提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


先進県"宮崎方式"に学ぶ 「IPM技術に関わる現地視察・研修会(宮崎県)」レポート

2007年12月14日

 全国農業システム化研究会では、「IPMに関わる技術構築へ向けた取組実証」を平成18年度からおこなっている。12月3・4日、IPMへの取組先進県である宮崎県内で、宮崎県の取組を学ぶ研修および現地視察がおこなわれた。参加者は、各県実証調査担当者(普及指導員)等、約20名。


20071205089.jpg 宮崎県では、有利販売のためや、環境や健康を守るために生物農薬を導入するケースが以前は多かった。現在は、化学農薬が効かなくなったため生物防除に向かう農家が増えており、ピーマン、キュウリ等の野菜12品目やバラなど花き類を合わせ、少なくとも県内約300haに普及したと推定されている。

 そもそも、IPM(総合的害虫防除)では、「天敵と防虫ネットなどの資材を活用し、化学農薬の使用量を必要最低限にする」ことが目標とされ、それぞれの条件、生産現場に合った技術を作り上げていくことが求められる。


 宮崎県では、いきなり天敵を導入するのではなく、うどんこ病、灰色かび病対策として微生物殺菌剤※1、スリップスやコナジラミ等に有効な微生物殺虫剤(昆虫寄生菌)※2と順にステップアップし、効果が思わしくない場合に天敵※3を導入している。また、同時に防虫ネット、紫外線カットフィルム等も併用し肥培管理等も徹底するのが必須だ。


 「IPMというより、むしろICM(C=crop:作物)とでも言うのか、防除を栽培管理の視点から見たものととらえています」「誰でも使うことができ、品質、収量はむしろ上げ、かつコストは上がらず、農薬も天敵も使う技術であることが前提です」と、宮崎県農政水産部営農支援課の黒木修一広域担当普及指導員。


 ※1 ボトキラー、インプレッション等散布回数がカウントされない薬剤
 ※2 害虫にとりつくカビ
 ※3 ククメリスカブリダニ、チリカブリダニ等


 IPM関連の宮崎県独自の資材は、以下のようなものだ。


「きつつき君」
ボトキラーをハウス内のダクトに入れ、ファンに連動させてハウス内に散布するしくみ。水和剤を切らしさえしなければ、毎日連続して散布してくれる。毎日同じ作業を繰り返す負担がなくなる。


「ククメリスカップ」
紙コップに切り込みを入れ、もみがらを入れ、適度な湿度を与えておき、害虫が発生する近くの枝やひも等につるす。
ククメリスは難防除害虫であるアザミウマ類の天敵農薬だが、アザミウマ類がいなくてもダニの卵や花粉を食べて生息することができるので、アザミウマ類を「待ち伏せ」する性質をうまく利用するもの。


ダクトにセットされたきつつき君   ダニの動線に合わせて設置されたククメリスカップ


 現地視察では、4生産者の圃場を訪ねた。


キュウリ(綾町)
「6,7年前から取り組んでいる。IPMの効果で、化学農薬の使用回数が、半分に減った。始めはククメリスの性質がよくわからなかったが、他との組み合わせとタイミングで効果を出せると知った。」栽培はつるおろし栽培。


ナス(西都市)
「平成18年から実証圃で、今年はナス部会全員で微生物農薬を使っている。まめに使うことで、虫の発生が全体に少なく抑えられている。化学農薬の使用は週1、2回が月2回に減った。また、ハウスの谷にネットを張ったら、虫の飛び込みが激減した。」


キュウリ圃場   ナス圃場


ピーマン(西都市)
「平成18年からククメリスを導入、化学農薬が半分になり、ハウス内のミナミキイロアザミウマが少ない状態で推移中。ククメリスカップ、きつつき君とも導入で効果が出、全体で省コスト、省力になった。」天敵の自家増殖も実践中。


バラ(川南町)
「平成17年6月からダニが多発し取り入れた。模索状態だったが、ここ1年は農薬を使わないで済む効果がでている。」養液栽培の培地に直接有機物(もみがら)を置くやり方。


ピーマン圃場   バラ圃場
  

 生物農薬と資材、そして細かいノウハウをうまく併用して根気よく基本に忠実に繰り返す、息の長い取組が、IPM技術普及のポイントになりそうだ。(みんなの農業広場事務局)

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