家庭菜園編【2】 土づくり(後編)
2008年05月28日
8 肥料の種類と特長
9 肥料の吸収パターンと効果的な効かせ方
10 施肥法と主な野菜の根の張り方
作物の生育には、炭素、酸素、水素、窒素、リン酸、カリ、カルシウム、マグネシウムの8要素が関係しますが、肥料あるいは土壌改良資材としては、窒素・リン酸・カリの3要素にカルシウム、マグネシウムを加えた5要素が必要です。
一般に、肥料に使われるのは、5要素のうち、窒素・リン酸・カリの3要素です。カルシウムとマグネシウムは石灰質資材として、土の酸性度の調整に使われます。
(1)窒素肥料
窒素は、作物の成長を支えるタンパク質の中心となる必須元素です。
動物がタンパク質を食べ、消化して再びタンパク質を合成するのに対して、植物は、土の中の有機物の分解や肥料に由来するアンモニア・分解途中で生じるアミノ酸などの低分子の有機態窒素を吸収し、光合成によって作られる炭水化物と結びつけて、体内でタンパク質を合成します。
たとえ有機栽培でも、根が吸収する窒素の多くは、有機物分解によって生じる無機態窒素であり、有機態窒素は、アミノ酸など低分子のものが吸収される程度です。
無機態窒素のうち、アンモニアは、酸素の少ない水田ではそのままの形を保ちますが、酸素の多い畑では、微生物の働きで酸化され、硝酸の形に変化します。
野菜などの畑作物は、硝酸態窒素をよく吸収する性質があり、吸収した硝酸をいったん葉に蓄えておいて、タンパク質の合成に利用します。畑作物の葉に硝酸が含まれるのはこのためです。
無機栽培に比べれば少なめではあるものの、有機栽培農作物の葉にも、ある程度の硝酸は含まれます。
(2)リン酸肥料
リンは、太陽エネルギーや呼吸エネルギーを、作物の成長エネルギーに転換させる重要な働きをする元素です。無機態のリン酸塩の形で根から吸収されるので、肥料成分はリン酸として計算されます。
根の発達や開花結実には、十分なリン酸が必要です。古い根からは吸収が悪いので、根が若い時期に基肥に入れて吸収させます。
追肥の効果はあまりありませんが、基肥に使う配合肥料や化成肥料をそのまま追肥に使った結果、リン酸も追肥されていることが多いようです。
堆肥を施すと、リン酸の吸収が促進されます。
(3)カリ肥料
肥料成分としては、カリウム元素ではなく、酸化カリウムの形を一般にカリと呼んでいます。
カリ(カリウム)は、光合成による炭水化物の円滑な生成と、葉から新芽や果実、根への移動を助ける元素です。作物体が軟弱に育つのを防ぎ、病害や寒さ、干ばつなどに対する作物の抵抗力を高める働きもあります。
窒素やリン酸の過剰吸収は、生育を妨げますが、カリを必要以上に吸収してもあまり影響はありません。むしろ、作物の抵抗力を高める働きがあるので、野菜などではカリを多めに施します。ただし、カリの過剰は苦土欠を発生させます。
作物内に、必要以上のカリが常に存在する状態を、《カリの贅沢吸収》と呼んでいます。
(4)石灰肥料
石灰は、作物体を支える組織作りに大切な成分で、土を酸性化から守る重要な塩基です。土を微酸性に保つだけの石灰があれば、作物は石灰不足になりません。土壌改良資材として、土の酸度(pH)に応じて施しましょう。
1)炭酸石灰
石灰岩から作られます。10a当たり100kgを散布して、深さ15cmまでの土とよく混ぜると、1週間後にはPHが0.5上がり安定します。pH5の土に、300kg施せば、pH6.5前後に矯正されます。
砂地では少量の石灰でpHが上がりますが、土質により大きく異なります。
2)消石灰
炭酸石灰よりもアルカリ度が強く、土のpHを急激に変化させます。消石灰70kgで炭酸石灰100kgと同じ効果があります。
3)苦土石灰
石灰以外に苦土を20%含み、根から出る酸に溶けて吸収される、く溶性の苦土です。アルカリ度は炭酸石灰と同じです。
4)有機石灰
貝類、特にかき殻を原料にした、粉末状の有機石灰が中心です。海水中の60~80種類のミネラルが溶け込んでおり、石灰の他にマグネシウムやホウ素などの微量要素を多く含みます。
施用後すぐに、タネまきや苗の植え付けができます。有機野菜には、有機石灰を使用します。
(5)肥料の種類
1)単肥
窒素、リン酸、カリのどれか一つを含む肥料
2)配合肥料
窒素、リン酸、カリ原料を混合した肥料
3)化成肥料
窒素、リン酸、カリ成分が一粒一粒の中にバランス良く含まれる肥料
4)有機肥料
油かすが代表的。油かすには窒素だけでなく、リン酸、カリも含まれている。リン酸肥料として知られている骨粉にも、窒素が含まれています。
油かすも骨粉も、それだけでは肥料成分が偏るので、他の肥料と配合し、成分のバランスをとるとよいでしょう。
養分の吸収の仕方は、野菜の種類によって異なります。また、作付けする時期や土質によっても生育期間が変わります。
大まかに、1)初期に吸収するスタートダッシュ型、2)生育期間中にコンスタントに吸収する型、3)生育後期に多く吸収する型に分けられます。
(1)スタートダッシュ型 (根を伸ばしはじめた初期から養分吸収をはじめるもの)
ホウレンソウ、レタス、コカブ、サツマイモ、サトイモ、ジャガイモ
1)基肥主体に施し、全層施肥をする。
2)生育後半からは窒素を効かせなくともよい。
(2)スタートダッシュ中間型 (生育初期から生育中期にかけて養分吸収するもの)
キャベツ、ハクサイ、タマネギ、ナガイモ
1)基肥を主体に、やや長持ちする肥料を施肥する。
2)生育期間までは肥切れさせず、後半は控えめにする。
(3)コンスタント型 (生育期間中、平均して養分吸収するもの)
キュウリ、トマト、ナス、ピーマン、エダマメ、インゲン、セルリー、ネギ、ニンジン
1)基肥には、肥効が長持ちする緩効性肥料を施用する。
2)追肥は、少量ずつ回数多く与え、肥切れさせない。
(4)ラストスパート中間型 (生育中期から後半にかけて養分吸収するもの)
アスパラガス、スイートコーン、イチゴ、エンドウ
1)基肥は、控えめに、追肥は早めに施用する。
2)肥切れさせないようにする。
(5)ラストスパート型 (生育後期に養分吸収が旺盛になるもの)
カボチャ、スイカ、メロン、シロウリ、トウガン、ダイコン、ゴボウ
1)蔓ぼけ防止のため、基肥は控えめにする。
2)中~後期にかけて追肥で生育調整をする。
(1)基肥
1)全面施肥
畑全面に肥料を施して、土に肥料を混ぜ込む方法
均一に施しておくと、根がどこへ伸びていっても肥料を吸うことができます。部分施肥の場合には、施肥量を減らします。
2)ベッド(床)施肥、畝施肥
種子をまく場所(床)や苗を植えつける畝に、集中的に施肥する方法
施肥量を節約することができます。面積に比例して、施肥量を決めます。小面積では、畑全面に施して、土とよく混ぜ込む方法がよいでしょう。
(2)追肥
1)作条施肥
畑の畝の肩の部分に条(すじ)状に施肥する方法
ホウレンソウやコマツナなどのように、条状に種子をまいた場合には、条と条の間に肥料を施して軽く土と混ぜます。
2)穴施肥(株と株の間)
株と株の間に穴を掘り、軽く肥料を施し、土をかけます。
3)畝間施肥
地上部が茂りすぎて追肥ができないときや、灌水を兼ねて肥料を効かせたいときに行います。畝間に施肥をした後に灌水をすると、水分と肥料の補給が一回ですみます。
(3)主な野菜の根の張り方と施肥の方法
1)ナス
幅が狭く深く、根を張るで、有機物ならびに肥料は、なるべく深く混ぜ込みます。栽培(生育)期間が長いので、有機物を10a当たり5トン(1㎡当たり5kg)施します。
基肥は、全体の施肥料の半分程度とし、残りは追肥として3週間おきに分割して施肥します。気象条件と生育状況をよく観察して対応しましょう。
2)トマト
根はやや深く、幅広く張ります。基肥は控えめにします。
施肥は、ナスと同様、有機物をたっぷりと施します。基肥は全施肥量の3分の1程度(10a当たり10~12kg)とし、残りを第3花房開花期以降の追肥とします。
トマトは吸肥力が強く、土中の肥料をどんどん吸収します。トマトの肥料過多を、<トマトがあばれてくる>といい、茎が12mm以上になると、果実のつきが悪くなります。茎の太さは8~10mmで、一見、痩せてみえる程度が理想です。
肥料の施し過ぎは、収穫を減らし、病害虫発生の原因ともなります。
3)キュウリ
根の深さは30cmと浅いものの、範囲は1m余と広く張ります。
生育期間は約4カ月(5月の植え付け後最長8月まで)と長いので、有機物はたっぷりと与えます。基肥は全施肥量の半分程度とし、残りは追肥で施用します。途中で肥料切れをおこすと果実の形が悪くなり(尻太、肩こけ果、先細り果、曲がり果等)、病害虫の発生も多くなります。
4)キャベツ、ハクサイ(葉茎菜類)
根は深さ30cm、幅は30~40cmになります。生育期間は、秋どりで3カ月余続きます。基肥を全施肥量の約半分として追肥重点でおこなう方法と、基肥に3分の2程度施す方法など、地域によって施肥法に差があります。追肥は、植え付け後早め早めにおこないます。
5)ホウレンソウ、コマツナ等(葉菜類)
ホウレンソウ、コマツナの根は、幅は狭く、まっすぐに深く張ります。そのため、根菜類を作るようなつもりで畑を耕し、肥料を混ぜ込むことが、良品生産につながります。肥料は全量基肥にします。
6)ダイコン、ニンジン等(根菜類)
ダイコン、ニンジンの根は、幅は狭く、長く伸びます。できるだけ深く掘り起こし、肥料も深く混ぜ込みます。基肥は全施肥量の3分の2程度施し、残りを追肥にします。根菜類は、種まき後間引きしながら成長させるので、間引き直後に追肥をするとよいでしょう。





