球根や種子を導入します。
●根は、直根性で細根が少ないのが特徴です。そのため、湿害には強く、乾燥には弱いというユリ科植物の特徴を有しています。
●「アイヌネギ」などの呼称があるように、ネギや芽ニンニクと同じように利用します。油炒めや天ぷらなどの他、薬味などにも利用されます。
●植物の形状から、食用にできないスズランなどと混同されることがありますので注意が必要です。
●古くから栽培化された山菜です。種子から株養成を行なった場合は、約5年以上の栽培期間を必要とすることや、増殖率がやや低い山菜のため、流通量は増加していません。
●種苗は、球根に限れば、種苗会社から購入することが可能です。大量に購入する場合は、既存の栽培者から直接導入する事例が多いようです。

増殖と育苗

●増殖は、実生と分球による方法があります。

実生による増殖

「採種」
●種子の稔実時期は、山形県では7月上旬です。
●種子が脱落する直前に、花茎ごと切りとり、2、3日陰干しし、ふるいや風選で選別します。

「流水処理、貯蔵」
●採種後、ただちに流水で「水漬け」します。流水が準備できない場合は、水道水などに浸漬し、1日に2回以上、水を取り替えるようにします。
●水漬け期間は、1週間以上、3週間以内とします。
●ただちに播種しない場合は、湿った状態で、家庭用の冷蔵庫(約5℃)で保存することができます。期間は2、3週間が目安です。
●乾燥しすぎた種子は、発芽しづらい性質があります。

「播種と播種後の管理」
●播種時期は、通常8月下旬から9月上旬です。
●水漬けや冷蔵庫で保存した種子は、種子表面の水気をとって播種します。
●播種用土は、市販の園芸培土を使用します。生育量が少ない播種から翌年は、そのまま育苗箱(プラントバットなど、以下、同じ)で育てることが可能です。
●育苗箱への播種間隔は、7cm間で条播します。覆土は、軽い土の場合は2cm程度、重い土の場合は1cmとします。
●播種後は、やや日陰の場所で発芽を促します。土が乾燥しないように、時々、かん水します。
●播種後、約30日で発芽(地下発芽)が始まり、地下部には小さな球根が、育苗箱の表面には、しょう葉が若干出た程度に生育して、越冬します。

「翌年度の管理」
●春季に、被覆緩効性肥料を育苗箱当たり現物で50g施用します。無被覆の化成肥料は肥焼けを起こすため、使用できません。
●育苗箱数が少量の場合は、園芸用の液肥を1,000倍に希釈して、1週間毎に施用してもかまいません。
●幼苗期は特に乾燥に弱いため、育苗箱の表面が乾いたら、こまめにかん水します。
●播種翌年は葉が一枚展開します。
●夏季になると生育が停滞します。山形県では初秋が定植(鉢上げ)期になります。

「ポット育苗」
●箱育苗した苗を、黒ポリポット(9~10.5cm)で、さらに育苗することができます。3葉以上展葉するまでの期間は、生育が緩慢で根が少ないため、本畑に定植した後も除草作業を煩雑に行わなければなりません。ポット育苗はこの期間の栽培管理の課題を解消するために効果的な方法です。
●ポットには2~3球鉢上げします。このままの状態で2~3年間育苗が可能です。比較的大きな株に仕上がります。

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ポット育苗(撮影地:最上産地研究室)

●施肥は、春季に、箱育苗で使用した被覆緩効性肥料を、黒ポリポットの上に現物で約1gを置き肥えします。
●夏季は遮光して管理します。この場合の遮光の目的は、かん水回数を少なくすることです。乾燥した場合は、スプリンクラー等を活用してかん水します。

分球による増殖

●導入した系統により異なりますが、多くの系統は1年間で通常2個に分球します。増殖の程度は高くはありませんが、この球根を分割して増殖することができます。
●球根を購入した当初は、分球により増殖します。

定植

●ユリ科の山野草は強光を嫌います。行者ニンニクも同じく、やや日陰の圃場が生育に適しています。しかし、日向でも、土壌の乾燥に注意して栽培管理を行えば、よく育ちます。
●定植時期は9月の秋植えが基本です。春植えも可能ですが、若芽が伸びだす前の早春に作業を行なうようにします。
●定植圃場は、排水が良い場所を最優先に選定し、堆肥を1a当たり400kg以上施用して土づくりを行ないます。
●基肥は、窒素成分で1a当たり1.6kgとなるように施用します。追肥は、基肥に被覆緩効性肥料を用いた場合は施用する必要がありません。
●栽植距離は、うね幅150cm、株間10cmの3条植えです。
●1株当たり3球を植えるようにします。この場合、1a当たりの栽植本数は約200株で、600球になります。雑草対策のため、密植する事例が多くなっています。
●このまま株養成し、3年後に収穫適期を迎えます。

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株養成中の現地圃場(撮影地 :鶴岡市)

●増殖を目的にした場合は1球植えとします。
●植付深は、球根が隠れる程度に覆土します。
●乾燥防止のために切り藁を薄くかけると、生育が良好です。

植え付け後の管理

●定植初年目は生育期間が短いため、特別な管理は必要ありません。

「2年目以降」
●通路の雑草が重点的な作業になります。
●施肥は、施肥例に準じて有機質肥料中心に、窒素成分で1a当たり1.6kgを施します。
●雑草防止と乾燥防止のために、毎年切り藁をうねの上に敷きます。切り藁がない場合は、完熟堆肥で代用することができます。堆肥を使用した場合は、施肥量を約30%減らします。
●早春からおう盛に生育します。抽台後は、高温のため生育が停止(茎葉の枯れ込み)します。秋季には、翌年に生育する芽を株元で確認することができます。

露地どり

●定植後3年目の春から収穫することができます。
●伸びた若芽の葉が完全に展開する直前に収穫します。
●株をすべて収穫した場合は、その株はほとんど再生しません。1株当り2、3本残して収穫すると、毎年、連続して収穫することができます。
●収穫したら25cm程度の長さに揃え、50~100gに結束した荷姿で出荷します。

促成

「球根の掘り上げと寄せ植え」
●促成に使用する球根を秋に掘り上げます。掘り上げは鍬やスコップを使用しますが、大量に掘り上げる場合は、掘取機を使用するのが合理的です。
●掘り上げた球根は、育苗箱などに隙間なく寄せ植えし、根が乾燥しない程度に、目土として詰め込みます。
●目土に養分は必要なく、水分保持が目的です。そのため、まったく目土を使用しない促成も行われています。
●寄せ植えが終わったら露地で管理し、自然の低温に遭遇するようにします。パイプハウスなどの暖かな場所で管理すると、休眠が遅くまで残り、促成中の生育が不良になります。
●目土を使用しない促成の場合は、掘り上げ後、土が付いた状態で、露地で仮伏せします。

「促成床と促成時期」
●促成床は、作業性を考慮して90~120cm幅とし、温度、湿度管理を適切にするため二重トンネルを使用します。熱源は電熱線を使用する事例が一般的です。
●伏せ込み開始時期は、山形県の場合、自発休眠がほぼ終了する1月中旬からになります。寄せ植えした箱ごと促成床にならべます。
●目土を使用しない促成の場合は、仮伏せしていた球根を洗浄して、伏せ込みします。促成中は乾燥しないように、促成床の構造や水分保持資材を活用して工夫してださい。

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促成中の行者ニンニク(撮影地 :金山町)

「温度・温度管理」
●促成開始から2、3日間はトンネル内気温を20℃で昼夜一定とし、その後は、昼温18℃、夜温10℃で管理します。
●温度管理の状態(結果)によって、アントシアニンの発色程度が異なります。
●湿度は内トンネルに細かい水滴が付くように(湿度約75~85%)管理します。
●低湿度の場合は葉色がやや淡くなります(通常とは逆の傾向)。湿度や気温が高過ぎる場合は、促成中の腐敗の原因になります。

「収穫」
●葉が展開する前に収穫します。
●促成物は、球根を付け、葉の開きが極少ない荷姿が一般的です。地域によっては露地どりと同じ荷姿で販売されることもあります。
●目土を使用した促成の場合は、収穫後、洗浄、根切りして調整します。
●30g、または50gをトレイにパッキングして出荷します。

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収穫した行者ニンニク(撮影地 :鶴岡市)

病害虫

●生育に支障がある病害虫はほとんどありません。

執筆者
公益財団法人 やまがた農業支援センター
阿部 清