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家庭菜園編【2】 土づくり(前編)

2008年05月23日

1 良い土とは
2 土の三相
3 沖積土と洪積土
4 野菜づくりに必要な養分と働き
5 野菜の生育とpH
6 有機物の重要性
7 堆肥の作り方と施し方


1 良い土とは

 良い土とは、水はけ、水もちが良く、堆肥のような有機物を含んでいる土です。

 全国の耕地には、粘土を多く含んだ重い土から砂のようにさらさらした感じの軽い土まで、いろいろな土があります。重くもなく軽くもない中間の土を「壌土」といい、野菜作りに比較的適した土です。

【良い土の条件】

(1)根が十分に張れる
 作物をしっかり固定し、土の広い範囲から栄養分や水分を吸収するためには、根が十分に張らなければなりません。土がたえず動いたり、硬すぎる状態では、根はしっかりと張ることはできません。


(2)通気性と排水性が良い
 土は固体、水、空気の三つと、有機物から成り立っています。作物の根が、土から養分や水分を吸収し、土の中で呼吸をしていくためには、土、水、空気が、互いにバランスよく存在していることが必要です。


(3)保水性・保肥性にすぐれている
 作物が必要とする水を必要量保ち、過剰な場合は流してくれる土がよく、また、肥料成分を多種類含んでいるのが、良い土といえます。


(4)土が肥えている
 作物が必要とする栄養分が多く含まれるのが良い土です。不足している場合は、肥料を補います。


(5)適正な酸度である
 土の酸度によって、作物の吸収できる養分が異なり、生育に強く影響します。多くの作物は弱酸性か中性を好みます。
 酸度が弱酸性の場合は、良い働きをする微生物が増えてくれます。

(6)清潔である
 作物に被害を与える病原菌や害虫が少ないほど、清潔な土といえます


(7)異物が混ざっていない
 土には、石が混ざっていたり、金属片やガラスなどが入っていることがありますが、邪魔になるばかりか、危険です。さらに、カドミウムや水銀、鉛、PCBなど重金属を含んだ土では、作物の生育に異常がでるほか、人体にも悪影響があります。


2 土の三相

栽培に適した土の三相分布   (農林省農業改良局 「低地生産知調査事業報告書」1958年による)

 土には、固体液体空気の部分があり、この三つを「土の三相」と呼んでいます。

 雨が降ると液相が増えて、その分空気が追い出され、気相が減ります。逆に、晴れて土が乾けば液相が減り、空気が入ってきて気相が増えます。


 普通の土は、固相が45%程度(土によっては30~60%)、液相と固相はそれぞれ20~30%くらいの割合です。作物の根からみれば、気相は少なくとも20%は必要とされます。


 土の中の液相と気相の部分を「孔隙」といいます。土の中の孔隙が細かいと、水が流れ出しにくく、空気と入れ換わりにくいものです。

 これに対して、大きな孔隙の多い土は水はけのよい土で、作物の根に酸素が供給されやすくなります。
グラフ 栽培に適した土の三相分布   (農林省農業改良局 「低地生産知調査事業報告書」1958年による)


3 沖積土と洪積土

 全国の畑地は、図のとおり大きく沖積土洪積土に分けられ、それぞれ大きな特長があります。

畑地の地帯分布割合 (単位%)  (農林省農業改良局 「低地生産知調査事業報告書」1958年による)


【沖積土】

 日本には大きな河川があり、その下流に広がる耕地は、川上から流れてくる腐葉土をたっぷり含んだ肥えた土からなっています。そこでは昔から品質の良い産物が数多く作られており、現在も特産物が多くみられます。


 沖積土の耕地に占める割合は約10%程度ですが、砂地や粘土の多い重い土など、場所によりさまざまです。土壌を改良し、水はけに注意すれば、野菜や花、果樹など、品質のよいものを作ることができる土です。
グラフ 畑地の地帯分布割合 (単位%)  (農林省農業改良局 「低地生産知調査事業報告書」1958年による)


【洪積土】
 重力、風雨、流水などに運ばれて積もった土に有機物がたまり、厚い表土を持つ深い土層を形作ったもので、大地や丘陵地を広く覆っています。

 黒色の厚い表土には、土中で完全に熟した有機物が豊富に含まれます。また、表面土の下は、数メートルの厚さで比較的柔らかで、かつ崩れにくい赤土があり、表面土の保水性と透水性を支え、良い農地を形作っています。

 洪積土は、主に次の2つに分けられます。


(1)黒土 
 関東地方の台地に広く分布する火山灰土(関東ローム)の表土です。黒色で軽くて、軟らかく、有機物に富んでいます。アルミニウム含量が多く、土が酸性になると溶けだし、植物の生育を悪くし、またリン酸を不活性化します。保肥性・保水性は強いのですが、通気性がやや悪いのが特徴です。


(2)赤土
 関東ロームの下層土で、有機物を含まない粘土質の火山灰土です。pH6.0~4.0程度の弱酸性で、リン酸が少ないので注意します。赤土を大、中、小の粒径別に分けたものが赤玉土として市販されています。赤土は団粒化することにより、通気性、保水性ともによく、鉢用土として広く使われています。

 黒ボク土には、土が軽く、耕しやすい、湿害を受けにくい、肥料持ちがよい、酸性になりにくい等の長所があります。
 

※洪積土のリン酸欠乏対策
 洪積土には、作物にかかせない「リン酸」が活性アルミナと結びついて、根が吸収できない形になりやすい欠点があります。そこで、以下の対応が必要となります。

1)土の酸性が強くなるほど溶け出すアルミニウムが増えるので、石灰質肥料を施して土の酸性を中和する
2)堆肥を施して土と「リン酸」の直接の接触をさせないようにする


4 野菜づくりに必要な養分と働き

 野菜類の生育には、多量に吸収する窒素・リン酸・カリ・カルシウム・マグネシウムの5つの養分(多量要素と呼んでいる)と、微量に吸収するイオウ・ホウ素・鉄・モリブデン・マンガン・亜鉛・銅・塩素の8つの養分(微量要素と呼んでいる)などの養分が不可欠です。

 この中で、多量に吸収する養分の働きは次のとおりです。

(1)窒素:N
 葉や茎などが成長するときに多く吸収され、植物体を形成するのに大きなカギを握っている養分。アミノ酸が窒素を含み、また蛋白質や葉緑素、各種酵素・ホルモンなども窒素を含んでいる。

(2)リン酸:P
 立派な花を咲かせ、実を結ぶ農産物に不可欠の養分。米をはじめナス・トマト・キュウリなどの果菜類、ブドウ・ナシ・モモなどの果樹類、花き類などにも同様に必要な養分である。

(3)カリ:K
 植物体を丈夫にするとともに、炭酸同化作用によってできる蛋白質や炭水化物などの同化生産物を、植物体の隅々まで届ける働きをしている。

(4)カルシウム(石炭):Ca 
 畑の土は、

 1)根からの石灰の吸収
 2)雨による流亡
 3)肥料

の3つが原因で、徐々に酸性に傾いていく。

 このため、酸性の矯正には、作付け前に、必ず石灰肥料を土に混ぜる必要がある
 常に、土の酸度を中性に近い状態にしておくと、根張りや土壌微生物の有益な菌を増やすことができる。

(5)マグネシウム(苦土):Mg
 炭酸同化作用による炭水化物の製造工場である葉緑体に不可欠の養分。


5 野菜の生育とpH

酸・アルカリの強さを表すのには、pH(ペーハー)という記号を用います。
pHは酸性からアルカリ性の間を14段階に分け、pH7を中性とし、それ以下を酸性、それ以上をアルカリ性としています。
pH7を中心に、pHの値が小さければ小さいほど酸性の性質が強く、値が大きければ大きいほどアルカリ性の性質が強いことになります。
酸・アルカリとpHの値

(1)土の酸度pHとは
 土の酸性、アルカリ性とは、土の粒子についている養分の、水素イオンと水酸イオンのバランスをいいます。水素イオンH⁺が多いと酸性、水酸イオンOH¯が多いとアルカリ性になります。

 日本では、

 1)雨が多くて石灰分が流れやすい
 2)作物自身がカルシウムを多く吸収する
 3)肥料の原料に酸性肥料が多い

 などの理由で、少しずつ土が酸性に傾いていきます。


(2)土の酸度を測るには
 簡単に計るには、「土壌酸湿度測定器」「土壌酸度計」「みどりくんスターターキット」「酸度測定液」などがあります。


(3)酸度を調整するには

1)酸性土壌を中和する場合
 1平方メートルの面積を10センチの深さまで調整する場合、消石灰で80~100g、または苦土石灰・有機石灰(かき殻)で100~150gを施すと、酸度が「1」上がります。土の深さを20センチにすると、2倍の量が必要です。石灰質肥料は、施したらなるべく早く土と混ぜましょう。雨が降った場合に石灰が固まってしまうので、注意します。

2)アルカリ性の土壌を中和する場合
 鶏ふんを長年繰り返し使っていると、次第にアルカリ性に傾いていきます。アルカリ性になった場合には、鹿沼土の細粒かピートモスを混ぜます。

図 作物別pHの好適生育範囲
t作物別pHの好適生育範囲


6 有機物の重要性

 化成肥料か配合肥料を施せば、短期間なら野菜を収穫できますが、ある程度長い期間、安定して品質の良い野菜(色・つや・香り・栄養成分など)を収穫するには、野菜の種類に応じて十分な有機物を土に混ぜ込む必要があります。

 有機物の施用がないと、土はだんだん痩せて生育が悪くなり、収穫量と品質が低下していきます。有機物の施用効果は、次のとおりです。

(1)土粒の団粒化
  これ以上細かくならない、最も細かい状態を「単粒構造」といいます。土粒は細かいほど良いと思われがちですが、細かすぎると雨が降ったとき水はけが悪く、土中への空気の入りが少なくなります。
 有機物が微生物の働きでネバネバを出すことで、細かい土粒同士が結びついて団粒化がすすみます。団粒化すると、土の粒々のすき間が多くなって、通気性、排水性がよくなり、根にとっての環境がよくなります。


図 主な市販堆肥の種類と特性
主な市販堆肥の種類と特性

(2)養分の保持
 土にはいろいろな成分が含まれています。有機物が多いと各成分が強く結びつき、降雨でも流れにくくなります。
 降雨の多い地域ほど有機物を多く施すことが必要です。また、その年の降水量によって、有機物施用の加減を考えましょう。

(3)水分の保持
 有機物を適度に含んでいると、干ばつのときや降雨の多いときに、土自身が適度に調節するので、害が少なくてすみます。

(4)空気の保持
 土中の根は絶えず呼吸をしているため、適度な通気性を必要とします。一般に、有機物が少なくなると土が締まり、空気も少なくなるので、生育に悪い影響がでます。
 1年間に消耗するといわれる、10a当たり約2トン以上の有機物を施しましょう。

(5)微生物の働きを活性化
 有機物は微生物の活動のエネルギーとなり、分解された窒素やリン酸などの成分が植物に有効に働きます。
 また、吸収されずに残った養分は、微生物が吸収することで一時的に貯蔵され、あとで使われます。このように、有機物は微生物の増殖にも欠かせません。

(6)土壌酸度の適正化
 土の酸度は植物の生育に強い影響をもっています。酸度が強く、有機物の少ない土では、多くの作物が順調に生育できせん。ただし、酸度の強い土でも有機物が5%ほど入っていれば、それなりに成長を補ってくれます。

(7)炭酸ガスの発生が生育促進
 植物は光合成(炭酸同化作用)をします。空気中の炭酸ガス(通常空気の中に0.03%含まれているといわれている)をえさに、栄養体を作っています。緑が多いと炭酸ガスを消化することで濃度が下がり、温暖化抑制に一役買ってくれます。

(8)微量要素の供給
 有機物の材料によって構成は異なります。主な養分のほかに微量要素が多種類含まれ、生育を助けます。

(9)肥料の効きめを和らげる
 肥料の量を間違った場合でも、有機物が含まれていると、多投入の害を和らげてくれます。


7 堆肥の作り方と施し方
 堆肥になる過程で出る熱やガスが、雑草のタネや有害な微生物を殺し、水分を適度に低下させてくれます。
 未熟なまま有機物を土に施すと、作物に悪影響を及ぼす恐れがあります。原則として、「熟成した堆肥」を施しましょう。

(1)堆肥の作り方
1)材料は、落ち葉・枯れ草・わらなどで、水分は手で握ったときにやっとしみ出るくらいにします。
2)日のあたらない冷えたところに積み込みます。
3)うまく発酵すると、積んでから60~70℃くらいになります。
1か月ほどして熱が十分出たら、夏なら2~3週間に1度、冬なら3~4週間に1度の割合で切り返しをします。堆肥として使えるまでに、夏なら2~3カ月、冬なら5~6カ月ほどかかります。
4)市販のコンポスターなどを利用して、家庭用生ごみのリサイクルで堆肥を作る方法もあります。


堆肥の作り方

(2)堆肥の施し方
1)全面施用
 作付けの1~2週間前に堆肥を畑全面にまき(必要があれば石灰質肥料も)、土とよく混ぜ合わせる「全面施用」が一般的です。作る作物の根の張り方を考慮し、根の深く張るものは深く、浅いものは表面近くの土とよく混ぜるようにします。

2)作条施用
 畝を切って堆肥と肥料を入れて、土とよく混ぜます。施用量は、10a当たり2~4トン(1㎡当たり2~4kg)で、春作の作付け前か秋作の前に施します。


(3)未熟堆肥を施さない
1)土壌害虫、病原菌等が根に被害をもたらします。
2)有害な有機酸やガスが発生し、発芽障害を出す恐れがあります。
3)作物は、熟すために窒素を使うため、根から吸収する窒素を抑えるために、窒素欠乏症状を出す場合があります。

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