提供:(一社)全国農業改良普及支援協会 ・(株)クボタ


大豆・麦

小畝立て深層施肥播種技術および雑草防除技術の導入による収量、品質の向上 (山形県・平成25年度)

背景と取組みのねらい

●背景
 山形県酒田市の大豆は水田転作の基幹作物として位置づけられ、中でも広野地区は作付面積が多い。調査対象組織は、広野・浜中地区の水田転換畑約70ha(自作14ha、受託58ha)のほ場で大豆の作付けを行っているが、収量が上がらず、品質も低迷している。
その要因としては以下があげられる。
①大豆連作による地力の低下
②連作や作業の遅れによる雑草害
③湿害による生育不良
これらを克服するため、本実証調査に取り組んだ。

●目標
(1)小畝立て深層施肥播種技術(※)導入による収量・品質の向上
 ①初期の湿害対策、生育量確保
 ②肥料の違い(尿素区=実証1・石灰窒素区=実証2)による効果検証、経営評価
(2)効果的な除草体系の検討
 ①中耕ディスク型培土機による適期培土作業
 ②生育期における除草剤の畦間・株間散布技術実証

「小畝立て深層施肥播種技術」とは
小畝立て播種技術と深層施肥技術を組み合わせた播種技術で、小畝立て深層施肥播種機を使って高さ約10cmの小畝を形成しながら、地面から深さ14~20cmへの条施肥と大豆播種を同時に行う。特に、開花期以降の粒の肥大に効果が高い。
深層部分には尿素や石灰窒素、緩効性肥料などを用い、6kgN/10a程度を施用する。

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対象場所

●山形県酒田市広野地区
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 酒田市は山形県の北西部に広がる庄内平野の北部に位置し、北は鳥海山を臨み、西は大砂丘を隔て日本海、東は出羽丘陵、南は鶴岡市、庄内町等と接している。市内には最上川、赤川、日向川の各河川が流れ、これら主要河川を取水源とした大規模な農業用水路が整備され、肥沃な水田地帯が広がっている。
 気候は、日本海の影響を受け海洋性で、夏は高温・多湿型で昼夜の温度差が小さく、冬の降雪量は山間部で多く、平野部では比較的少ないが北西の季節風が強い。

実証した作業体系(作業名と使用機械)


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作業別の能率と効果

●供試品種 :里のほほえみ
●条間   :75cm
●株間   :25cm
●栽植密度 :10.6本/粒

●暗渠等の施工状況
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耕起前除草剤散布能率と効果
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除草剤散布


実証ほ場は大豆の連作を続けており雑草の発生が多かったが、耕起前に除草剤(ラウンドアップマックスロード)を散布したため、播種作業への影響はなかった。

●型式
乗用管理機 (BSA500JDE)
後方除草ノズル組み立て

小畝立て深層施肥播種能率と効果
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種子へ殺虫殺菌剤を塗布

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小畝立て深層施肥播種


種子には事前に殺虫殺菌剤「クルーザーMAXX」を塗沫処理し、病害虫対策を行った。

○圃場作業量 45a/hr
○播種量 目標比85%
○深層施肥量 
 目標比87~96%

「里のほほえみ」は、百粒重40g以上の大粒品種であるため、播種量5.1kg/10aを目標にしたが、実証区および慣行区の播種量を同じにするため播種量は目標比約85%となり、設定どおりの裁植密度を確保できなかった。
施肥量はアグリフラッシュ(実証1、2共通)で目標比89%、尿素(実証1)で87%、石灰窒素(実証2)で96%となり設定に比べ、やや少ない量となり、目盛りの調整が必要であった。

●型式
トラクタ
(KL44ZHCQMANPC3WP9C)
小畦立て深層施肥播種機
(KDS-HHS)

中耕培土・畝間除草剤散布能率と効果
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除草剤畦間・株間処理

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中耕ディスク

中耕培土は、1回目をディスク式、2回目をローター式で作業を行った。
ディスク式の圃場作業量は48a/hrで、大豆に損傷なく作業を行うことができた。
畦間・株間への除草剤散布は大豆への飛散が少なく、後発雑草へ茎葉散布が可能であった。
中耕培土と除草剤散布(ロロックス水和剤)が同時に行うことができ、慣行に比較して作業時間の短縮が図られた。

●型式
トラクタ
(KL44ZHCQMANPC3WP9C)
中耕ディスク (DC301)
除草剤散布装置
(MS90DC-300-UK)


除草剤畦間散布能率と効果
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3連吊り下げノズルによる
除草剤散布


3連の吊り下げノズルで除草剤(バスタ液剤)を散布。

●型式
乗用管理機 (BSA500JDF)
畦間散布装置3連

収穫能率と効果
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収穫作業

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各区成熟期個体


慣行に比べて主茎長、分枝数、茎径、稔実莢数が増加した。
収量は、慣行150.5kg/10aに対し、実証区はそれぞれ254.7、237.9kg/10aと、大幅な増収となった。

●型式
汎用コンバイン (ARH430CG)

  (写真・図をクリックすると拡大します)

成果と考察

●成果
1.小畝立て深層施肥播種機の圃場作業量は45.5a/hrであった。播種量は目標5.1kg/10aに対し、実証区および慣行区の目標比は約85%となり、設定どおりの裁植密度を確保できなかった。 また、施肥量はアグリフラッシュで目標比89%、尿素(実証1)で87%、石灰窒素(実証2)で96%となり、設定に比べやや少ない量となり、目盛りの調整が必要であった。

2.実証区の中耕培土は、1回目はディスク式、2回目はローター式で作業を行った。  ディスク式の中耕培土機による圃場作業量は48a/hrで、大豆に損傷なく作業を行うことができた。畦間・株間への除草剤散布は大豆への飛散が少なく、後発雑草への茎葉散布が可能であった。中耕培土と除草剤散布が同時にでき、慣行に比較して作業時間の短縮が図られた。

3.7月2日の生育調査では(播種:5月31日)、尿素(実証1)、石灰窒素(実証2)は慣行に比較して草丈、主茎長が長く、地上部・地下部乾物重が多かった。7月29日、8月27日の生育調査では、実証1、2がいずれの項目でも慣行と比較して優った。また、実証1と2では、地上部乾物重が実証1で多かったが、他はほぼ同じ傾向であった。

4.㎡当たり莢数は、慣行に比較して実証1、2で多く、百粒重も大きく、子実重は慣行の約160%となった。実証1と2の子実重は同等であった。マメシンクイガによる被害、また病害の発生も少なく、品質は良好であった。

5.実証技術を導入することで、農薬費や減価償却費等生産費が慣行区より増加するが、生産物の収量向上による販売価格の増加で、収益は慣行より多くなった。

 収量及び品質
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 粒厚分布


●今後の課題と展開
1.除草剤、機械除草、中耕培土等雑草防除技術の組み合わせによる効率的な除草体系の効果の確認。

2.小畝立て深層施肥播種機を利用した大豆栽培は、連作ほ場での増収効果が高く、トラクタで平畝栽培を行っている農家が取り組みやすい技術で、普及性は高いと思われる。

3.ディスク式中耕培土機の導入により、効率的な培土作業が図られ、同時に除草剤散布も可能なことから、作業の省力化や雑草防除の効果が期待され、今後普及が見込まれる。

(平成25年度 山形県農林水産部農業技術環境課 山形県庄内総合支庁産業経済部酒田農業技術普及課)